「せんせーの童貞。」
「はあ!?ななこだって処女じゃあないか。」
「私は大切にしてるんです!せんせーと違ってヤラハタじゃないもん!」
「…なんだと…!?あーもうプッツンきたね!帰れよ!」
小娘に散々馬鹿にされてムカついたぼくは、だったら経験してやろうじゃないかといわゆる「そーいう店」に行ったのだった。
折角の経験だったので、しっかりスケッチさせてもらったし、なんならやり方も教えてもらってきた。これでもう馬鹿になんてさせない。
*****
「露伴先生の童貞!」
「ふん、残念ながらその悪口はもうおしまいだぜ。」
腕組みをしてななこを見下ろして笑う。
残念ながらぼくはもう童貞じゃあない。
「え…?」
「だーかーら、セックスしたって言ってるんだよ。」
ななこの動きが止まる。
驚いたように目を見開いて、ぽつりと一言。
「…え、それ…ふーぞくってやつ?」
「まぁそうだ。でももう童貞じゃあないからな!」
ふふん、と笑って見せればななこはなぜだか顔を青くして、みるみる瞳に涙を溜めて。
「…せんせーの素人童貞ッ!!!」
あろうことか、手酷い言葉でぼくを罵倒して、そのまま泣き出した。
「ハッ、なんで泣くんだよ。散々ぼくのこと馬鹿にしたくせに!馬鹿にできなくなったのがそんなに悔しいってのか!?」
突然見せられた涙に心がざわついて仕方ない。一体なんだっていうんだコイツは。
「せんせーのばか!そんなの!好きだからに!決まってるじゃないですかぁ…」
うわあぁぁん!と子供みたいに泣くななこ。いやまてよ、みたいじゃあなくて子供なのか。
「…そんなわかりにくい話、ぼくに伝わるわけないだろ…」
溜息を吐きながらそっと髪を撫でてやれば、小さな手がきゅうとぼくの服を握る。
なんだか調子が狂ってしまう。コイツはこんなに可愛かったか?
胸はないし色気だって昨日相手してくれた娘に比べたら月とすっぽんだ。
なのに、それなのに、コイツの方が遥かに可愛く見えるなんて。ぼくはロリコンの気でもあったんだろうか。
「…悪かったよ。」
そう言って、涙に濡れるその唇に、そっと自分の唇を合わせる。触れたななこの唇は柔らかくて、離したくなくなる。
合わせるだけの口付けは、思いの外長く続いた。
「…せんせー…」
「…なんだよ。初めてなんだから、文句言われても困るぜ。」
ぎゅっと抱き締めると、私も初めてです、とななこは嬉しそうに笑った。
*****
よもや教わったことをこんなに早く試すことになるとは。
「…ぅ、せんせ…はずかし…」
「いいから黙ってろよ。」
押し倒した身体は薄くて、折れてしまいそうで。昨日教わった通りにそっと手を滑らせると、大袈裟にびくびくと跳ねた。
「…っ、せんせ、くすぐったい…」
「痛くなきゃあ大丈夫だ。…痛かったら言えよ。」
教わった通りに、とはいかないものの、元々手先が器用なぼくはそこそこ上手にななこを喘がせることができたと思う。
「っあ、せんせ…そこっ、…きもちい…」
「ここか?…こう?」
「っあぁん、っそれ…ぁッ、」
くちゅくちゅと音が聞こえるくらいに濡れて、そろそろ大丈夫なんじゃないかと指を引き抜く。
ななこは少し不安そうにぼくを見つめて、吐息をひとつ。
「…後悔しても知らないからな?」
「…いいですよ。」
ゆっくりと腰を進める。濡れているはずなのになかなか挿入っていかなくて、気持ちばかりが焦ってしまう。ぼくだって、経験なんてもんはないに等しい。
「ッ…力、抜けよ…」
「…そ、んなことッ…言われても…」
ぎゅうっと抱き締めて、半ば無理矢理に身体を繋ぐ。
ななこはかなりキツそうだったけれど、ぼくだってしんどい。
「入った、ぜ…。大丈夫か…?」
「…ちょっ、と、…このまま…」
奥まで入れたまま、しばらく抱き合う。
本当はこのままガンガンと突き上げてしまいたいけれど、ななこが待てというので、大人しく待ってやる。
「…ななこ。」
唇を重ねる。彼女の唇は少し薄いけれど、見た目に反してすごく柔らかい。
「…っ露伴…せんせぇ…」
呼び声に誘われるように、唇の隙間から舌を差し入れる。多分、ぼくより彼女の方が柔らかいはず。確かめるように、舌を絡ませた。
「…っん…ぅ…」
キスを続けるうちに彼女の身体から力が抜けていく。
そろそろ動いてもいいだろうと腰を引くと、面白いように身体が跳ねた。
「ひぁ、んッ、やあっ、あっ」
普段の彼女からは想像も付かない声に、抑えが効かなくなる。
欲望のままに何度も腰を打ち付ければ、その度に面白いほど上がる声。
「…ななこ、っ…」
ぎゅっと抱き締めて、最奥に欲望を放つ。
ななこはびくびくと震えるぼくを愛おしげに抱き締めた。
*****
「せんせー、これで私のこと処女って馬鹿にできなくなりましたね!」
「フン…その台詞、そっくり返すぜ。」
終わってみればいつも通りに軽口を叩くななこがいて。あんなに可愛く啼いていたのが嘘みたいだなと思う。だから女は怖いなんて言うのかと、勝手に納得する。
「…せんせ、あのさぁ…」
とん、と控え目に肩を叩かれて、ななこに向き直る。目の前には恥ずかしげに頬を染めた彼女。
「ん?…どうしたんだよ。」
「…わたし、先生の気持ち…聞いてないです…」
ぼくの、気持ちだって!?
決して遊びで抱いたわけじゃあない。けれど、改めて言えといわれてはいどうぞと口に出来るほど、ぼくは恥を知らないわけではない。
「…気持ち、ってのは…」
「私はッ、ちゃんと好きっていいました!」
せんせーは、私のこと、好きじゃないの…なんて泣きそうな顔をされては、どんなに恥ずかしかろうが言うしかないじゃあないか。
「…あぁわかったよ!言えばいいんだろ!…ッその…す、…」
顔が熱い。たった二文字が。
コイツにだって言える簡単な言葉なのに。
「せんせ。」
そんな期待した目で見るなよ。
視線から逃げたくて、勢い良く抱き寄せた。
「……好き、だ。」
これで満足か、ななこ。
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bkm