仗助→夢主→康一くん、な片思い。
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今日もいつも通り。
太陽が眩しくて、空も青い。
いつもどおりの通学路。
大きな欠伸をしながら、玄関を出る。
髪型は決まったけれど、眠気のせいか頭がズキズキと少しだけ痛む。
爽やかなはずの朝日が、目に痛い。
「仗助くん、おはよー。」
「おはよーっス。」
おんなじように眠そうな顔で、ななこが合流する。眠そうな姿だって可愛いけど、俺が寝不足な原因はコイツだったりするからタチが悪い。
「眠そうだねー。」
「お互い様なー。」
顔を見合わせて笑う。
少しばかり寂しげに見えるのは俺の気のせいか、それとも俺もおんなじ顔をしているのか。
「あ、由花子たちだ。」
少し先を康一と一緒に歩いている。
仲睦まじい二人を見るななこの顔は、切なげに歪められていた。
「仲良いよなぁ、羨ましいぜぇー。」
少し意地悪だったろうかと思いつつも、そう言葉を零す。康一なんかやめて俺にしなよ。そしたらきっと、この睡眠不足の日々ともオサラバだ。
「ホント、羨ましいなぁ…。」
あぁ、彼女はどれだけ由花子になりたいことだろう。俺は康一にはなりたくないけど。
「いーい天気だなァ。なぁななこ、サボっちまわねー?」
「仗助はさー、モテるのに彼女作んないの?」
俺の誘いは爽やかな朝の風に飛ばされる。結構勇気出したのに、スルーかよ。
「モテるったって、振り向いて欲しい相手じゃなきゃあ嬉しくないんだぜ、わかんねーかなぁ。」
アンタならわかるはずっしょ。という言葉は喉の奥に飲み込んだ。
「その子、幸せモノだね。」
天然なのか知らぬフリなのか。
彼女は「じゅんあーい!」なんて呑気に笑っている。
「…気付いてもらえないっスけどね…。」
溜息交じりに見上げた空はとてもとても青くて、頬を撫でる風は暖かくて、太陽だってとても明るいのに。
どうして、こんなに眠いの。
「仗助にも恋の悩みなんてあるんだね、なんかちょっと安心した。」
そう言って笑うななこの意識は、相変わらず前を歩く康一たちに向いていて。
…あぁ、コイツは康一しか見えてなくてきっと俺のことなんて眼中にないんだな、と思ったらなんだか納得した。
「恋愛対象外っつーのは、けっこーシンドいよなぁ…」
多分、手の打ちようは沢山あるはずで、できることも沢山あるんだろうけど、元々出来のよくない寝不足のこの頭はちっとも働いてくれない。
「…そだね。」
寂しげに笑う。同じ悩みを分かち合えるのは幸せなことだけど、原因がななこだっていう所について、俺の方が幸せで俺の方が不幸だと思う。
「…なぁ、俺って魅力ないんかなぁ。」
そう呟いて、視線を下ろす。
色濃く落ちているはずの影が、なぜか薄れて見える。君の中の俺の影。
どうして、こんなに薄いの。
とりあえず今は、ゆっくり眠りたい。
彼女の笑顔がチラついて、叶わない毎日なのだけれど。
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bkm