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よく噛んで食べましょう

なでなでして。の続き



「気に入ったの?」

「…まぁな。」

あれから承太郎は私の髪をよくぐちゃぐちゃに撫でるようになった。大きな手が無造作に動くのを感じながら問いかければ、彼は存外素直に肯定の意を返した。まさかそんなあっさり頷かれるとは思わなかったので、なんて返していいのかわからなくなる。

「…そうなんだ」

ぽつりと呟くと、承太郎は心配そうな顔で「嫌だったか?」と言った。でかい図体でそんな顔をされると、なんだか守ってあげなきゃいけないような気になるから不思議だ。承太郎なんて、私が守るまでもなく強いのに。

「ううん、嬉しい」

でも髪が乱れちゃうのはちょっとこまるな、なんて笑えば、彼は私の髪を撫でる手をそのまま背中に下ろした。抱き込むようにして上から下に背を撫でられる。

「きゃっ、くすぐったいよ承太郎」

「うるせえよ」

なんだか猫にでもなった気分だ。広い胸に擦り寄ると承太郎は満足そうに私を抱き締めた。私も倣って腕を回してみたけれど、背中が広くって承太郎みたいに撫でられない。

「なにしやがる」

「え?お返ししようと思ったんだけど…」

承太郎みたいにはできないね、なんて笑うと、不意に抱き上げられた。思わず悲鳴をあげたけれど、承太郎は意にも介さずそのままのしのしと進んで行く。
そうして私を膝に抱く形でソファに深く沈み込んだ。お尻の下に承太郎の足があるのがなんだか不安定な気がして、私は彼の首筋にしがみつく。承太郎は私の耳元に唇を寄せ、「早くしろよ」と囁いた。

「は、やくって…なに」

「…お返し、してくれるんじゃあねーのか」

オラ、と頭を首筋に擦り付けられて、ようやっと理解する。どうやら彼は、撫でるのも撫でられるのも気に入ったらしい。

「…いいよ。」

帽子を外してわしゃわしゃと髪を撫でると、気持ち良さそうな吐息が首筋に掛かる。なんだか大型犬を飼ったような気分だ。…犬というよりはむしろ熊かもしれないけど。

「…ななこ」

「…なぁに承太郎。」

普段は帽子に隠れて見えないつむじに唇を押し付ける。ほんのりとシャンプーの香りがした。あぁ、なんだかとても可愛い。本人に言ったらきっと怒られてしまうだろうけれど。

「……勃っちまった」

悪ィが、ココも撫でちゃあくれねえか?なんてしれっとした顔で言うもんだから、その言葉を理解するまでにたっぷり5秒はかかったと思う。

「…えっ、えっち!!!」

「…悪ィかよ」

膝の上から逃げ出そうとするよりも早く、承太郎はその太い腕で私を押さえ込んだ。「責任取れよ」だなんてその言葉はあんまりに無責任すぎる。

「やっ、セクハラ!」

「最初に撫でろっつったのはテメェだろーが」

勃っちまったもんは仕方ねーだろ、と言われてしまったら、もう逃げる術は見つからない。
私が諦めて目を閉じると、そのまま唇を奪われた。承太郎の大きな手が、さっきまでとは違うゆっくりとした動きで私の髪を撫でる。ちゅ、と可愛らしい音を何度も立てて、あちこちに柔らかな感触が降って来る。

「…食べられちゃう。」

「…違いねえな」

随分と余裕じゃあねえか。そう言ってくつくつと喉の奥で笑った承太郎は、私の首筋に噛み付いた。

「やっ、噛まないで…」

痕がついちゃう、と言ったらさらに強く歯を立てられたから、きっと痕を付けるために噛んでいるんだろう。女の子の肌に傷を付けたいだなんて不届き者め。

「…これもッ…『お返し』しちゃうからね…」

「…やってみな」

承太郎は首筋につけた歯形を満足げに見つめると、私の目の前に煌めく星を差し出した。
ご丁寧に髪を手で避けてくれるなんて、馬鹿にでもしているつもりか。なんだかとても悔しくてその首筋に歯を立てる。柔らかな肌は私が想像していたよりずっと簡単に沈み込むもんだから、なんだか怖くて、どれくらいの力を込めていいのかわからない。

「…そんなんじゃあ、痕なんてつかねえぜ」

余裕を含んだ声でそう言われて、ぐっと口元に力を込める。思いっきり噛んだせいか承太郎の小さな呻き声が耳元で聞こえて、なんだか変な気持ちになってしまう。ゆっくりと離れると、首筋にはクッキリと歯型が残っていた。思わず安堵の溜息を吐く。

「…できた…」

「…ななこ」

不意に視界が反転する。何が起こったか分からず目を瞬かせると、ギラついた視線が私を射抜いた。承太郎は「遊びは終いだ」と言うと、噛み付くように私の唇を奪った。

「…ッ、ん…っ、!」

「…覚悟しろよななこ、てめえのせいだ」

確かに噛むと言ったのは私だけれど、まさかこんなに興奮されるなんて思うわけない。思考が追いつかないまま、衣服が剥ぎ取られていく。こんなに余裕のない承太郎を見るのは初めてで、どこか恍惚としたその瞳はひどく美しかった。

「…じょ、たろ…」

覚悟も何も、ずっとずっと大好きだから、好きにしたっていいのに。伝え方が分からなくて彼の背に腕を回す。
大好き、の言葉は、再度落とされた唇の中に飲み込まれて消えた。

20170604


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm