貧乳夢主の悩みを解決するために揉んで大きくしよう!というアホな話。
7.5、10、12.5、15、17.5…
この数字の羅列で、女子のプライドに序列がつくのだ。私はカタログ雑誌を見ながら溜息を吐く。色とりどりのレースが踊るページを、ぺらりと捲った。
「…なーに見てんの?」
「ぅわ、仗助くん!」
慌てて雑誌を閉じると、彼は「何驚いてんだよ。エロ本じゃああるまいし。」と明るく笑って私の手元を覗き込んだ。
「…可愛いから見て、って貸してもらったんだけど…」
「ちょ、そりゃー男子高生にはチコっとばっかり目の毒だろ!」
仗助くんにページを見せれば、彼は驚いて頬を赤くした。下着のカタログなので、まぁ確かに目の毒なのかな…、と考えたけれど、世に言う男性向けのグラビア雑誌と下着のカタログでは、雰囲気とか魅せ方とかが全然違うのになぁとしか思えなかった。オトコノコはこんな真顔のマネキンみたいなモデルさんにでも欲情するんだろうか。…確かに、胸の膨らみは可愛らしいレースで彩られているけど。谷間だってあるけど。
「…用事、終わった?」
「ん。悪ィな待たせて。…帰ろーぜ。」
なんの用事だったかは聞かないし仗助くんも特に何も言わないけど、多分告白されていたんじゃないかなーと思う。
ホント格好いいもんなぁ、仗助くん。隣を歩く姿を横目で見上げると、彼は私の視線に気付いてこちらを向いた。
「…どーした、ななこ。」
「…また告白されてたの?」
私の声に不安が混ざっていることを察した仗助くんは、私を安心させるかのように、手をぎゅっと握ってくれた。
「んー、そうそう。困っちまうよなァ、俺はななこ一筋だってのによー。」
「どんな子…?」
「キョーミねーから、あんま覚えてないっスねー。…あ、おっぱいはデカかった。」
言われて思わず視線を下げる。ストンと重力に従うセーラー服には、スカーフ以外の凹凸がなくて悲しくなる。
「…仗助くんは、おっぱい…おっきい方がいい…、」
よね。うん、聞くだけバカだった、私。
自分で自分の地雷を踏むとかホント馬鹿。
「えっと、もしかして…気にしてんスか?」
おっぱいちっさいの、と続けられて、当然ながら仗助くんもそう思っているんだと、突きつけられた事実に更に悲しくなる。しょんぼりする私を見て、仗助くんは困ったように頬を掻いた。
「あのよォ〜、もしかしてこの仗助さんがそんなコト気にするような器のちっちゃい男だと思ってんの?」
「…違う、けど…私…胸ないのコンプレックスだし…」
不意に繋いだ腕を引かれてよろけると、しっかりした腕に抱き込まれた。背中から抱き締められて、驚いて首を後ろに向ける。
「…そんなに気になるなら、俺が手伝ってやるよ。」
大きな手が制服の上から私の小さな胸を鷲掴みにする。驚いて声を上げると、仗助くんは楽しそうに笑った。
「…ちょ、ッ!仗助くんっ…!」
「…揉むと育つって言うしよォ、ななこのおっぱいは俺が責任を持って育ててやっからなー。」
育たなかったらそん時は俺が責任取りゃあいーんだろ?なんて言うから、一瞬だけ、そうホント一瞬だけ。ちっちゃいまんまでもいいかなぁって思った。
「…で、もッ!こんなとこじゃダメ!」
ぎゅうう、と手をつねり上げると仗助くんは間抜けな悲鳴をあげながら私を解放した。
「…んじゃあよー、うち来ねえ?」
「…え。」
「…よっし、決まりな!」
私の返事なんて全く聞いていない仗助くんは、ぐいぐいと手を引いて進んでいく。状況を飲み込む頃には、東方家の玄関に押し込められていた。
「…お、邪魔…します…」
「…誰もいねーから、そんな緊張しなくっていーぜ。」
ぽん、と軽く頭を叩かれる。彼氏の家とか、緊張するなって方が無理な話で。しかもあの、みんなの憧れの東方仗助くんだ。ファンが知ったら殺されそう。そんなことよりも…。
「誰もいない方が、緊張するような気がするんだけど…」
「…なんでだよ。」
呆れたように笑う仗助くんは、さっきまで私にしていたことを忘れたとでも言うのだろうか。じとっとした視線を送ってみたけど、彼はそんなの意にも介さず私の手を引いて自室へ入るよう促した。
「…悪ィ、散らかってっけどゆっくりして。」
初めて入った仗助くんの部屋は、当たり前だけど私の部屋とは全然違ってて。雑誌やらヘアスプレーやらが雑多に置かれた机の上も、飾り気のないシンプルなベッド周りも、なんというか、とても新鮮だった。
「…あたり前だけど、やっぱり男の子の部屋って違うんだね。」
「ななこの部屋も行ってみてーなぁ。」
促されるままにベッドに腰掛けると、仗助くんは当たり前みたいに私の隣にぴったりくっつくように腰を下ろした。
「…で、さぁ。さっきの。」
私の肩がびくりと跳ねるのを、仗助くんは悪戯っぽく見つめて笑う。
「ちげーよ。雑誌の話。」
「え!?あ、うん、雑誌ね!」
私が慌ててカバンを漁るのを見て、彼はめちゃくちゃ笑っている。くそ、絶対からかわれてる。悔しいけれど、彼には到底敵わないので無視して雑誌のページを捲った。
「…へー、色々あるんだなぁ…」
仗助くんは私にぴったりくっついて雑誌を覗き込んでいる。…教室では「目の毒」なんて言ってたけど、こんなぴったりくっつかれている方が私にはよっぽど毒だと思う。
「…なぁ、買うの?」
「…うん、そんなに高くないし…友達が一緒に頼もうかって言ってたから。」
「へー。…じゃあ、どうせ買うなら俺好みの下着買って。」
仗助くんがななこに似合いそーなやつ選んでやるからさ、と彼は勝手にページを捲り、あれやこれやと騒いでいる。へぇ、仗助くんってこーいうの好きなのか。
「俺、これがいいなー。」
「…でもそこ、…大きいサイズだから…」
やっぱり巨乳が好きなんじゃないか、と溜息をつくと仗助くんはあっけらかんと笑って言った。
「んじゃあよー、ななこの胸を育てる方が先だな!」
ぼふん、と勢い良くベッドに押し倒され、状況もわからないままに唇を塞がれた。
20160302
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bkm