今日の日はさようなら


「見ーつけた、人気者くんっ」
「ひかるじゃねぇですかィ」

銀魂高校卒業式の後、俺は3Zの教室で卒業した元クラスメイト達を見ていた。
そしたらひかるが入ってきた。

「なんでィ、人気者くんってのは」
「下、総悟目当ての可愛い後輩ちゃんでいっぱいだよ??モテるねぃ」
「何を言いまさァ。アンタ目当ての男のが多いじゃねぇですかィ」
「あっはっは、それこそ気のせい気のせい」

そう笑うとひかるはスタスタとこっちに歩いてきた。

「窓側から二列目、後ろから3番目」

そういってひかるは最後の自分の席…俺の隣の席に座った。

「もう卒業かー」
「早かったですかィ?」
「んー、早かったねぇ」

最初はなんだこの学校って思ったんだよ、とひかるは笑った。

「俺も最初は、長ったらしい文を読むやつだと思いやした」
「あ、新入生総代の挨拶??あっは、あれ私がやったって覚えてたんだー」
「そりゃ名前言ってやしたしねィ」
「そっかそっか。…答辞も狙ってたんだけどなぁ」

十四郎くんに負けるとは…とアンタは机に突っ伏した。

「3Zになったとき、さ。正直私の人生終わったと思った」
「そりゃあ大げさでさァ」
「だってそうじゃん。この受験の大事な3年生ってときに問題児の巣窟3Zだよ??終わったでしょそんなん」
「なんか手違いだったらしいですねィ」
「そうそう。まぁ今更変えれないって言われちゃったんだけどね」

でも楽しかった。
ひかるは噛み締めるようにそう言った。

「3年生が一番あっという間だったな、多分」

そう言ってひかるは突っ伏したまま俺の方を向いて笑った。

「っ…聞きやしたぜ??県外の難関K大受かったらしいじゃねぇですかィ」
「あ、聞いた??そうなんだよねー。先生たちに"お前は我が校の誇りだ"とかなんとか胴上げされちゃった」

県外ってことは一人暮らし。
もう今までみたいに簡単には会えない。

「ホントはね、保険にちょっと期待してたんだ」
「保険…つーと??」
「私、こっちの大学も受けてたの。…もしも…もしもK大に落ちてさ、こっちの大学になったら…またみんなと海いったりどんちゃん騒ぎして…高校の時みたいに…」

そこでひかるの言葉が切れた。

「…やめた。たらればは寂しいもんね」
「…こっちに帰ってくるつもりはねぇっつーことですかィ??」
「いや??そこまで言ってないじゃん」

でも、さ…とひかるは体を起こして言う。

「会えるのは減るじゃん、やっぱり。…だからちょっとだけ、残念」

そう言うとひかるは思い出したよう俺の方に手を差し出した。

「??なんでさァ」
「第二ボタン!!」
「は」
「私がもらってあげるよ、嬉しいでしょ」
「どんな押し付けがましい要求なんでさァ」
「だまらっしゃい」
「へいへい」

俺は自分の学ランから第二ボタンをぶち切るとひかるの手に乗せた。

「…ホントにくれるんだ」
「どーせやる相手もいやせんしねィ」
「あは、さみしい青春だ」
「まったくでさァ」
「…ん、ありがと」
「精々大事にしなせィ」
「大事にするわ」

これで悔いはない、とひかるは席を立つ。
あぁ、行っちまうんですねィ…。

「じゃあね、総悟」
「ひかる」
「はいよ」
「…俺ぁ難関大に受かった頭のいいアンタよりも俺らと一緒にバカやってたアホなアンタのが好きでさァ」
「…何、バカにしてんの?(笑)…まぁでも、うん…ありがと」
「だから絶対に帰って来なせェ。他の連中が都合悪くても俺だけはアンタと一緒にまたバカやってやりまさァ」

だからじゃあねとか次がないようなこと言わねぇでくだせェ。

「…そか。…じゃあ、」

またね、総悟。



いつまでも絶えることなく
友達でいよう
今日の日はさようなら
また会う日まで


…また会う日まで。

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