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魅せて

ななこさんから言葉責めをリクエストされてSに目覚める露伴。エロ。




「縛ってみない?」

ななこが唐突に発した言葉の意味がわからず、ぼくはその単語を繰り返した。

「は?…しばッ…?」

特段何かあったわけではない。ただ何時ものようにななこがぼくの家に遊びに来て、食事をして各々風呂に入って。これから枕を共にしようか否かとでも問いたいような柔らかな時間に、彼女は突然言った。

「…冗談。」

驚くぼくを見て楽しそうに笑ったななこは、寝よっか、なんて普段通りに寝室へと向かった。心だけじゃあなく物理的にも、ぼくだけが一人取り残される。

「…なんであんなこと言ったんだよ。からかうにしちゃあタチが悪すぎるんじゃあないか?」

それとも、そういう趣味があるのかよ、とベッドで背を向ける彼女に近づけば、首筋を引かれて口付けられた。

「…リアリティは大切にしなきゃね?」

「…君にマゾヒストの気があるとは思わなかったよ。」

まぁ別に、やってみてもいいか、なんて思ってしまったのは、彼女の言う「リアリティ」に惹かれたせいかもしれない。

「…で、どうして欲しいって?」

唇の端を持ち上げながら問う。ヘブンズドアーで読んでしまえばそれまでの話だが、それではいささか趣がない。この酔狂な女の心の底を、その声で知りたいと思った。

「だから、縛ってみない?って。」

「…それは人にモノを頼む態度じゃあないよなぁ?」

ぼくの興味を唆ろうなんておかしいじゃあないか。君がして欲しいんだろ?きちんとお願いしてみなよ。そう言えば彼女は戸惑ったように瞳を揺らして、「べつに、…ッ、」なんて言っている。別に興味のない人間が、縛ってみない?なんて聞くのはどう考えたっておかしい。

「…ぼくとのセックスはつまらないか?」

「…そうじゃない、…けど、」

「けど、何だよ。」

言い澱むななこを促すと、彼女はぼくの瞳をちらりと見て逃げられないと思ったのか、視線を逸らしながら小声で答えた。

「…露伴は普段周りに冷たいけど、私には優しいから…無理して優しくしてくれてるのかなって…」

無理して優しくしてるだなんて心外だ。ぼくはぼくの好きなようにしているだけなのに、ななこには伝わっていないのかと、なんだか腹が立った。けれどそれでどうして縛る話になるのかは全く理解できない。

「へぇ、またそうやってぼくのせいにするのか。…本当は君がやってみたいだけだったんだろ?…ちゃんとそう言ってみろよ。」

嘘ついたって、読めばわかるんだからな?と言えば、彼女は俯いてぽつりと「…雑誌で読んで…ドキドキしたから…」と呟いた。羞恥に耳元まで赤くする姿は、ぼくが組み敷く時よりもずっと色っぽかった。

「君にそんな趣味があったなんて知らなかったなァ」

わざとらしく大声を出せば、恥ずかしげに身体を縮こまらせた。勢い良く手首を掴んで仰向けに押し倒す。間近に迫ったななこの頬は紅潮し、呼吸は既に浅かった。

「…ッ、ろはん…」

「ぼくはまだなーんにもしちゃいないのに、一人で興奮してるのか。」

そんな趣味だったなんて知らなかったよ、と耳元で囁く。正直、こんなななこは見たことがなかった。ぼくの言葉に翻弄される様は、なんというか、見ていて興奮する。ぼくにもサディストの気があるのだろうか。
捕まえた手首を纏めて、外したベルトでベッドと一緒にぐるぐる巻きにした。加減がわからないのでこれでいいものかと彼女の様子を伺うと、蕩けた瞳がぼくをぼんやりと見つめている。

「さて、縛ってやったぜ。」

彼女の隣に腰掛ける。身動きが取れない彼女は、不安げに瞳だけをこちらに向けた。

「…露伴。」

「なんだよ。まだ他にして欲しいことがあるのか?」

あるなら言えよ。ないならぼくは原稿でも書こうかなァ。
齧り付きたい欲望を押さえ込んで、興味ありませんといった体で視線を向ける。ななこは困ったように眉を寄せ、唇をぱくぱくさせている。身動きできずにベッドでのたうつ様は打ち上げられた魚みたいだ。

