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雨の日

ツンデレな年上露伴先生との相合傘




雨だ。雨。体育が室内になってラッキーだなぁとか、そんなことを呑気に思っていた。
だって天気予報は晴れだったから。

それがこんな、帰る時間になっても止まないどころが空は雷まで鳴り出す始末。
ロッカーに折り畳み傘を持っていなかったかしらと探してみたけれど、そんな希望はすぐに打ち砕かれ、これはもう迎えを呼ぶしかないのでは…と、ポケットから携帯を取り出す。きっと、この雨以上に文句を浴びせられるんだろうと覚悟をしながら、恋人である漫画家に電話を掛けた。

「…あ、もしもし。露伴先生?」

「…なんだ、…あぁ、大方傘を持ってないとかそういった話か?」

その通りです、と、続くであろうお小言に小さくなりながら答えると、電話の相手は私の想像とは違う答えを返した。

「…少し待たせてもいいなら迎えに行ってやる。…待てるか?」

「…待ちますとも!」

傘を持ってない君が悪いんだから待つのは当然だけどな。と不遜な台詞を残して電話は切れた。
今日は機嫌がいいのかな、原稿が終わった日だっけか、などと、いつも難しい顔をしている恋人を思い浮かべる。口を開けば文句を言うくせに、なんだかんだ世話を焼いてくれるのは、露伴先生が年上だからなんだろうか。迎えが来るとわかれば、雨なんてへっちゃらだ。私は呑気に鼻歌なんて歌いながら、先生が来るのを待つ。

*****

ポケットの中の携帯がメロディーを奏で始め(もちろん先生用の着信音だ)、私は慌てて携帯を開く。

「…もしもし?」

「…今校門前だ。正面玄関に行けばいいか?」

「…うん、お願いします!」

鞄を捕まえて、正面玄関へ向かう。この悪天候に足取りが軽いのは、先生が待っててくれるからに違いない、なんて頬を緩ませながら。

「…ろはんせんせー!ありがと!」

私がいそいそと靴を履き替える間も、彼は珍しそうに校内をキョロキョロと見回していた。

「…へぇ、君の高校ってのはこんな風なのか。」

スケッチブックを持って来れば良かったな、なんて言うから「雨でびしょ濡れになりますよ」と返してやった。

「…誰の為に濡れてると思ってるんだ君は。」

言われて先生を見れば、肩口やら足元がびしょ濡れになっていた。拘りの服をこんなに汚す先生なんて見たことがない。

「…え、なんでそんなに濡れてるんですか…?」

「…雨のせいだよ。…それとこんな日にぼくを呼び出す君のな。」

溜息と共に嫌味を吐かれる。雨が降っていてぼくが濡れないなんて君はぼくをなんだと思ってるんだ、なんて不機嫌そうな言葉が延々と続く。

「…え、だって先生、…」

「…冷えるから、さっさと帰るぜ。」

露伴先生はそう言うとさっさと玄関を出て、傘を開いた。彼の手を見る限り、どうやら私の分はないらしい。私が戸惑っていると「置いていってもいいのか?」なんて背を向けるから、慌てて先生の傘に潜り込む。

「…私の傘は?」

「ハァ!?ぼくが君の傘なんて持ってるわけないだろ?」

はぁ、ごもっともです…、まぁ車までだし、先生の傘は大きいからくっついてれば濡れないし…と私は露伴先生の歩調に合わせてぴったりとくっついて歩く。校門を抜けても、露伴先生の車は見当たらないし、彼が足を止める気配もない。

「…せんせ、今日…車じゃあないの?」

「ぼくが車じゃなきゃあいけない理由でもあるのかよ。」

そう吐き捨てられて、返す言葉もない。…それであんなに濡れてたのか、と合点がいく。どうしてわざわざ歩いてきたのか知りたくて先生の顔を覗き見たけれど、彼は普段と変わらぬ様子で、こちらなんて見もせずまっすぐ正面を向いていた。

「…相合傘のリアリティが欲しかったんですか?」

「…君と相合傘がしたかっただけさ。」

雨音で掻き消されそうなほど小さな声を耳に拾ってしまった私は、聞かなかったふりをするかどうかについて暫し考えて、露伴先生と同じようにぽつりと零した。

「……それ、すごく嬉しいです…」

私の言葉が聞こえていたかはわからないけれど、先生が傘を持つ手を少し取り替えて私と腕を組んだから、多分聞こえていたんだと思う。


20160704


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm