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流れ星に何願う

「そーいや、もうすぐ七夕っスねー。」

「…え?あ、ホントだー。」

カレンダーを眺める。7月だなぁとは思ったけれど、七夕かぁ。大人になってしまえば、そういえばあったなぁくらいのイベントだ。

「ガッコに、笹?竹?飾ってあってさぁ、お願いごと書けって紙とペンもあったんス。」

学校に七夕飾りなんて、なかなか素敵じゃあないかと思う。私が学生の時はそんなのなかったなぁ。

「何書いたの?」

「…ナイショ。」

仗助くんは小さく笑う。彼のことだから、欲しいものでも書いていて「ななこさん、叶えてくださいよー」なんていうかと思ったのに、意外。

「…教えてくれないなら言わないでよー、気になるじゃない。」

「ななこさんだったら、なんて書きます?」

じっと見つめられて、緊張する。なにを書こうかなんて、上手く考えられない。

「うーん、なんだろ…別にないなー。」

「 そう言わないでさぁ、この仗助くんに叶えられることなら俺頑張るし!」

「うーん…仗助くんナイショにしてるし、私もナイショ!」

笑って誤魔化せば、彼は不機嫌そうな顔になる。

「…俺、たまにはワガママ言われたいっス。」

ムスッとしたまま、私を見つめる仗助くん。
なんだか可愛らしいなんて思っていると、彼には伝わってしまったようで、「子供みたいだって思ってます?」と睨まれた。

「…でもさぁ、仗助くんにしたら七夕のお願いじゃないよね?」

「ちがくて…ななこさんの七夕のお願いを、俺が叶えてあげるっつーやつっス!」

「…ネタバラシしちゃったらダメじゃない?」

ああもう、なんて可愛いのか。…言ったら怒られるだろうけど、私はこの年下の男の子が可愛くて仕方ないんだ。

「もー、子供扱いしないでください!」

後頭部を押さえ込まれて唇を奪われる。
そうされてしまったら私がもう敵わないのを分かっているくせに、仗助くんはズルい。

「…っん…ぅ…」

彼にしがみつくしかできなくなってしまう頃、やっと唇が離される。

「…かーわいー。」

「…ズルいよ。」

「だって俺には、こうするしかないんスもん。」

ぎゅっと抱き締められる。
仗助くんは年下なのを気にしてるのかな。

「…仗助くんは、年下の女の子のほうが…いい?」

越えられないものを悔いられると、なんだか私じゃダメだって言われてるみたいで悲しくなってしまう。

「…ななこさんだって、年上の…もっとしっかりしたヤツの方がいいんじゃないっスか?」

「…私は、仗助くんじゃなきゃやだよ。」

もし願いが叶うなら、どうか彼が幸せでありますように。隣にいるのが私じゃなくても、いいから。

「…俺だって、ななこさんじゃなきゃ…」

でも、と彼は続ける。不安そうに眉を下げて、ぎゅうと私を抱きしめて。

「…でも、不安なんス。…俺…」

「…大丈夫だよ。大好きだから。」

きつく抱き返す。仗助くんくらい格好良かったら、なんにも悩むことなんてないと思うのに。
けれどそれだけ愛されていると思うと、思わずニヤケてしまう。

「…なぁに笑ってんスか。」

「いや…私愛されてるなーって思って。」

本当に、もう何にもいらないくらい幸せだなぁ、なんて。
織姫と彦星が知ったら嫉妬されちゃうから、願い事なんてしない方がいいかも、と思う。

「ホント、嫌んなるくらい好きっス。」

「不安になっちゃうくらいだもんね。」

「…意地悪。」

恥ずかしそうに視線を逸らす仗助くんの頬を捕まえて、こちらを向かせる。

「私のワガママ、聞いてくれる?」

じっと見つめれば、仗助くんも真剣な面持ちで頷く。

「なんスか?」

「…明日の朝まで、一緒にいて。」

明日も学校なのは知ってる。私だって仕事がある。普段は年上だし、と仗助くんを宥めて帰らせる役だけど、本当は毎日だって一緒にいたい。一人の部屋は寂しいから。

「…お安い御用っス。」

嬉しそうに笑う仗助くんの頬に口付ける。
どうかこの笑顔が、ずっと見られますように。


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm