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真っ赤なリップと欲情

おめかしした夢主ちゃんに欲情してエロに発展しちゃう院




真っ赤なネイル、真っ赤なピンヒール、真っ赤なリボン。赤って色はどうして人目をこんなに惹くのだろう。街を歩く私の目には、鮮やかな赤がやけに気になる。

「それはさぁ、憧れてんじゃあないの。」

「…憧れ?」

一緒に歩く友人が笑う。だってななこ、地味じゃあない?なんて。
言われてみれば確かに、派手な色とは無縁だ。視線を下げてみても、胸元から爪先まですべて暗色だった。買い物で街に出るからと、今日は精一杯のおしゃれをしたつもりなのに。
鮮やかな原色とか派手な柄とか、気になるけれど勇気がない。たとえば大好きな恋人みたいに個性的な髪型にするとか、そういうことすら今ひとつ思い切れない。

「…アレくらいならいいんじゃあない?」

友人が指差したのは、建物の壁に大きく貼られた化粧品の広告。真っ赤なルージュを引いた唇が、何か言いたげに薄く開かれている。

「…うーん、」

「リップならすぐ落とせるし、…ななこもたまには挑戦してみたらいいよ」

そうと決まれば行こう!と半ば押し切られるようにして、私は真っ赤なリップを手にいれた。

*****

翌日から、それは私の制服のポケットにいる。時折取り出しては眺め、諦めてまたポケットにしまう。手に入れたのにつける勇気がない私は、地味と嘲笑われても仕方ない。いや友人は嘲笑ったりしていないけど、どうしても勇気が出なくて塗れなかった。思い切れない自分に、思考回路まで暗くなる。

「この間買ったやつ、つけないの?」

ぼーっとする私に、友人が声を掛ける。勇気が出なくって、と返せば彼女は呆れたように笑って「貸して」と手を出した。

「どーせ花京院くんとデートしながら帰るんでしょ。オシャレしなさいよ!」

塗ったげるから!と言われるままに大人しく目を閉じる。ほんのりと冷たい感触が唇を撫で、「はい、…似合うじゃない」の言葉で再び瞼を持ち上げた。

「…ありがとう」

「いいから行きなよ。…また明日ね!」

花京院くんによろしく、なんてからかいの言葉を背に、私は教室を出た。

*****

「花京院くん!」

昇降口で待つ彼に声を掛けると、花京院くんは手元の本に落としていた視線をこちらに向けた。そうして少し驚いた顔をして、いそいそと本をカバンにしまう。

「…お待たせ」
「いや、僕も今来たところさ」

花京院くんはいつもそう言う。本が手元にあった時点で、嘘だってすぐわかるのに。
視線を感じて花京院くんを見れば、彼は慌てたように視線を逸らした。

「…どうしたの?」

「…なんでもないよ。…帰ろうか」

やけにぎこちない雰囲気で、彼は歩き出す。いつもとは違う花京院くんの様子に疑問を浮かべながら、彼の背を追った。
いつもより足早に、花京院くんは歩いていく。「まって、追いつけないよ」と呼吸を早くしながら言ってやっと、彼は歩みを止めてくれた。けれどその視線は、行き場なくあちこちを彷徨っている。

「今日は、どうしたの?」

心配そうに覗き込むと、目を逸らされた。心配してるのにそれはないだろう、となんだか腹が立つ。「花京院くん」と呼んだ声は私が思うよりずっと不機嫌そうだった。

「…なんでもないんだッ」

「なんでもないわけない…」

なんでもないはずがない。いつもの花京院くんと全然違うじゃあないか。ああもうなんだか泣いてしまいそうだ。悲しくて瞳を伏せると、不意に腕を引かれた。

「…あー…もう、違うんだ」

「何が違…ッん…!?」

私の言葉は花京院くんの唇に飲み込まれる。状況がわからない。口付けは、いつもと違う香りがした。

「んっ、ぅ……」

「っは、…あぁ、ななこ…」

花京院くんは艶のある溜息を零しながらぎゅうぎゅうと私を抱き締める。

「ちょ、待っ…花京院くんっ!」

苦しいよ、落ち着いて、と声を荒げると、彼は濡れた瞳を私に向け、「だって、君がそんなに色っぽいのがいけないんだろう?」と吐息をついた。色っぽいと言われても、思い当たる節はない。

「なっ、そんなこと、急に…」

「…急に、は僕の方だよ。」

花京院くんは指先で私の唇をなぞった。この唇はどうしたんだい、と言われて、そういえば友人が塗ってくれたなと思い出す。でも、そんなことくらいで。

「…だからって、なんで…ッん、んんっ…」

また唇を塞がれる。ここは天下の往来だ。必死の抵抗を試みたけれど、無理矢理に舌を引きずり出され絡め取られてしまっては、それもままならない。赤いリップの甘い香りと不思議な味が薄れた頃ようやく離されたけれど、花京院くんにしがみついて立つのがやっとだった。

