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俺の白で汚させて

タイトルを見たら大体分かるような話




チャイムの音に玄関のドアを開けると、仗助くんが立っていた。

「…どうしたの?」

「…おじゃましまーす。」

こんな夜更けに何の用事なのかと訝しんだ視線を送るけれど、彼はそんなの御構い無しといった様子でズカズカと部屋に上がり込む。勝手知ったる他人の家とはこういうこと?なんて考えつつ、彼の背中を追うべく急いで玄関の鍵を閉めた。

「ななこさんさァ、今日何の日か知ってる?」

「…今日?ホワイトデーでしょう?」

部屋に入った仗助くんは、くるりと私に向き直りそう問いかけた。座ればいいのにと思ったけれど彼の纏う空気が私からの質問を許さないような気がして、何も言わずに壁に掛けられたカレンダーを見る。今日は3月14日、ホワイトデー。そうは言っても恋人のいない私には特段の予定もなく、平日ということもあり普段通り仕事をした。浮ついた行事に興味なさげなオフィスはまぁ静かなもので、代わり映えのない1日。

「俺、ななこさんからバレンタインもらってないんスけど。」

「だって誰にもあげてないもの。…私からじゃあなくたって、たくさんもらったでしょう?」

不満気な視線を送る仗助くんにそう返せば、彼は暖かいこの部屋に不釣り合いなほどに表情を暗くした。大袈裟なほどに顔を顰めるから、冗談なのか本気なのか判断がつかないと思う。

「仗助くんはななこさんからチョコレートもらうのメッチャ楽しみにしてたのに、ジュンジョー踏み躙られたっつーかァー。」

怒りを押し込めたような不機嫌な声。こちらに向けられる視線は真っ直ぐで、思わず怯んでしまう。そもそも私と仗助くんは付き合ってなんかないし、「仗助は本命チョコだって沢山もらってる」って億泰が羨ましがってたのに、何をそんなに不機嫌になることがあるんだろう。

「…え、ごめん…」

困ったように見つめると、仗助くんは不機嫌そうに眉を顰めたまま、唇の端を釣り上げた。どんな表情でも絵になるなぁ、と思わず写真に収めたいような気持ちになる。何処ぞの漫画家なら、文句を言いながらもスケッチするに違いないくらい。

「っつーワケでェ、『お返し』させてもらうっス。」

「…お返し…?」

「うん。…ななこさん。そこ座って。」

そこ、と差された位置に大人しく腰を下ろす。ベッドの横に座った私を見下ろすように、仗助くんはベットに腰掛けた。そうして足を開くもんだから、まるで彼に跪いているみたいな私。

「…仗助くん?」

困ったように見上げると、彼は嗜虐的な笑みを浮かべながら私を見下ろしていた。

「…ななこさん。この状況んなったら、何すればいいか…わかりますよね?」

そう言って、さも当然といった風にズボンの前を寛げる。目の前に曝け出されたそれはすでに頭を擡げていて、驚きと共に思わず釘付けになってしまう。

「…え、あ…の、えッ?」

「…早く。」

有無を言わせぬ調子で頭を押し付けられる。
目の前に曝されたそれをどうすればいいか知らないほど子供ではないけれど、だからと言ってなんの抵抗もなく口に含めるほどでもないわけで。

「仗助くん、…こういうのは、ッ…カノジョとしよ…」

やっとの思いで喉から絞り出したその言葉を聞いた仗助くんは、何も言わずに私の唇に無理矢理その剛直を捩じ込んだ。噛まれでもしたらどうするつもりなのか、なんて場違いなほど冷静な思考に嫌気が差す。

「…っは…」

気持ち良さそうな吐息が頭上から降ってきて、胸がきゅうと締め付けられる。
こんな、年下の少年にいいようにされているのに、私は。

「…ッん、ぅ…」

非難の声も上げられず、無慈悲に口内を犯されていく。髪を掴まれて、頭を揺さぶられて、喉に突き込まれて。溢れる唾液をどうにかしたくて喉を動かせば、仗助くんは切なげに声を上げた。

「…ななこさ、ん…、すげ…気持ちい…」

熱に浮かされたみたいな声と卑猥な水音が耳から染み込んで脳を揺らす。あぁもう、どうして、

「…ん、っ、…」

行き場のない手で仗助くんの太腿を掴む。これじゃあまるで縋っているみたいだ。息が苦しくて、勝手に涙が零れた。

「…ぁ、ななこさんッ、…」

びくびくと口の中で仗助くんが震える。そうして彼は両手で私の頭を掴んで、勢い良く起こした。

「…じょ、すけ…く…!?」

「…ッく…!!」

唇を解放された私が彼の名前を呼び切る前に、仗助くんは大きく身体を震わせ、その精を放った。驚いてぎゅっと目を閉じると、熱い飛沫が頬を汚す感触。

「…きゃっ、…!」

「…っは、ぁッ…ななこ…さん…」

熱の籠った声で名前を呼ばれて、恐る恐る視線を上げると、仗助くんはその指先でそっと私の汚れた頬を撫でた。纏わり付いた欲望を指先で拭って、私の口許に寄せる。

「…仗助くん…」

「…すげ、可愛い。…ななこさん、ねぇ…舐めて。」

舌先に粘り気のある苦味を押し付けられた。その声が余りに切なげで、どうしていいのかわからない。戸惑いつつも舌を這わせると、仗助くんは嬉しそうに顔を綻ばせた。

「…そう、上手。…ねぇななこさん…好き…」

口の中をゆっくりと撫でる指先は、程なくして離れた。掛ける言葉がわからなくて瞳を伏せると、彼は緩慢な動作でズボンを元に戻し、私の隣にしゃがみ込む。

「…仗助くん、なんで…」

「…だって、俺…ななこさんのチョコ、欲しかったのに…」

だからと言ってこんなことをしていい理由にはならないでしょう。そんな言葉、仗助くんの悲壮な表情を見たら掛けられなかった。
黙り込む私に、仗助くんは言葉を続ける。

「俺が何回好きって言ったって、アンタは子供の戯言だと思ってんでしょ」

そんなんどーしたらいいんスか。と言われて、抱き締められる。仗助くんまで汚れちゃうよと言えば、そんなんどうだっていい、とさらにぎゅっと力が籠った。

「…ごめんね。」

「…なんでななこさんが謝るんスか…」

どうしていいかわからない。そんなに悩ませてしまったのは私なんだろう。でもだって、仗助くんがまさか私なんかを。こうまでされたって、現実感なんてない。仗助くんが本物であることを確かめるように、そっと抱き締め返した。

「…だって、なんで私なんか。」

「俺が選んでんだから、アンタがそんなこと言うな。」

きっぱりと言い切る彼は、私の何が好きなんだろう。こんな涙やら体液やらでぐちゃぐちゃの顔を見ても、まだ好きだなんて言うのが信じられない。

「…バレンタイン、来年でも…いい?」

困ったようにそう告げると、仗助くんは勢いよく私の身体を離した。

「それって、付き合ってくれるってコトっスか?」

きらきらと期待の籠った視線を向けられて、思わず苦笑する。こんな酷いことされて、私は何を言っているのかと。

「…うん、」

それでも、目の前でこんな嬉しそうな顔をされては許すしかない、と私は心の中で言い訳をした。


*****

「…でもさぁ…なんで、あんな…」

「ホワイトデーっつーからには、なんか白いもんを…って思うじゃあないっスか。」

「…ひどい。」

「まぁ、結果オーライっつーことで!」


*****

20160314 Happy WhiteDay!


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm