「ココロのまんなかに」「同心円状に広がる」の続き。
*****
「ななこちゃんち、すげー久しぶり。」
「…それもそうだね。」
先程からの流れでここまできたらもうなんか期待するしかないような気がするんだけど、ななこちゃんはどう思ってんのかな。
「相変わらず、みんな忙しいんだよ。」
ななこちゃんはそう言いながら玄関の鍵を開ける。ななこちゃんのご両親は仕事が忙しくて、家にいないことも多い。そのせいで俺たちはこんなに仲良しで、ななこちゃんはえらくしっかり者なのだ。
でも今、そんなことを言われてしまっては、何か進展が(それは俺が毎日妄想していたような)あるんじゃないかなんて期待してしまう。
「…おじゃましまーす。」
心臓の音がうるさくって仕方ない。気取られないように平静を装うけど、どうしたってそわそわしてしまう。
「…それじゃあ仗助ちゃん、お願い。」
そう言うとななこちゃんは、ベッドにころりとうつ伏せになる。
「…え?」
状況が飲み込めずにポカンとしていると、ななこちゃんは足をぱたぱたさせながら催促する。
「仗助ちゃんが肩揉んでくれるって言ったんじゃん!は、や、くーー!」
「あー、そうだったっスね。悪ィ悪ィ。」
躊躇っているのを悟られないように、そっと肩に手を当てる。これは、身体を跨いでもいいってことなんだろうか。
ぎゅ、と親指に体重を掛けると、ななこちゃんは色っぽい吐息を漏らした。
気持ち良さそうに息を吐いて、時折俺を勘違いさせるような声を上げて。
「…仗助ちゃん、…きもちい…」
「あのさ、ぁ。…そんな声出されたら俺が勘違いしそーなんスけど。」
もうなんか、煽られてるとしか思えないし、この状況はどう考えてもそういうことでしょ、と思う。
ななこちゃんは軽く笑って、ころんと仰向けになった。そうしてその唇から出た台詞にひどく驚く。
「…してみる?」
「…へ?」
お茶でも飲む?くらいの気軽さで、ななこちゃんはやんわりと優しく笑う。
今お茶が入るから、どうぞ飲んでって。みたいな…あ、これが据え膳、ってやつ!?
「…だから、セックスしてみる?って。」
俺がポカンとしているのを意味がわからないと取ったのか、ななこちゃんはもう一度、今度はハッキリと告げる。
「ななこちゃん、そ、ーいうのは、…ッ…」
「恋人だし、問題ないと思うんだけど。」
俺が戸惑っているのがなんでかわかんないみたいな様子で、にこにこ笑ってる。
恋人ったって、まだ1日も経ってないってのに。
「えと、あの…」
なんて言っていいのかわからない。そもそも、なんでこんなことに。
「…仗助ちゃん。」
ななこちゃんはゆっくりと身体を起こして、戸惑う俺にそっと口付けた。
「…っん…ぅ…」
口の中を、ななこちゃんの舌が這う。
舌先をつつかれて、歯列をなぞられて。
すげー気持ちよくて、力が抜けそうになる膝をぐっと踏ん張って、ななこちゃんに抱き着く。
ななこちゃんはぐい、と俺を引っ張るとベッドに沈む。勢いよく覆い被さってしまって、ななこちゃんを潰しちまったんじゃないかって慌てて腕に力を込めた。
「じょーすけちゃん、大好き。」
濡れた唇を三日月型にして幸せそうに笑うななこちゃんを見るだけで、なんかもうたまんなくて。
「そんな誘われたら…俺ッ、我慢できないっス…」
「我慢なんて、しなくていいよ?」
一緒に楽しも?なんて、今からゲームでもするみたいにあっけらかんと言われて戸惑ってしまう。
俺が初めてだからこんなに緊張してしまうだけで、ななこちゃんにとってはなんでもないようなことなんだろうか。
「…っ、ななこちゃん…」
ぎゅうと抱き締める。柔らかくってあったかくっていい匂いがして、頭がぐらぐら沸き立っちまいそうだ。
服に手を掛ければ、さりげなく脱がしやすいように動いてくれて、俺の手が迷えば、ななこちゃんが上からそっと手を重ねてくれて。
初めてなのに、ななこちゃんのリードで滞りなく進んでいく愛撫。
俺しか見えてないみたいに言ってたくせにこんなに手馴れてるなんて、ななこちゃんがよくわかんない。
制服姿で、知らないヤツの隣を歩いていたななこちゃんの姿が記憶から蘇る。そうやって、俺の知らないところで大人になっていったのかな。
俺が知らないだけで大人ってのはみんなこうなんだろうか。
「…ッあ…ぁ、じょーすけちゃん、…きもちい…」
胸の頂を口に含めば、先ほど肩を揉んでいた時なんか目じゃないくらいの色っぽい声が零れて。
「…俺も、柔らかくって…気持ちいい…」
口に含んだまま顔を胸に埋めれば、むにゅ、と柔らかく沈む唇。反対側を揉みしだきながら摘み上げると、嬌声は一際高く上がった。
「んぁ…ッ、は…」
ぎゅうと胸に押し付けられるように抱き締められる。赤ん坊みたいに吸い上げると、手に籠る力が強まった。
「…ななこちゃん、好き…」
腕の中で喘ぐななこちゃんはとても綺麗で、なんか見てるだけで心臓がドキドキ鳴る。