「…ろはん、…触って…」

ようやっとそれだけ告げると、ななこは恥ずかしげにぼくから視線を逸らした。言われた通り、服の上から身体を撫でると、彼女は大袈裟なほどに身体を震わせた。

「…こんなのが気持ちいいのか?」

「…服の…上からじゃ…やだ…」

じゃあどうすればいいんだよ、ちゃんと具体的に教えてくれないとわからないぜ?
そんな言葉が自然と唇を割いた。まぁ言われなくたってななこのして欲しいこととぼくがしたいことは同じだろうが、これはただ興奮するための儀式みたいなもんだ。

「…お洋服、脱がせて…。ろはん、お願い…」

「…お願いされちゃあ、仕方ないな」

普段は対等な口を聞く女が、浅ましくねだる姿を見るのは正直気分がいい。期待の篭った視線を浴びながら、ゆっくりと衣服を剥ぐ。
しっとりとした肌に触れると期待に満ちた吐息が漏れた。君ばっかりやけに楽しげだなァ、なんて言葉を掛ければ、それだけで身を捩る。やけに煽情的な仕草に笑みをこぼしながら、彼女の体を探っていく。薄い皮膚を撫でれば、その下の血の流れまで指先に伝わってきそうだと思った。

「…ッあ、ぅ…ろはん…」

「なんだよ、君のいう通り触ってるだろう?」

焦れたような声に意地悪く返せば、お願い、なんて小さな懇願が漏れた。望まれた通り彼女の中に指を沈めれば、そこは既にぼくを受け入れられるほどに潤んでいた。
ゆっくりと掻き回すとそれじゃ足りないとでも言いたげに腰が揺れ、ねだるような潤んだ瞳がぼくを映す。

「君はさァ、焦らされるのが好きなのか?ななこ。」

して欲しいことがあるなら早く言いなよ、と促したけれど、ななこはそんなの言えないと言わんばかりにイヤイヤと首を振った。汗ばんだ額に張り付いた髪がやけに艶めかしい。

「…ッは、…ぅ、んっ…」

「早く言わないと辛いのは君じゃあないのか?」

色付いた頬をさらに真っ赤にして、ななこはぼくを求めた。言葉で求められるのも、彼女がぼくの意のままに動くことも、実に気分がいい。探っていた指先を抜き取ると、彼女の痴態だけで痛いほど張り詰めた自分自身をななこの秘部に勢い良く突き立てた。

「ッあ、あぁっ!…ろ、はンッ…!」

「…涎が垂れてるぜ。そんなに欲しかったのかよ…ッ」

きゅうきゅうと締め付ける内部を味わうように納め切った状態で動きを止めると、焦れたななこが腰を揺らした。彼女はぼくを逃がさないとでもいった風に脚を絡ませ、力を込める。

「…ぅんっ、ろは…ぁん、もっと、激しくして…」

早く、と腰を揺すられて、ぼくの余裕も何処へやら。君のせいだからな、なんて言葉を唇に乗せて、本能の赴くままに彼女を犯した。

「やっ、あっ、ろは、んっ、ぁ、きもちい、」

「…ッ、ななこ…君って、奴は…っ…」

続く言葉を口付けに隠せば、拙いながらも舌が絡められる。このまま彼女の中心までぼくでいっぱいにしてしまいたい、なんておおよそ似合わないことを考えながら、ななこの中に精を放った。

*****

「…ろはんっ、ね、コレ、もう解いてよ…」

情事の余韻に身体を浸してしばらくすると、落ち着いたのか普段通りの調子でななこが言う。恥ずかしいのだろうか、いつもより少しばかり語気が強い。

「…なんだよななこ、もうお終いにするのか?」

意地悪く笑ってみせれば彼女は「いいから早く!」と声を荒げた。すこしばかり掠れているのが恥ずかしいのか咳払いなんかしている。

「…君は自分の立場が分かってないみたいだなァ?」

このまま放っといてやったっていいんだぜ、と彼女の顎を持ち上げれば、怯えにも似た瞳の奥に、さっきまでの炎が燻っているのがちらりと見えた。その瞳に、ぼくの方がハマってしまいそうだ、なんて思いながら、ぼくはゆっくりと唇を開いた。

「…さぁななこ、なんて言えばいいんだっけ?」




20161020


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm