エイプリルフールなので、私は兼ねてからの想い人である東方仗助くんに告白することにした。
エイプリルフールなので、というのは私が単にチキンだから。もしダメそうだったら冗談ってことにして今まで通りでいたいとかいうズルい考えでのこと。
「…仗助くん!」
「ななこ先輩、どうしたんスか?こんなところに呼び出して。」
「私、仗助くんのことが好きです!」
意を決してそう言うと、彼はすごーく複雑そうな顔をした。
「…え〜っと、こんなこと言ったら失礼かもだけど…、エイプリルフールってやつっスか?」
そりゃあ彼だって、今日が何の日かくらい知っているだろう。
私が浅はかな考えで逃げを打ったせいで、こんな言葉しか聞けなかった。
断られるにしてももうちょっとちゃんと受け止めてもらいたかった…どう考えても自業自得だけど。
「…そう、だよね。そう思うよね。」
自分が情けなくて涙が出てきた。
こんなことを望んでいたんじゃないのに。
「うわ、なんで泣くんだよォ!え、もしかしてマジ!?」
仗助くんが慌てる。嗚咽で上手く喋れそうにない私は、首を縦にぶんぶん振った。
「…まじ、ホントに…すき…」
「…ごめんな、疑ったりして。」
仗助くんの大きな手が宥めるように私の頭を撫でる。彼との身長差も相まって、まるで私が小さい子供みたいだと思う。
「…っ…うー…」
「…付き合うっつったら…泣き止んでくれます?」
びっくりして顔をあげると、イタズラっ子のような瞳。これってもしかして…
「…エイプリルフール?」
「そんな悪趣味なことしないっスよ。」
そう言うと、もう一度頭をポンポンしてくれた。どうやら本当に付き合ってくれるらしい。びっくりして嬉しくて、さっきまでの涙はどこかへ行ってしまった。ゲンキンだな私。
「付き合ってくれるって返事が十分悪趣味だとおもう。」
泣いてしまったことが恥ずかしくてそう強がると、仗助くんは仕返しとばかりに笑って言った。
「ま、誰かさんみたいにフラれたら冗談にしようなんて思いませんから。」
「わ、わかってていじわるしたの!?」
「そりゃ、そーっスよ。ななこ先輩が俺のこと好きなんて、億泰以外みーんな気づいてましたから。」
私ってそんなにわかりやすかったのか…とがっくり項垂れる。
億泰にバレなかったのなんてなんの慰めにもならないよ…!
「あんまりあからさまなんで、俺もつられて好きになっちゃいました。」
覗き込むようにして仗助くんが囁く。
耳許で聞こえる声が色っぽくて、思わず鳥肌が立つ。
「…ッ!マジ!?」
「あぁ、これはエイプリルフールっス。」
ガバッと顔を上げる私に、意地悪く笑いかける仗助くんの顔は赤くなっていて、本当は嘘じゃないんじゃないか…なんて淡い期待を抱いてしまう。
「来年はホントにさせちゃうから!」
びしっと人差し指を突きつけて宣言してやった。
桜も咲いてくることだし、まずはお花見デートをしよう。
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bkm