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ツンデレにデレは必要か

「ツンデレにデレはいらないと思うんです。」

「露伴先生はツンデレですよね。」

そう言われる度に、自分の方向性を狭められているような気がする。

可愛い可愛い彼女であるななこに嫌われたくないとか、どこの中学生なんだぼくは。

「フン、ぼくをツンデレ呼ばわりするとはいい度胸だなぁ、ななこ。」

「先生、その冷たい瞳がたまんないです…。」

いささか変態じみている気がするが、頬を上気させて見つめる表情が可愛いので良しとする。

「…ぼくの顔を見ている暇があるなら宿題でもしたらどうだ?」

「はぁい。…先生はツレないなぁ…」

言葉とは裏腹に、ななこはすごく幸せそうに笑っている。
君が望むなら、いくらだって優しくしてやるのに。この岸辺露伴がそんなことしようと思うのなんて、世界中で君だけなのに。

「せんせ、宿題終わったー!」

「そんな報告してどうするんだ。終わったんなら帰れよ。もうすぐ暗くなるぜ。」

「はぁい。またね、せんせー!」

ニコニコしながら手を振って、ななこは帰っていく。
何しに来たんだあいつは。…まぁ宿題をさせたのも、帰らせたのも僕だが…、それにしたってあっさり帰りすぎだろう。

盛大な溜息をつき、台所へと向かう。
冷蔵庫を開けたが特段食事になりそうな材料はなかった。買い物に行くのも面倒なので、チーズとワインで済ませることにした。
戸棚にクラッカーもあった気がして、ガサガサと探す。こんな日は飲まなきゃやってられない。

なぜななこは冷たくされて嬉しいのか、ぼくには理解できない。ツンデレとはなんなのか。
望んでいるような辛辣な台詞が吐きたいわけではないが、生来の口の悪さも相俟って、普段どおりがそうなってしまうというだけなのに。

愚痴をこぼしながらワインを煽るように飲む。空腹に飲んだせいか、酔いが回るのが早い気がする。
あぁ、ここに彼女がいたら抱き締めて眠るのになぁ…なんて回らない頭で考えていた。

「…せんせ…?」

「…ななこ、こっちに来いよ。」

彼女はきっと、なんの疑問も持たず僕の隣に座るだろう。そうしたらぼくは、、、

「せんせ、どうしたの?…あ、酔ってる?」

「…なぁななこ、ぼくのそばにいろよ…。朝まで、いや、ずーっと…」

切なげな声は本当にぼくのものなのか。これは夢で、ぼくの願望。
縋るように見つめて、そっと頬に触れる。
絞り出すように吐いた言葉を、彼女の唇の中に落とした。

「…すきだ…」

抱き締めて口付けた彼女の唇からは、驚きと戸惑いが伝わってきた。心なしか震えているような気がする。

「せんせえええぇぇ!!!」

直後、ガバッと勢いよく抱き返されて急に現実に引き戻される。夢、のはずじゃあないのか…?

「せんせ!最高…ッ!ヤバいマジヤバい!」

ぎゅうぎゅう抱き締められて、腕の中でもがく。おいなんだコイツ、本物か。

「ちょ、…なんでッ、君がここにいるんだ!」

「宿題忘れたんで取りに来ました。連絡したから鍵開けてくれたんだと思って来たら!せんせえが!!!」

腕から抜け出して彼女を見れば、顔を真っ赤にして大興奮している。
ついにデレが!とか初めて見た!とか叫んでいて正直うるさい。

「…君にはムードってもんがないのか。」

「いや、あんな先生見たら我慢できませんって。」

よだれがでちゃう…、なんて言いながらななこは皿に残ったチーズを摘んだ。
落ち着くためなのか、パクッと口に放り込み、もぐもぐと咀嚼する。食ってる時は静かだな君は。

飲み込んだ君は、噛みしめるようにしみじみと言った。

「…ツンデレにデレは必要なんですね…」

「…ッ、知るか!」

とりあえず夜道の一人歩きは危険だとか勝手に家に入るなとか説教したいが、果たして今のこいつに日本語が通じるのか。

誰かコイツをなんとかしてくれ。


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm