花京院くんの部屋で、一夜を過ごすことになってしまった。
事の発端は、数時間前。いつもの通りゲームをしていたら、突然の雷。無慈悲にもゲーム画面は真っ暗になり、それどころか家中の電気が消えた。慌てて窓の外を見れば、そこいらの信号まで消えている始末。
驚いている間に大粒の雨が降り出し、見る間に辺りは雨と飛沫で見えないほどになり、止むのを待っていたらとっぷりと日が暮れてしまって今に至る。
花京院くんのご両親は今日帰ってこないだとかで、電気の回復を待って家に電話をして(もちろん嘘をついた)、お泊りになった。まだ雨は止む気配もなく、雷もぴかぴかと煩い。
「…また停電しないうちに、お風呂行ってきたらどうかな。」
花京院くんはタオルと着替えを出すと、僕のだから少し大きいかもね、なんて笑いながらこちらに渡してくれた。
お礼を言って、浴室に向かう。
いくら不測の事態とは言え、男の子の家に泊まるなんてことになるとは思わなかった。
しかもちゃっかりお風呂まで借りるなんて。
服を脱いだところで、下着はどうしようかと思い至る。替えもないけどまた履くのも微妙だし…。シャワーを浴びながら考えようととりあえず服を脱いで浴室へ。
また停電なんてしませんように、と願いながら手早くシャワーを浴びた。
*****
「…お風呂ありがとう。服も、お借りします。」
さっぱり綺麗になって部屋に戻ると、花京院くんはゲームの手を止めてこちらを見た。
「…ドライヤー、脱衣所になかった?」
「あ、ごめん。気づかなかったよ。」
「持ってくるから待ってて!風邪ひいちゃうもんね。」
そう言ってばたばたと部屋を出て行く花京院くん。そんなに慌てなくてもいいと思うんだけどな。
ドライヤーを持って戻ってきた花京院くんは、私をベッドに座るよう促す。
「…座って。…僕が乾かしてあげるから。」
「え?自分でできるけど…」
困ったように返事をすれば、いいからいいから、と花京院くんに押し切られる。
美容院典明なんて下らないことを思いついてくすくす笑ってしまったけど、ドライヤーの音で花京院くんに私の笑い声は聞こえていないようで少しばかりほっとする。
ドライヤーの音だけが部屋を満たして、花京院くんの手が何度も私の髪を撫でた。
花京院くんは個性的な髪型なだけあって、髪の扱いはとても上手みたい。
「…はい、できたよ。ななこの髪は綺麗だね。」
「ありがとう。」
歯の浮くような台詞を平然と放って、花京院くんはにっこりと笑う。
「それじゃあ、僕もお風呂に行ってくるよ。」
「…いってらっしゃい。」
お風呂に行く花京院くんを見送って、部屋を見渡す。積み上がったゲームのタイトルを下から眺めていくと、私の知らないものが沢山あった。なんていうか、こんなにゲームが買ってもらえるとか、花京院くんはお坊ちゃんなのかな。
部屋にはベッドが一つ。他に眠れそうなところは見当たらない。強いて言うなら、この床か。
ベッドに腰掛けて考える。もしかして、ここで一緒に寝るのかな…。
まさかそんな、と思ったけど花京院くんならやりかねない。
ベッドに寝転んでみる。シングルだから、二人で眠るにはいささか狭そうだ。
花京院くんの匂いがして、ドキドキと胸が鳴る。枕に顔を埋めるとまるで抱き締められてるみたいで、幸せな気持ち。…あれ、これ変態みたいじゃない!?
