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○○○の、あき。

西日が差し込む通学路を、2人並んで歩く。
隣を歩くななこはまっすぐ前を見つめている。時折眩しげに眉を顰める姿が、可愛いと思う。

「あっという間に秋だね。」

並んで歩く僕たちの影がいつの間にか長くなって、吹く風が少し乾いた冷たさになって。

こんなリア充みたいな毎日が、僕に来るなんて。

エジプトから戻ってきて、クラスに気になる子ができて。
スタンドの見えない彼女に僕は理解されないと孤独に思っていたのはただの杞憂で、その陽だまりのような笑顔でいとも簡単に彼女は僕の懐に入り込んだ。いつの間にか傍には子猫のように笑う彼女がいて。

「…私、花京院くんのことが…」

と、彼女が頬を染めたのは確か、桜の咲く季節だったと思う。

彼女にハイエロファントは見えないけれど、勘が鋭い彼女は時々見えているかのように彼に微笑みかけ、何よりその小さく柔らかい掌は、僕の心を解すには十分過ぎた。

「…秋ってさあ、色々あるよね。」

隣を歩くななこにそう言えば、彼女は秋と名の付くものを指折り数え始めた。

「食欲の秋とか?読書の秋でしょー?それから、スポーツの秋?」

可愛いな、とその指先を見つめていると、ななこは不意に僕を振り仰いで言った。

「花京院くんは、何の秋にする?」

「…え?…うーん、何がいいだろうか。…ななこは?」

「…わたし?私はねぇ、」

黒い瞳が悪戯っ子のようにキラリと輝いたように見える。西日のせいだけじゃない。

くすくすと笑いだすもんだから、どうしたの?と問うと、ちらりと視線だけこちらを向いて、またくすりと笑う。

「…気になるじゃあないか。教えてよ、ななこ。」

「…私はぁ…花京院の、」

花京院、と呼び捨てにされて心臓がどきりと跳ねる。こんなことで動揺するなんて、エジプトで鍛えた僕の精神力とはなんだったのか。

「…花京院って、僕?」

返す言葉が、少しだけ震えた。緊張なのか期待なのかはわからなかったけれど。

「花京院の、り、『あき』にするー!」

楽しそうにそう叫んで、彼女は走り出す。




くだらない。

実にくだらない。



けれどとても、幸せだと思った。


僕は走り出す。
西日に溶けてしまいそうな彼女を、捕まえるために。


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm