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2次元は僕を傷付けないって嘘だろ

「露伴先生、私は『2次元は僕を傷付けない』って言った奴をグーで殴りたいです…」

読んでいた単行本をぱたりと閉じてそう呟くと、露伴先生はまた馬鹿なことを…みたいな顔をして、それでも一応言葉を返してくれた。

「どうした急に。」

「今私は2次元に傷つけられました!人気漫画家の先生だって、そのうち誰かを傷つけるんですよぉ…」

ああもう凹んだ。マジ凹んだ。
いやこれはどう見ても八つ当たりなんだけど、先生はすごく食いついてきた。

「それは聞き捨てならないなななこ。説明してもらおうか。」

さっきまでゴミを見る目だったのに、俄然ギラギラしてますね先生。

「…いや待てよ、君のことだから『斎藤氏が結婚してたのー!』とかか?
新撰組ネタなら史実だから諦めるんだな。」

手に持っていた本から、そこまで思い到るとは、大分私がわかってますね先生…
だけどそうじゃないんですよ!
ぱたんと勢いよく本を置き、露伴先生に向き直る。

「いいえ先生、作中の恋愛模様に傷ついたりするのは子供のすること。…事態はもっと深刻なんですよ…。」

言ってて悲しくなってきた。眉の下がった私の顔を見て、先生がひるむ。

「…珍しいじゃあないか、そんなブサイク顔、初めて見たぜ?」

そっと近づいて、髪を優しく撫でてくれる露伴先生。心配そうな瞳が色っぽい。
慰めの言葉にはほど遠いけれど、その分態度が甘くて恥ずかしい。

「…主人公の年齢が、笑えなくなってきまし…た…」

大問題です。
最初に読んだときは、みんな結構年上だったのに。あんなにカッコ良かったのに!
今リバイバルに乗って読み直したら…なんかみんな年下に…!

「そりゃあみんな追い抜いて行くだろうよ。いずれ主人公だって追い抜くさ。」

当たり前のことですけど、そうなんですけど!
でも、青春が遠くなったみたいで悲しい。
放課後の教室で熱く語った私のオタクライフが遠い…。

「だって先生…私、中身はなんにも変わってないのに…」

成長してないよ。あのころのままだよ。
なのにお肌の曲がり角は容赦なくやってくるよ…

「…だったら、そんなのやめちまえよ。」

先生は盛大に溜息をついて、私の隣に腰掛けた。
神妙な面持ちでこちらを見つめるので、居住まいを正してみる。

「やめちまえはひどくないですか。」

「僕にしろってこと。…くそっ、こんなことまで言わせるなよ…」

顔が赤いな…なんて見つめていると、恥ずかしいのか抱き締められた。
抱き締める方が余程恥ずかしいと思うんですが…

「…先生…、じゃあ先生のマンガのキャラをリアルタイムで成長させてください…」

恥ずかしいのでそう答えて、ぎゅっと抱きつく。先生は、私と一緒に老いてくれますか。

「…僕だけじゃ不満なのか?」

私の返答が気に入らなかったらしく、座っていたソファに押し倒された。
馬乗りになる露伴先生の笑顔が怖い。

「…めめめ、めっそうもございません!」

「…心配しなくても、満足させてやるから。」

すごく色っぽく笑うので思わず逃げようとしたけれど、露伴先生に押さえ込まれてそれも叶わず。

「…プロポーズみたいですね…」

悔しまぎれにそう言うと、先生は君も大概バカだな、とキスしてくれた。


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm