激甘な話をリクエストいただいたので、無意味にいちゃいちゃしてるだけ。
ななこさんは、チョコレートが好きだ。
彼女は制服のポケットとかカバンの中とか、いろんなところにチョコレートを持っているらしく、ふとした瞬間にまるで手品みたいに甘い香りを取り出して、ころりと口に放り込む。
「まぁたチョコ食べてんスか?」
彼女の唇からふんわりと香るチョコレート。
指摘するとほんのりと染まる頬がグレートに可愛い。
「…いっつもすぐバレちゃうね。」
むぅ、と考え込んだ彼女に理由を問えば、なにやらいつも俺がすぐ気付いちまうから、『俺に気付かれずチョコレートを食べる』ことを目標にしているらしかった。子供かよ。
「…そんなん当たり前だろ?」
溜息と共に言葉を零せば、ななこさんは苦笑しながら、「仗助くんはスルドイからなぁ、」なんて。
「するどくなくったって、そんだけ甘い匂いしてりゃあ一発で分かるっスよ。」
ぷくりと膨れた頬を突つく。柔らかな皮膚の向こうにチョコレート。どちらも甘そうで、ほっぺたごと食べてしまいたい。
「え、そうなの!?」
ななこさんは目をまん丸にして驚いている。俺にしたら今まで彼女が甘い香りに気付かなかった方が驚きだ。袋を開けた瞬間にふわりと香るチョコレート。彼女はそれが大好きすぎて全く気にならないのだろうか。
「…ひとくちちょーだい。」
柔らかな頬にそっと口付けると、ななこさんは不思議そうに俺を見つめた。
「…それじゃあ食べられないよ?」
「…じゃあ、どうやったら食べられるんスか?」
悪戯心でそう言えば、彼女は俺にからかわれていると気付いたのか頬を真っ赤にして、それでも俺の服の裾を引いた。されるまま身体を屈めると、遠慮がちに唇をくっ付けられ、小さな舌が溶けかけのチョコレートを押し付けた。
「…珍しく積極的なんじゃあねーの…」
口の中に残された甘さを噛み締めながら言えば、この上なく真っ赤になったななこさんは俯いてしまった。
「…だって、仗助くんが…」
小さく言い訳を零す彼女の顎を捕まえて上を向かせると、可愛らしい唇には溶けかけのチョコレートがくっついてた。
「…ねぇ、まだ残ってる。」
全部ちょーだい、なんてななこさんの唇をぺろりと舐めれば、彼女は弾かれたように後ずさった。逃がさないとばかりに腕を掴んで腕の中に仕舞い込む。ななこさんは少しばかりもがいたけれどすぐに静かになった。おずおずと回される腕が可愛らしい。
「…恥ずかしいよ…」
「腕まで回しちゃってる癖に何言ってんスか。」
笑いながら言えば、さらにぎゅうっと抱き着かれた。口の中に残る甘さと彼女の香りが混ざって、なんだかななこさんを食べてるみてーだなって思う。
「そういやなんで、アンタはそんなにチョコレートが好きなんスか。」
ふと、本当にふとそう思って、腕の中のななこさんに問い掛ける。彼女は俺に抱き付いたまま、恥ずかしそうに言葉を紡いだ。
「…チョコレートにはさぁ…依存性があるんだよ…」
くぐもった声を聞き漏らさないように、彼女の首筋に頬を寄せた。ななこさんが話すたびに、甘い香りが広がっていくような気がする。
「それ、ななこさんが依存してるってこと?」
「…そうじゃなくってね、依存…して欲しいなって…」
誰に?と聞けば答えの代わりにぎゅう、と腰に回した手に力が籠った。
つまりは「チョコレート=ななこさん」になったら、俺がななこさんに依存するって、そういうことらしい。…いや、おかしいだろ。
「…今の俺じゃ不満なの?」
別に冷たくしてるとかそんなことはない。むしろくっつきすぎるくらい側にいるんじゃあないかって、心配になるほどなのに。
「…そうじゃないけど…私、仗助くんに守られてばっかりな気がして。」
「…そんなん当たり前だろ。アンタは俺の腕の中にいりゃあいいんだよ。」
離すつもりなんかねーから、と言えば、ななこさんは安心したように笑って、俺の首筋に口付けた。
20160715