!!attention!!
ASBネタ。
「俺専用救急箱」の続編。
これ単品でも、ASB知らなくても大丈夫です。
ASBL会場で救護班としてバイトしている夢主、という設定。
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「ねぇ仗助くん、私…気になる人ができたみたい…」
リーグの試合も見慣れてきた頃、ななこちゃんがポツリと零した。
「マジかぁ、それって誰のこと?」
俺だったらいいな、だって一番側にいるし…なんて甘い考えは、直後に脆くも打ち砕かれた。
「ホルホースさん。あれからずっと、あの人に口付けられた頬が気になって仕方ないの。…これって、初恋なのかな…」
桃色の頬を慈しむように撫でながら、ななこちゃんは可愛らしく笑う。
一番近くでその表情を見ているのは俺だというのに、彼女の瞳に俺は映っていない。
あぁ、その笑顔が好きだったのに。
なんで向けられるのが俺じゃないんだ。
そう歯噛みしながらも、まだ隣にいられるのは俺なんだと、余裕の笑顔を作って見せた。
「恋する乙女なんスねー。俺で良ければなんでも聞くぜ?」
「ありがとう!仗助くん、優しいね。」
向日葵みたいに笑うけど、さっきの笑顔には遠く及ばない。
*****
「よぉ、まーた負けちまったぜー。」
「…ホルホースさん!」
彼女の気持ちを知ってか知らずか、ヤツは試合の度にやってきた。もうワザと負けてるんじゃあねーかと思うほどだ。
「…ななこは今日も可愛いな。」
日本人でないせいか、歯の浮くようなことだって平気で言いやがる。
「…そんな…こと、ないです。」
俺で良ければ、なんていい人のフリをしてしまった手前、止めるわけにもいかなくて歯の浮くようなセリフにムカつきを募らせながら黙って見ているしかできない。
そんなフザけた野郎に嬉しそうな顔すんなよ。
「…赤くなって可愛いな。」
「からかわないでください…」
顔を真っ赤にして逃げるように席を立つななこちゃん。
そんな奴からはそのまま逃げちまえ、と心の中で毒付く。
席を立ったななこちゃんが、帰ってこない。
探しに行こうかと思ったけれど、そんな時に限って救護テントには引っ切り無しに怪我人が来て、俺はイライラを隠すこともせずに仕事をする。よくみんな普通に治ったと感心できるレベルだ。
「…仗助くん!」
「…おかえりー、遅かったっスね。」
ななこちゃんがパタパタと走って戻ってきた。上気した桃色の頬が可愛らしい。
「…ん、ごめんね。離れちゃって。…仗助くん、怪我したりしなかった?」
「…大丈夫っスよ。走ってきたの?ほっぺ紅い。」
「え、あ、ううん…あのね、」
ななこちゃんは俺の服をちょっと引っ張ると、その紅色の唇を耳元に寄せて、照れながら可愛らしく囁いた。
「実はね、…お食事に誘われちゃったの。」
俺の中で、何かプツリと音がした。
*****
「なぁ、今日はななこはいねーのかい。」
「…さぁ、見てないっスね。」
キョロキョロとななこを探しているらしい。
「…ふぅん。…具合でも悪いんかな…電話も出ねーんだよ。」
「…嫌われたんじゃないっスか?」
「…いや、それはねーな。俺は世界一女には優しい男なんだ。世界中にガールフレンドがいる。」
自信満々にきっぱりと言い放つ。いけすかねえ野郎だぜ。ななこちゃんだってその世界中のうちの一人なんだろ。
「その俺が本気なんだ、嫌われるわけないだろうが。食事に誘った時も、嬉しそうにしてたんだがなぁ。」
そうだ、アンタが食事になんか誘うから、彼女はこうなった。
全部アンタが悪いんスよ。
「…ま、なんかわかったら教えてくれや。」
俺の不躾な視線に気付くことなく、やけに真剣な瞳でそう言い放つと、ヤツは去っていった。
本気と聞いて、尚更会わせるわけにはいかないと思う。
*****
「…ただいまー。…いい子にしてた?」
「…っ仗助く…これ、取ってッ…」
「…おかえりなさい、だろ?…あー…逃げようとしたんすか?」
手首と足首をぐるっと、枷の形を写した痣が囲っている。きっとひどく暴れたのだろう、
滲んだ血が痛々しい。