「…か、きょー…いん、くん…」

途切れ途切れに名前を呼べば、彼は切羽詰まった声で「ねぇ、…続き」なんて私の耳元に言葉を落とした。

「つ、づきって…」

キスの続き、を知らないわけじゃあないけれど、言われてさぁどうぞと言えるほど慣れてるわけもなくて、私は真っ赤になって俯くことしかできない。花京院くんは私の手を強く引き、強引に歩き出す。引き摺られるように家の中に引っ張り込まれ、玄関先でまた口付けられる。

「…ッ!かきょ、いん…くんッ!」

花京院くんの家なんだろうか、とかおうちの人は、とか色々言いたいことはあったのだけれど、何一つ言葉にできない。

「…大丈夫、誰もいないから…」

「やっ、やだ…ぁッ!」

誰もいない、と言われてもこんな他所様の玄関先であられもない姿を晒すわけにはいかない。力のうまく入らない手で花京院くんを必死に押し返せば、彼は「やだじゃあないだろ?」と私の内腿を撫でた。そのままゆっくりと指先が私の内部に侵入してくる。びくりと身体が跳ねるのを見て、花京院くんは満足気に笑う。

「…可愛い、ななこ。」

首筋に舌を這わされて、指先で敏感な部分を撫で回されて、こんな、ドア一枚向こうに誰がいるかもわからない状況で、声なんて上げたくないのに。

「…っあ、は…ぁッ、や、ぁ…」

花京院くんは我慢できないのかさっきから私のお尻にぐりぐりと腰を押し付けている。普段の涼しい顔からは考えられないような吐息を零しながら、彼は夢中で私の身体を探った。

「も、ゴメン…」

「やっ、花京院くんッあ、だめッ、」

いつの間にファスナーを下ろしたのだろう、彼の猛り立ったモノが私の足の間に押し付けられた。いくらなんでもこれはマズい。私はやだ、まって、とかぶりを振る。

「…あ、…そうか…ごめん、少し待ってね…」

花京院くんは私から僅かばかり身体を離し、片手で器用にカバンを探った。見慣れた正方形が取り出されるのを、視界の端っこで捉えた。

「…ッ、」

待って、と言ったのは私のはずなのに、いざ待たされるとどうにも苦しい。恥ずかしいやら間が持たないやらで、私は花京院くんにしがみ付いた。

「…は、ァッ…ななこ…」

花京院くんは私をぎゅうっと抱きしめると、そのまま一気に貫く。悲鳴みたいな声が唇を割いて、慌てて唇を噛んだ。

「ぅあ、ッ、ん、やッあ、苦し、」

揺さぶられるのに合わせて言葉が途切れる。花京院くんに穿たれる度に、ここが花京院くんの家だとか、玄関先だとか、そういうことがどんどんどうでもよくなってしまう。

「っく、ななこッ、ななこ…」

ぐちゃぐちゃに掻き回されて、膝が震える。必死でしがみ付くと、花京院くんの吐息が鼓膜を揺らした。

「…ひ、ッあ、やっ、ああっ!」

「あ、…ッく、ぅっ!!」

一際深く穿たれて、そのまま花京院くんはびくびくと腰を震わせた。呼応するみたいに花京院くんを締め付けてしまって恥ずかしい。

「…う、ぁ…ひ、どいよ花京院くん…」

乱れた呼吸の合間にそう告げれば、一度達して落ち着いたらしい花京院くんは、申し訳無さそうに眉を寄せた。

「…ごめん…だって、あんまりななこが可愛いから…」

その口紅、が…なんていうかその…色っぽくて…なんて、恥ずかしそうに瞳を伏せる。その口紅、なんて言っているけど、あれだけキスしたら落ちちゃっただろうな、なんてぼんやりと考えた。

「…リップくらいで…」

「…それはぼくも思うんだけど…なんか…たまんなくなっちゃって…」

乱暴にしてごめん、と彼は私の身体を抱き、乱れた服を直してくれた。ここが花京院くんのおうちの玄関だと改めて気付き、なんだかとても恥ずかしい。

「…初めてお邪魔したのにこんな…恥ずかしすぎるよ…」

「あ、せ、折角だから上がっていくかい?」

一緒にゲームする?なんてズボンの前を緩めた間抜けな格好で言うもんだから、私は思わず吹き出してしまう。
花京院くんは恥ずかしそうに笑って、「もうなんにもしないから」と、私の手を引いた。



20170210



「…なんにもしないって言ったのに!」

「だって君がまた口紅なんて塗るから!」

えっちのお誘い専用になってしまったリップが私の化粧ポーチの奥深くに隠されることになったのは、また別の話。


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm