思い出すのなら君の笑顔が良かったなんて


※死ネタ?注意


「うぁ…ゲホッ…う…」

ちょっと無茶をしすぎたかもしれない。
レベル3とレベル2、それにレベル1が…何体…?
…やめよう、数えるの。
もう倒したんだし。

「…ファインダーさん大丈夫だったかなー…」

私はその場に倒れこみ、ゴロンと仰向けになる。

「…空が…赤い」

いや、この場の血の色を反射してるんだろうか。
空の青は海の青ともいうし。
先ほどぶっ刺されたお腹がジワジワと痛む。
体に穴が開いた気分。
…開いてんだけど。

「今回こそ…ヤバい…かな」

こんなときにも浮かぶのは君だなんて。
私はどれだけ君のことが好きなんだろう。




「ユウー!ねぇユウったらー!」
「……」
「ユー…」
「うるせぇ!ファーストネームで呼ぶんじゃねぇ!」

ぷにっ

ユウのほっぺに私の指が食い込む。

「やーい、引っかかったー」
「てめぇ…」

コロス、とユウが睨みつけてくる。

「きゃーユウが怒ったー!」

私は笑いながら逃げる。
周りの人たちはまたか、という顔で笑ってる。
まぁ、周りからみれば私たちはただのバカップルだったかも。

「まちやがれ、このっ…カイワレ!」
「大根じゃないもーん」

ユウは最初、私のことをカイワレって呼んでた。
うん、カイワレ大根。
アレンくんのモヤシと同じで、ひょろひょろしてるから、だって。
ね、酷い酷い。

「ね、ユウー!」
「なんだ!」
「大好きだよ」
「っ…」

私が立ち止まって振り向くとユウはいつも通りの仏頂面で、
でも、もう怒ってるってわけではないようだった。
そして、短い舌打ちが聞こえて…

「チッ…もだ」
「え?」
「…俺も…好きだ、ヒカル」
「?!」

私は多分ぽっかーんとしてる。
そんな私をユウは呆れた顔で見る。

「…もっとマシな顔できねぇのか」
「ユウが…ユウが…」
「あ?」
「ユウがデレた!」

言った瞬間ユウに頭を叩かれる。

「いったー…」
「でけぇ声でアホなこと言うな!」
「むーん…」

ユウはもう言わねぇとあっちを向いてしまった。

「ユウー」
「…」
「ユーウ」
「…なんだよ」
「ありがと」




今思うとこれが最後の会話かも。
あはは、最後まで私ユウを怒らせてたんだなー。


任務行って、無茶して、怪我しては怒られた。

"ヒカル!てめぇまた無茶しやがったな!"


ラビとイタズラしては私だけ怒られた。

"あの馬鹿兎と結託してんじゃねぇよ!"


よく体調崩しては怒られた。

"お前は体弱いってこと自覚しろ!…おい、聞いてんのかヒカル!"


ねぇ、ユウ。
可笑しいね。
怒られた思い出しか出てこない。
もっといっぱいいっぱい、ユウの顔見てたはずなのに。
普通こういうときって好きな人の笑顔思いだすもんじゃんね。
…でも、別に嫌じゃないんだよ。
だって、ユウが怒るのは私を心配してくれてるからだもんね。
ユウ、
こんなことならもっといっぱい好きって言っておけばよかったね。
好きだよ。

「ユウ…好きだよ」

そしたらさ、
もっともっと笑ってくれたかな。

いつの間にか赤い空は滲んでて。
そろそろ目がかすんできたかなと思ったら、
目から温かい水が流れて、
自分が泣いてるんだなって気付いた。

「ごめんね…ユウ」

最後まで一緒にいてあげられない。
この白と黒の戦いの末を、見届けることはできなさそうだよ。
…あはは、私の頭の中でもそんな仏頂面しないでよ。
あぁ、せめて


思い出すなら君の笑顔がよかったなんて


(言ったらまた)
(こんなときに何言ってやがるって)
(怒られてしまうよ)



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