逃げることなんてできないのに。
隣にしゃがみ込んで慈しむように撫でると、痣は綺麗に消えた。
ベッドに繋いでいた枷を外してやると、彼女は安心したように溜息を吐いた。
「…どうして、こんな…」
「…ななこちゃんが悪いんスよ?あんな奴のことが好きっていうから。」
安心させるように微笑みながら近付いたのに、彼女は怯えた瞳で後退った。
「…仗助くん、どうしちゃったの?」
「それは俺の台詞っスよ。」
俺がこーんなに好きなのに。なんであんな奴のところに行こうとすんの。
「…ね、私…お家に帰らなくちゃ…」
困った顔で立ち上がるななこちゃんの、足を、白くて綺麗な足を、力の限り、殴った。
「ーーーッ!」
骨の砕ける感触が拳に伝わってくる。
彼女は瞳を見開いて、悲鳴をあげている。
けれどきっと、なにが起こったかわからないんだろう。
「逃げちゃダメっスよ?」
にっこり笑って、視線を合わせる。
けれどななこちゃんの瞳は、どこも見つめていなかった。悲鳴できっと、俺の声が聞こえてないに違いない。
「…っうあ…じょ…すけ、くん…」
足をそっと撫でると、痛みが無くなったのか彼女は安心したように溜息を吐く。
ななこちゃんの瞳に俺だけが映っていて、なんだか満ち足りた気持ちになる。
けれどまだ足りない。その涙が邪魔だった。
もう泣かなくていいように、目玉を抉ってしまおうか。悲鳴があげられないように、喉を潰してしまおうか。
「死んじゃわなければ、なんでも治せるっスからね。」
そう笑えば、小さく喉の奥で悲鳴を殺して。
震える小さな身体を自分の手で掻き抱いて。
今、彼女は俺のことしか考えていない。
「お利口さんにしてたら、痛くしないから。」
怯えなくても大丈夫。
ちょっと、そう、ちこっとだけ、愛してくれたらそれでいいんすよ。
そっと抱き寄せて、口付ける。
ななこちゃんの震える身体から、服を剥ぎ取っていく。ボタンが飛んだって、クレイジーダイヤモンドで直せばいいだけの話。
「…やだ、やめて…仗助くん…」
囁くような抵抗を、視線で抑え込む。
しゃくりあげる声だけが響く部屋。
「泣かないで、ななこちゃん。…俺が、いるから…」
白い素肌に舌を這わせて、流れ出る涙を舐め取って。そのまま首筋、胸、と舌を這わせていく。
全部舐め取って、俺の一部にしてしまいたいな、なんて思う。
「っあ…ぁ、仗助くん…っ…」
「なんでそんな怖がるんスか。…もしかして、初めて…とか?…だったら、すげー嬉しいな、俺。」
我慢できない程可愛かったので、濡らしもせずに貫いた。
「やあぁぁっ、いたい、よ、ッ…や…!」
「終わったら、ちゃんと治すから、ちこっとだけッ…我慢し、て…っ…」
泣き叫んでしがみついて。
彼女の爪が背中に刺さる。がりりと、肌を何度も引っ掻く薄い爪。
ななこちゃんが付けてくれるなら、俺は痛くたって平気。
「っうあ、やッ…あ…」
苦痛に歪む顔も、額に浮かぶ汗も、目尻の涙も、唇から零れる唾液も。
全部ぜんぶ、俺のもの。
「大好きっスよ…」
*****
そうやって、犯して、治して、繰り返し繰り返し。
ななこちゃんはもう随分と可愛らしくなって、枷をつけなくても、首輪ひとつでお利口に留守番できるようになった。
「ねぇ、仗助くん。私、お外にはもう出られない?…お花が見たいな…」
可愛いななこちゃんは、小首を傾げてお願いする。残念だけど、聞けることと聞けないことがあるんスよ。
「ななこちゃんは、何の花が好き?…あそこの窓んとこに、飾ろっか。」
そう答えると、もう随分前から輝きを失ってしまった瞳を悲しげに伏せる。
外なんて、行かなくていいんスよ。この部屋だって、仗助くんが、不自由させないから。
「…チューリップ。きいろいのがいいな。」
チューリップくらい、いくらだって飾ってあげる。
黄色いチューリップの花言葉は、「望みのない恋」「報われぬ恋」。
ななこちゃんにも俺にも、なんてぴったりな花。
窓辺に一輪のチューリップ。
アイツの帽子と、おんなじ、色。
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bkm