「…じょーすけちゃ、…こっちも、さわって…」
ななこちゃんの手に導かれるままに触れたそこはもうしとどに濡れていて、俺の指をあっさりと飲み込んでいく。
「…すげ、…濡れてる…」
「…あっ…ん…、は…もっと、ちょーだい…」
俺の手を挟み込むようにして腰を揺らす姿も紅い唇から溢れる声も、すげーいやらしい。
「…ななこちゃんの中…熱い…」
ここに俺のを突っ込んだらさぞかし気持ちいいだろうなって思いながら、言われるままに指を増やして。
「…ね、仗助ちゃん…交代しよ…」
ななこちゃんは俺の肩をとん、と押して、それだけなのにまるで操られるみたいにあっさりと体勢は逆転する。
ななこちゃんは手慣れた様子でズボンを脱がせて、どこから出したのかコンドームを被せてくれた。俺が驚いているうちにななこちゃんは俺に跨って腰を下ろしていく。ずぶずぶと中に飲み込まれていく様を目の当たりにして、頭がぐらぐらする。
「やっ…じょーすけちゃ、ぁんッ…」
「…っう…ぁ、ななこちゃ…」
ななこちゃんはぎゅっと目を閉じて、俺の上で腰を使っている。それはすげー気持ちいいんだけど、俺がしたいことと何かが違くて。
「…っん、ぁ…」
「ななこちゃんッ…ちょ、待って…ッ!」
制止の声を上げると、ななこちゃんは不安げに俺を見つめた。
「…気持ち良く、なかった…?」
「きもちいーけど、もうちょっと…ゆっくりして欲しいっ、す…」
身体を起こすと、ななこちゃんを抱き締める。それから少しだけ身体を離して、ななこちゃんの顔を見た。
「…あ、の、…仗助ちゃん…?」
ななこちゃんは困ったように眉を寄せて、俺の視線から逃げようと俯く。頬を両手で挟んで前を向かせ、正面から見つめ合った。
「…俺のこと、ちゃんと…見て。」
ななこちゃんは困ったように視線を泳がせるけど、俺があんまり見つめてるもんだからどうしても逸らしきれなくて。
諦めて恥ずかしそうに俺を見たななこちゃんの顔がすごく色っぽくて、思わず口付けた。
「…ん、ッ…」
「…ね、ななこちゃん…好き…マジ、ほんと俺…どーにかなりそ…」
この気持ちを、どう処理したらいいのかちっともわからない。一緒にいることが幸せなはずなのに、ぐちゃぐちゃに壊してしまいたくて。
ななこちゃんを見たくて、ななこちゃんに俺を見て欲しくて。触れ合った皮膚は気持ち良いけど、いっそこんなの無くなってしまえばいいとも思う。
「…う、あっ…や、ぁ…ッ」
きゅうと中が締まって、ななこちゃんが声を上げる。さっきまでと明らかに違う様子に驚いて顔を見れば、ななこちゃんも戸惑った顔をしていて。
「…ななこちゃ、ん…?」
「や、ッ!ちがっ、いつもと、ぜんぜんちがうの、仗助ちゃんっ…!」
どうしよう、と縋るように抱き着かれる。
あんなに慣れた様子だったはずなのに、急に初めてみたいに追い縋ってくる姿に庇護欲と嗜虐心のどっちもが刺激される。守ってあげたいけど、ぐちゃぐちゃにしたい。
「…それ、きもちーってコト…?」
軽く揺するように腰を動かせば、それだけで可愛らしい声が零れて。
「…やっ、見なぁ、いでッ、やあっ」
上気した頬も濡れた声も、縋る腕も全部可愛いなんて反則だと思う。さっきまで俺を翻弄していた身体が、今は面白いように自分の動きに反応する事実が堪らなく嬉しいなんて。
「…ななこちゃんッ…」
抱き締めて突き上げる度に絡み付く内部は、めちゃくちゃ気持ち良くて。
「じょーすけちゃんっ、じょーすけ…っあぁッ!」
悲鳴染みた声を上げながらガクガクと身体を震わせるななこちゃんをぎゅうっと抱き締めて、最奥に俺の全部をぶちまけた。
*****
「…、は…あっ…」
肩で息をしながら、額に張り付いた髪を掻き上げる。くったりと俺に身体を預けるななこちゃんを覗き込むように身体を折ると、小さな手が俺を拒んだ。
「…や、見ないで…」
「…なんで。可愛い顔見せてよ、ななこちゃん。」
顔を上げさせるとななこちゃんは涙目で。
なんで泣くの?と小さく問えば、ななこちゃんは瞬きで睫毛に付いた水滴を揺り落とした。
「…じょーすけちゃん、あのね…」
こんなに満たされた気持ちになったの初めてなの、なんて可愛い台詞を吐いて恥ずかしげにしがみつくもんだから、思わず反応しちまって。だって俺ってば思春期だし。
「…ななこちゃん、」
「…ひゃ、じょーすけちゃんッ…また…」
硬度を取り戻してしまったそれを持て余すように動かしたら、繋がったまんまのななこちゃんはまた可愛らしく鳴いてぎゅうとしがみついた。
「…ななこちゃんが可愛いのが悪い。…ね、もっかい…」
そっとベッドに横たえて組敷くと、小さく制止の声。なんで?と聞くとななこちゃんはめちゃくちゃ恥ずかしそうにコンドームは取り替えるんだよ、と教えてくれた。
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bkm