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強引すぎてついていけない

「花京院ー!」

帰り道、遠目に変わった色の髪を見つけた私は、一目散に駆け寄る。近くまで来て、やたらデカいもう一人が隣にいることに気付いた。いや普通はこっちが先に気付くだろうに、なんで花京院が先に目に入ったんだろう?なんて思いながら声をかける。

「あ、空条くんも一緒?」

花京院は「ななこも帰るところかい?」なんて呑気に笑い、隣の空条くんは、めんどくさそうに帽子のつばを下げた。

「うん、帰るとこ。また明日ね!」

花京院だけなら一緒に帰ろって言うところだけど、空条くんがいると周りの女子の目が怖いから挨拶だけにしよう、なんて踵を返そうとしたところで、そんなの知らない花京院から「途中まで一緒に帰らないかい?」と呼び止められた。

「え?…いやぁ…遠慮しとくよ」

この中では花京院の家が一番近い。私と空条くんが二人で歩いてるとか、誰かに見られたら大騒ぎだ。っていうかファンに殺されかねない。

「…遠慮なんかするこたぁねーだろ」

低い声がそう言い放ち、思わず背がぴっとなる。別に空条くんが嫌いとか花京院が好きだとかそういうんじゃあないけれど、私はどうにも、この大きな黒い生き物が恐ろしい。なんというか、得体が知れない感じがする。(花京院も得体が知れないと言えばそうなのだけれど、彼はどちらかと言えば胡散臭い。)

「そうだよななこ」

二人からそう言われてしまって、やむなく一緒に帰ることになった。…まぁ歩き出してしまえば、楽しい帰り道なんだけど。

「…でさぁ、先生がね、」

「本当かい?」

学校のこととか、テレビのこととか。くだらない話で盛り上がりながら家路を辿る。そうこうしているうちに、花京院の家の近くに着いた。

「…ぼくはここで。それじゃあななこ、承太郎。また明日ね」

「…おう。またな」

「またね!」

花京院が帰ってしまうと、空条くんと二人。さっきまでの楽しい雰囲気は何処へやら、空条くんは無言で歩いている。そういえば、さっきまではほとんど私と花京院が喋っていたな、と今更気付いた。

「なんか、花京院いなくなったら静かになっちゃったね」

困り果ててそう笑えば、空条くんは私の言葉には返事をせずに、「…どうして」と言った。

「え?なにが?」

思わず立ち止まると、空条くんは「どうして花京院のことは『花京院』なのに俺は『空条くん』なんだ」と問いかけた。

どうしてと言われても、そりゃあ私が空条くんより花京院の方が仲良しだからだし、ホント言うと空条くんはちょっと苦手だ。けれどそれを素直に言えるほど、私の肝は座ってない。

「え?語呂がいいから?…別にそんな小さなこといいじゃない」

曖昧に笑って誤魔化す。語呂がいいっていうのは本当だ。「花京院くん」よりは「花京院」の方が呼びやすいし、「空条」よりは「空条くん」の方が呼びやすい。(「空条」なんて恐ろしくて呼べないけど)

「承太郎」

「え?」

いや、空条くんが承太郎って名前なのは知ってる。なんなら空条承太郎で「JOJO」って呼ばれてるのも知ってる。けれどなんで急に、と随分高い位置にある空条くんの顔を見上げれば、彼は私をまっすぐ見つめて言った。

「承太郎だ。…小さなことだっつーなら、そう呼ぶのも変わらねーよな?」

「…え、ッ!?」

いやいや待って。変わるから。そんな恐れ多くて無理。第一なんで承太郎なんて!と半ばパニックになりながら言えば、空条くんは相変わらず淡々とした調子で言葉を続けた。

「そりゃあななこ、俺がてめーを好きだからだ」

「…は、」

時が止まった。今…なんて?…俺が?俺って空条くん?てめーって、私…?

「オイ、聞いてんのか」

ぽかんとする私の肩を空条くんが掴む。
そこでやっと私の時間が動き出し、ぶんぶんと首を縦に振った。

「きっ、聞いてる!でもまって、なんで空条くんが」

「承太郎だっつってんだろーが」

「いっ、いひゃい!」

あろうことか鼻を摘まれた。痛い。やめてよ、と間抜けな声を出すとまた「承太郎」と言われた。これは呼ぶまで離してもらえないのか。

「じょ、たろ、や!」

「…やりゃあできんじゃねーか」

くうじょ…承太郎は満足そうに笑って、鼻を摘んでいた手を離して私の頭を撫でた。大きな手が、愛しむようにそっと私の髪を背中までなぞる。なんだかとてもあったかくてくすぐったくて、なにこれ、私こんなの知らない。

「…あ、の、承太郎…」

熱い頬が恥ずかしくて俯きながら言えば、「なんだよ、告白の返事か?」とからかい混じりに返された。そう言われたら私はどうしていいかわからない。

「ちが、…え、本気…?」

「…付き合ってくれんだろ?満更でもねえって顔してんぜ?」

そんなこと言われても、急すぎてなんだかよくわからない。付き合うって、付き合うってなに。まって、まって承太郎。

「え、待って」

「待たねえよ。…っつーわけでよろしく頼むぜ」

じゃあな、と承太郎はあっさり踵を返していなくなった。
取り残された私はただドキドキするしかなくて、明日から一体どうなっちゃうんだろう…と不安に溜息を吐くしかできなかった。


20170620
#指定されたキャラかCPの強化週間を始める
トラさまより「空条承太郎」


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm