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OH MY LITTLE GIRL

夢主ちゃんが仗助と同級生で、身長145cmくらいの小さな女の子。




「なーにやってんだよ、ななこ…」

「あ!仗助、ちょうどいいとこに!」

教室に入ったら、黒板消しを持ったななこがぴょんぴょん飛び跳ねていた。ちっこいななこがどんだけ跳ねたって、黒板の文字には届かず、ただ悪戯に白い粉が彼女の髪を汚すだけだ。俺は彼女の手から黒板消しを奪い取ると、授業の残骸を綺麗さっぱり消し去ってやった。

「ありがとー、助かった。」

「おう。…椅子とか使えば良かったんじゃあねーの?」

俺の素朴な疑問に彼女は「え、カッコ悪いじゃん…」と答えた。ぴょんぴょん跳ねても届かない方がよっぽどカッコ悪ィんじゃあねーかなと思ったけど、それは黙っておく。

「…ったく、もう一人の日直はどーしたんだよ。」

「部活あるからって帰っちゃったよ、あと頼むなー、って。」

あっけらかんと笑う彼女を見て、いやそれ怒るとこじゃねーの、と考えて、そういや俺はななこが怒ったところを見たことがないな、と思った。
面倒事を押し付けられた彼女は災難だけど、俺にしてみりゃ放課後二人っきりなんてグレートな状況だから、怒んないでくれて良かったな、なんて。

「…しゃーねーなぁ…。そんじゃこの仗助くんが手伝ってやるよ!」

「ありがと!」

「…で、あと何があんだよ。」

あとはねぇ、日誌だけなんだ。と言われて、あれこれ帰っていいとか言われちまうのかなと少し不安になったのだけど。

「…あのね、一人じゃ怖いから…待ってて欲しいんだけど…」

「へ?…あぁ、お安い御用だぜ!」

怖いってなんだよ、可愛すぎじゃあねーの。
心臓が煩く鳴っているのを気取られないように視線を逸らした。窓の外には部活中の生徒がいるけど、この教室には俺とななこの二人だけ。
ななこはそんなの気にすることなく、日誌を出して椅子に腰掛けた。俺も倣って机の向かいの椅子を引く。

沈黙。ななこは黙々と日誌を書いている。机に向かうななこの旋毛が、並んで立つよりずっと近くに見える。目の前に艶々の髪が触ってくださいと言わんばかりに光を湛えている。その中にさっきのチョークの粉がまぎれているもんだから、思わずそっと撫でた。

「ひゃ!…な、脅かさないでよ…!」

「ぅえ!?わ、悪ィ…つい…」

ななこはびっくりして顔を上げた。こちらを向いた彼女の顔があまりに近くて、思わず顔が熱くなる。俺が赤くなるのを見てななこもつられたのか、恥ずかしそうに視線を逸らした。

「…もー…なにしてんの仗助…」

「…キレーな髪だと思ってよー…」

ありがと、…でもそれ触っていいかとは別問題だから、と彼女は照れたように笑って、俺の頭を持っていたシャープペンで指した。

「そんなら私、仗助のリーゼント触ってみたい、」

「はぁ!?」

「いーでしょ?私の髪触ったんだから、私も触りたい!」

キラキラした瞳で見つめられても、俺のリーゼント触りたいとか意味がわかんねー。大切にしちゃあいるけど、コイツになら、別に触られてもいーかなぁ、なんて。

「…手ェベタベタんなるぜ?」

書き終わってからにすれば?と言えばななこは嬉しそうに笑って、再び視線を手元に下ろした。そうしてさっきよりも随分と早いペースで日誌を書き上げ、パタンと勢いよく閉じた。

「よーし、覚悟してよね仗助!」

「…乱すんじゃあねーぞ。」

まかせろ!と謎の自信を見せながら、ななこはこちらに身を乗り出した。そうして俺の頭に手を伸ばす。
目の前にセーラー服のリボンと柔らかな膨らみが近づいて来て、俺は視線のやり場に困って目を閉じた。あれ、これキスするみたいじゃね?と思って恥ずかしくなる。まぁ触られたのは頭なんだけど。

「…おぉ、初めて触った…」

ななこは勝手に感動して、よくこんなこと出来るよね、なんて言いながら物珍しげに俺の髪を撫でている。こいつ手もちっこくて可愛いんだな、なんて。

「…ッ…もーいいだろ!いつまで触ってんだよ!」

我に返って頭を引っ込めると、ななこはゴメンゴメンなんてちっとも悪びれない様子で手を離した。そうして俺の顔をまじまじと見て、ぽつりと零す。

「…こんなに近いのって、不思議。」

ほら私小さいし、仗助は背ぇ高いしさ。と彼女は笑って、それから爆弾発言。

「…でも仗助って、どっから見てもカッコいいんだね!」

「…ーーッ…!」

コイツは俺を殺す気なんだろうか。熱い頬のままななこを見れば、彼女は俺の心中なんかこれっぽっちも気付いてない顔でニコニコしている。

「…おめーもよォー…どっから見たって可愛いじゃあねーかよ。」

意趣返しの意味も込めて、本音をそのまま言ってやる。いつもは見下ろすその顔は、近くで見たって可愛かった。肌なんて本当に俺と同じなのか疑うほどにキメが細かくって柔らかそうで、化粧なんかしてないだろうに唇はぷるりと紅くて。

「…ッ!何言ってんの!」

見る間に赤くなるななこを眺めていると、ちこっとばかり余裕が生まれた。ななこが先に言ったんだろ?と悪戯っぽく笑えば、もー、帰る!と彼女は勢い良く立ち上がった。

「…日誌、職員室だろ?」

いこーぜ、と彼女に倣って立ち上がれば、見慣れた位置に彼女の頭。胸の辺りに見える旋毛が、ひどく遠い気がした。

「…うん!…って、やっぱ仗助背ェ高ーい!」

彼女は首をこちらに向けて、上目遣いで笑っている。俺は彼女の頭に手をポンと乗せて、「ホントななこはちっこくって可愛いなー!」と笑ってやった。

「…仗助、あのさ。…もっかい、しゃがんでくれない?」

「…なんでだよ。」

俺の問いにななこは柔らかく笑うだけだった。不思議に思いながらも、彼女と同じ位置になるように身体を丸める。
ななこが近付いてくるから、また髪でも触んのかなと思ってさっきみたいに目を伏せた。

「…好き。」

突然耳元でそう言われて、びっくりして顔を上げると、ななこは真っ赤な顔で俺を見ていた。

「…ッなんだよ急に…びっくりすんだろーが。」

小さな身体を胸に抱き込めば、ななこは驚いて身体を硬くした。艶めく髪に唇を寄せると、シャンプーの香りが鼻腔をくすぐる。

「…じょ、すけ…!?」

「…これ、両思いっつーヤツだろ。…俺も好きなんだから。」

耳元に囁きかけると、ななこがびくりと震えるのがわかった。耳まで真っ赤んなって、かわいーの。

「…ッ、じゃあ、これからよろしくね!」

ぎゅう、としがみ付かれて、思わず笑みが零れる。胸にくっついた彼女の頭をわしわしと撫でて「一緒に帰ろーぜ」と言えば、彼女は当たり前のように俺の手をぎゅっと握った。

20160629


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm