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寂しいときは。

怖い夢を見た。
内容は思い出せないけれど、気温の高さも相俟って汗だくで目が覚めて。
仰向けで寝転んだまま視線を彷徨わせるけれど、一人暮らしの部屋には誰もいない。

「う…」

枕元の携帯を手繰り寄せて時間を見れば、深夜1時。最近ゲームにハマっていると言っていたし、明日は土曜日だからもしかしたらまだ起きているかもしれない。
迷惑だろうか。けれど、声が聞きたかった。

『起きてる?』

一言だけ送ると、そのまま受信メールの履歴をなぞっていく。
『どーしたんすか?』とか、『いいっすよ』とか短いメールばかり。『俺も』とあるのは多分、好きだと送った返事だろうか。

残り香を探るように、履歴を追っていく。
なんだか私ばっかり好きみたいだなと溜息をついたところで、手の中の携帯が光り出す。

「もしもし、仗助くん?」

「ごめんねななこさん、風呂入ってた。」

「ううん、私こそ遅くにごめんなさい…」

「珍しいね、ななこさんが遅いの。いつも10時前には寝てんじゃん。」

「…怖い夢見て起きたの…」

「…なにそれ、子供みたいっスね。」

クスリと笑う仗助くんの声を聞いて、安心する。子供染みた感情だと一蹴されて、もう大丈夫なんだと思った。

「…ありがと。」

「それは、俺が着いてから言うんじゃないんスか?」

「…え?」

いくらなんでもこんな夜中に来てもらうのは申し訳ない。慌てて断りの言葉を述べると、仗助くんは不満そうに声を上げた。

「俺が逢いたくなったんだけど、それはどーしてくれるんスかねぇ?」

その言葉を聞いて、心臓がどきりと跳ねた。

結局会いに来てもらうことになり、私は布団を出て彼を迎える準備をする。

仗助くんの家と私のアパートはそんなに離れていないので、支度を入れたって30分もあれば着くだろう。仗助くんがリーゼントを作るのにどれだけ時間を使うかわからないけど、っていうかリーゼントで来るのかもわからないけど。

『つきました』

程なくしてメールが届く。
深夜にチャイムは迷惑だろうという彼の優しさなんだろう。そういうところがとても好きだ。彼のさりげない優しさは私の胸を打つ。

「遅くにごめんね。」

そう言ってドアを開けて、目の前の姿に驚く。乾ききらない長い髪を無造作に一つに纏めただけの姿。

「…そんなに驚かなくてもいくないっスかぁー?」

照れたように笑う仗助くんに、無言で抱き着いた。

「うわ、もー!ドア閉めなきゃ虫入っちゃいますよ?」

宥めるように撫でながら身体を離されて、少し残念だなと思う。

「…来てくれて、ありがと。」

背を向けながらそう言えば、「俺が逢いたかったんス」なんて男前なセリフが耳を掠めた。

「髪、乾かしてもいい?風邪引いちゃうよ。」

ベッドに座らせて、ドライヤーと櫛を持ってくる。

「ななこさんがしてくれるんスか、やった。…お願いしまーす。」

嬉しそうに笑って髪を解く仗助くん。
恋人でなきゃ見られない姿にドキドキする。

「…熱かったら教えてね。」

櫛が引っかからないように気をつけながら、髪を乾かしていく。
目を閉じて為すがままになっている仗助くんがとても可愛くて、思わず首筋に顔を寄せた。

「…シャンプーの匂いがする。」

そっと息を吸えば、いつもと違う仗助くんの香り。整髪料がないせいか、普段よりも甘い。

「ちょ、くすぐったいっス…」

身を捩ると、髪がパラパラと舞う。
ふわりと広がる、シャンプーの香り。

「…大好き。」

ぎゅっと抱き着くと、視界がくるりと反転した。
天井と仗助くんしか見えなくなって、押し倒されたことに気付く。

「…ねぇそれ、誘ってんの?」

「…ちがっ…」

そんなつもりじゃなかったと開いた口が、仗助くんの分厚い唇で塞がれた。
少々乱暴に舌を差し込まれて、食べられちゃうんじゃないかと不安になる。

「っん…んー!!」

「正直、そんな無防備なカッコしてると思わなかったっス。」

唇を離して、溢れた唾液をべろりと一舐め。
完全に捕食者の目をした仗助くんに、捕まってしまった私。

薄手のパジャマはあっさりと脱がされて、肌が露わになる。寝る時はノーブラ派なので、パジャマの下にはもちろん遮るものなんてない。

「…グレート。」

そう一言零すと、むしゃぶりつくように胸に舌を這わせられた。

「…っや、ぁッ!そんな…やだっ…」

「やだ、じゃないでしょ?もうこんなにしてる癖に。」

主張する頂に軽く歯を立てられて身体がびくりと跳ねる。
普段の優しい仗助くんとは別人みたいで、強引な愛撫に無理矢理快感を引っ張り出されるようだった。

「…っは、…あぅ…」

「…なんか、そんな顔されるとイジメたくなっちまいますね。」

ちゅうっと音を立てて、肌が吸い上げられる。チリチリとした痛みに、思わず声を上げると、仗助くんは楽しそうに笑う。

「ひゃ、あんッ!…や、だッ…」

「だーから、やだじゃないでしょ?」

パジャマのズボンをするりと降ろされ、下着の上から撫でられる。
もう十分潤っているであろうそこを確認すると、仗助くんは意地悪く笑った。

「…もう濡れてんじゃん。」

「う…ぁ、…仗助、く…ん、」

下着の上から擦られて、もどかしさに腰が揺れる。気持ちいいけど、ぜんぜん足りない。

「…そんなに押し付けて、どーしたんスか?」

「…っ、おねが…い、」

身体の奥がじくじくと疼く。早く奥を擦り上げて欲しいと、浅ましくヒクつく入り口。

「何を『お願い』されてんのか、俺馬鹿だからわかんねーなぁ。」

「…いじわる、しないで…仗助くん…ッ」

「…ちゃんと言えよ。そのかわいー口から、聞かせて。」

耳元で囁かれる熱に浮かされるように、言葉が紡がれる。
熱いのは羞恥のせいか、それとも、快楽か。

「…じょーすけくんの、おっきーの、入れてッ…」

「…グレート。」

仗助くんは嬉しそうににんまりと笑って、キスしてくれた。
準備するから、と少しだけ身体が離れて、それから期待通りに押し入ってくる熱。身体が開かれていく感覚に、声が抑えられない。

「ぅあ、あっ、じょーすけ、くんッ、」

力を抜かなきゃいけないのに、無意識にきゅうっと締め付けてしまう。
奥まで辿り着いた所で、仗助くんは腰の動きを止めた。

「…今日は俺、すげー意地悪な気分なんだけど。…ねぇ、ななこ?」

突然呼び捨てにされて、腰がずくりと疼く。
呼ばれるだけてこんなに気持ち良くなれるなんて、仗助くんに逢うまで知らなかった。

「…な、ぁに、…じょーすけくん…」

快楽に溶けそうになる唇を必死で動かして、言葉を返す。
はやく揺さぶって、ぐちゃぐちゃにして欲しい。そう言ったら、望むとおりにしてくれるんだろうか。残った理性と快感への期待が鬩ぎ合う。

「…何して欲しいか、言ってみな。」

囁かれたその一言で、私の理性は決壊した。

「おくッ…いっぱい、突いてぇ…」

ぎゅっと抱き着いてそうねだれば、仗助くんは荒い息を吐いて少しだけ身体を離し、そのまま一気に私を貫いた。

「…ななこッ…ななこ…」

「…うあっ、あッ、あ、じょ、すけ、くッ…」

名前を呼びながらガンガンと突き入れられて、呼び返したいのに唇からはなんだかわからない言葉しか出てこない。

「…好き、だ…ななこッ…」

「んっあ、…あ、ああっ!」

ぎゅうっと抱き締められて、そのまま奥に吐精される。仗助くんが奥でびくびくと震えるのに合わせて、私の中も震えた。

「…は…ぁ、…スンマセン…だいじょーぶっスか…?」

くたりと私の上に覆い被さったまま、仗助くんが髪を撫でてくれる。さっきまでの意地悪な顔じゃなくて、いつもの、優しい仗助くん。

「…ん…へーき…」

なんだか恥ずかしくて、顔を見られないように肩口に顔を埋めた。
星型の痣の上に、そっと手を乗せる。

「…ね、ななこさん。もう、怖くない?」

「…あ、…忘れてたよ…」

そういえば、怖い夢を見て来てもらったんだっけと思う。

「…良かった。一緒に寝たら、きっといー夢っスよ。」

そう言っておでこにキスをして、仗助くんは眠る体制になる。明日は休みだし、この始末は起きてからなんだろうか。
少し湿っぽいシーツも、ベタベタする身体も、まぁいいやという気持ちになる。それくらい、仗助くんの腕の中は魅力的だった。

「…大好き。」

彼に倣って、そっと目を閉じる。
これから見るのはきっといい夢だと確信できるような、幸せな微睡みに身を任せた。


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm