なんでこんなに可愛いななこが俺なんかを選んだのかわかんねぇ。
別にスタンド使いってわけでもなく、フツーのクラスメイトだってんだから尚更。
なんでか理解できないから、聞いてみた。
「え、なんでって…ほっとけないっていうか、…」
頬を染めて言い淀むななこ。
ほっとけないってのは、好きかどうかとはまた別じゃねーのかと思う。
「俺バカだからさァ、よくわかんねーんだよぉ〜。」
むぅ、と頬を膨らませると、逆に質問が帰ってきた。
「じ、じゃあ億泰くんはっ!私の、どこが…すき…?」
「えっ!?」
まさか自分が聞かれると思っていなかったので戸惑ってしまう。どこが、と言われても具体的に考えたことはあまりない。そもそも「考える」なんてことは得意じゃあねーんだ。
「可愛いし、頭だっていいし、正直俺には勿体無い気ィする。ってか、実際そーやって言われる。」
彼女について、なんで億泰なんかと、と言われているのを知っている。そりゃあ不良の俺みたいなのと所謂才色兼備な優等生のななこが一緒にいたら、快く思わない奴だっているだろう。
「…それは、億泰くんの意見じゃない…と思う。」
「ん?あー…それもそーだなぁ。」
うーん、と腕を組んで考える。好きに理由を求めたことなんてない。好きなものは好きなんだから。
でも、ななこが知りたいってんなら、俺は考えなくちゃあいけない。考えてやりたい、って方が正しいのか。
「…あ、でっけー口で美味そうに食うとこ!」
おいしー!と目の前で笑われると、こっちの料理まで美味しくなるから不思議だと思ったんだ。
「それと、惜しげもなく他人を褒めるとこ。それから、俺にわかるまで何回だって説明してくれるとこだろ?それから意外と大胆なとこ。それから、」
一つ思いつけばあとは簡単だった。次々に好きなところが出てきて、結局全部じゃねーかよ、と思う。
「…ね!もういいから…」
ななこが止めるので見ると、なんだか真っ赤になっている。
「そーやってすぐ真っ赤になるとこも可愛くて好きだぜェ。」
そう言うと、彼女は赤い顔のまま言葉にならない声を上げてその場にしゃがみ込んだ。
「…〜〜ッッ!」
「…どーしたんだよ、お前が聞いたんだろ?」
覗き込むようにしゃがめば、恥ずかしいのか顔を背けられる。そんな事したって可愛いだけなのになァ〜。
「…いや、あの…思いの外好かれててびっくりしたっていうか…」
頭の上にクエスチョンマークが浮かぶ。
続けられたななこのセリフで、それはエクスクラメーションマークに変わる。
「…そういう、素直なとこがすごく好きだなって…思って…」
『好き』の一言に、自分の頬が赤くなるのがわかる。この破壊力でもって、ななこはしゃがみ込んだに違いない。
「嬉しいけど…恥ずかしいもんなんだな…。俺、一つ利口になったかも。」
ななこを抱き起こすようにして一緒に立ち上がる。顔が赤いのはお互い様なので、気にしないことにした。
「…あのさ、億泰…」
「んー?なんだ?」
あー、でも本当、俺には勿体無いよなぁ。
周りに散々「なんで億泰なんかと」って言われてるから、どうにも不安になる。
「…誰がなんと言おうと、私が好きって言うんだからいいんだよ!」
その不安を見透かされたような言葉。
同時に頬にむにっと柔らかい感触。
「……え?」
「…億、泰…?」
固まる俺に、ななこが不安そうに声を掛ける。ちょっと待てよ、さっきの感触は…その…
「…キス、した…!?」
「…うん、ダメだった…?」
「うわ、俺!はじめて!…やわらけー…」
思わず頬を押さえたけど、顔がニヤけるのは抑えられない。うわ、マジ俺めっちゃ幸せなんじゃねーの…
「…私も、初めて…。」
「マジか!んじゃあハイ、お返し。」
してもらったのと同じように頬に口付ける。
加減がわからず、顔面ごと押し付けるみたいになっちまったけど、抱き寄せたななこと触れた頬が柔らかくてそれどころじゃなかった。
「ありがと、大好き。」
幸せそうに笑うななこが可愛くて、あぁ、そんな顔も好きだなぁって思った。
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bkm