そんなことを考えていると、花京院くんが戻ってきてしまった。私は慌てて寝たふりをする。
「…ななこ、お待たせ…あ、れ…」
花京院くんは拍子抜けした様子で私の側に近づいてきた。「寝ちゃった?」と思いの外近くから囁かれて目を開けそうになるのをぐっと堪える。
「…寝てるのか。…可愛い。」
指先で軽く頬を突かれた。花京院くんは喉の奥で小さく笑う。そうして頬に濡れた髪の感触と、次いで唇。
触れられた頬が熱い。私は寝てるんだから、顔が赤くなったらバレちゃうよ、と必死で息を殺すけど、集まる熱は止められなくて。
それでも目を開けることが出来ないでいると、花京院くんは私の髪をひと撫でしてベッドサイドから離れた。
少しして、ドライヤーの音が聞こえ始める。
離れたことにホッとして薄く瞼を上げると、髪を乾かす後ろ姿が見えた。
気取られないように寝たふりを続けながらそっと眺めていると、ぬるりとした何かがブカブカのパジャマの裾から侵入して私の肌を撫でた。
「…ひぁっ、」
突然の刺激に思わず声を上げる。
花京院くんは相変わらず背中を向けたままで、ドライヤーの音で聞こえていなかったのかと安堵して唇を噛み締める。
どうやったってここには届かない距離のはずなのに、私の肌を撫でるこの感触はなんだろう。
「…ッん、…ぅ…ぁ…」
明らかに意図を感じるその『何か』は、私の身体に絡みつくように蠢いている。お臍の周りを撫でて、胸に這い上がって、下着の上から膨らみを揉みしだく。
花京院くんに助けを求めたいのだけど、こんな訳のわからない状態で何と言ったらいいのだろう。唇を開いたら、喘ぎ声が溢れてしまいそうで必死で唇を噛んで耐えた。
そうこうしているうちに胸の頂に辿り着いたそれは、ぷっくりと膨れた先端をまるで愛撫でもするかのように押し潰した。
「…〜〜ッ、…」
声が聞こえないようにベッドに顔を埋める。
どうにかして逃れようと身を捩るけれど、逆にベッドと体の隙間に入り込まれて逃げ場がなくなっていく。
「…や、だぁ…」
ズボンの裾からも、別の何かがスルスルと入り込んで、指先を擽り脹脛を撫でて、遂には足の付け根に伸びてくる。
「ダメっ、…!」
纏うもののない秘部に、ぬるりとした感触。
下着を着けなかったことを酷く後悔した。
「…ッあ…やだっ、だめ…ぇ…」
ぬるぬると擦り上げられて、もう声を抑えることなんてできやしない。涙目になる私の視界の先に、いつの間にかドライヤーをかけ終えた花京院くんがいた。
「…下着、着けてないの?」
「やっ、かきょ…いんく…んっ、たすけて…」
わたし、なんかへんなの、たすけて、と切れぎれに乞えば、彼はその大きな口を楽しそうに歪めて「どうしたの?」と問うた。
「…どう、って、わかんな…あっ、や、あんッ…」
「…随分と気持ちよさそうだね?」
助けてほしくて口を開いたって喘ぎしか出てこない。ぐちゅぐちゅと音がしそうなくらい擦り上げられて、しかもそれを花京院くんに見られてるなんて。
「やっ、見ないでッ…だめ…っんぁ…」
かぶりを振るけど、誰も赦してくれなくて。
花京院くんはその細い指先でパジャマの裾を捲り、私のお臍をべろりと舐めた。
「…可愛い、ななこ。」
「…っんん…ーーーッ!!」
内腿がびくびくと痙攣し、頭の中が真っ白にはじける。浅い呼吸を繰り返していると、花京院くんはそれは楽しそうに笑って私の髪を撫でた。
「…もうイっちゃったの?」
「…っは、…な、に…これ…」
身体に絡みついていたものたちが離れ、私はようやく解放される。パジャマのズボンはきっとひどく汚れてしまっただろう。
状況が飲み込めなくて縋るように花京院くんに手を伸ばすと、彼は私の手をそっと両手で包んで指先に口付けた。
「…寝たふりしてるから、悪戯したくなったんだ。」
ごめんね、お詫びに責任もって愛してあげるから。
花京院くんはそう言って、私の上に覆い被さる。パジャマの裾から差し込まれた手が肌を撫でた。
「…や、ぁっ…」
再び快楽の波に攫われながら、花京院くんの手はさっきまで私の肌の上を這い回っていた何かと、とても良く似ているなぁなんてよくわからないことを考えた。
20151029
赤いたぬきと緑の花京院。
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bkm