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緑に染まる心

「生きるのがしんどい。」

「ななこさぁ、全然思い詰めてない感じで言うのやめなよ。」

放課後の教室、机に突っ伏した私の頭を花京院くんがぽんと叩いた。

「しんどい。ダメだ…もうだめだ…」

「…何かあった?」

顔を上げないままいると、わしわしと撫でられる。花京院くん、私は本気で落ち込んでるんだから邪魔しないでよ。

「なんにもない。」

「…ならなんでさ。」

「訂正する…花京院くんに言えることはなんにもない。」

「…え、酷くないかい?」

言葉になんかできない、この漠然とした不安。心がざわざわするような、涙が出そうな。

「…所詮私の孤独なんて私にしか理解できないんだ。」

頭を上げてそう言うと、再び机に突っ伏す。
勢い良く頭を落としたのでおでこが机にぶつかってべちんと鳴った。痛い。

「そりゃあそれが孤独だからね。…なんか哲学的な気もするけど。」

さ、起きて。と腕を引かれて顔を上げると、花京院くんは私を見て吹き出した。

「なんで笑うの。」

「え、だって、おでこ…!」

ぶつけたせいで綺麗にまあるく赤いよと、笑いながら教えてくれた。
ノォホホ、って笑い声はどうやったら出せるんだろう。変なの。

「笑いすぎだよ。…もう。」

釣られて頬が緩んでしまうじゃないか。
思わず苦笑いすると、花京院くんは私を見て言った。

「…その顔の方がかわい…ぷぷっ…」

褒めてくれようとしたはずが、おデコを見ると笑ってしまうらしい。失礼な。

「…もー!失礼だよ花京院くん!」

「ごめんごめん。けど、さ…」

不意に真剣な表情になるもんだから、びっくりして花京院くんの鳶色の瞳を見つめた。

「…どしたの、急に。」

「何か、僕にできることはないかな。」

とても静かな声で、花京院くんが問う。
こちらを見る瞳は、どこか哀しげな色をしていた。

「…わかんないよそんなのー…」

「じゃあ、忘れさせてあげよっか。」

花京院くんは静かに笑いながら、ゆっくりと身体を屈めて赤くなった私の額にそっと唇を落とした。
突然の出来事にフリーズしていると、彼は照れたようにはにかんで、「ごめん、嫌だった?」なんて。

「…嫌じゃ、ないよ…」

「早く治るように、おまじない。」

『何が』とは言わない花京院くんは、優しい。その手は軽く私の髪を撫でて、元のように彼の傍に降ろされる。

「…まだ、治らないよ。」

彼の制服の裾を掴む。
すると花京院くんの制服から、鮮やかなエメラルドが抜け出して、私の頬を撫でた。

「じゃあ、治るまで…側にいてもいいかい?」

心のざわつきは種類を変えて、私を蝕んでいく。多分それは、この頬に触れるエメラルドと同じ、とても鮮やかな。

「…ずっと、だったらどうする?」

握っていた制服を離して頬に触れるエメラルドの上から手を重ねると、彼は少し驚いたように瞳を開いてそれから嬉しそうに細めた。

「喜んで、側にいさせてもらうよ。」

だって僕は、君のことが好きだから。
と彼は小さく呟いて、私の手のひらに自分の手を重ねた。


萌えたらぜひ拍手を!


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