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ふたりきりの夜明け



 オズと一緒にいるようになって、どれくらい時間が経っただろう。時間の感覚が無い。毎日過ぎ去った日を数えることなど、そんなことはしない。1年は経っただろうか。それとも、もう数十年経ったのだろうか。魔法使いは魔力が成熟すると身体の成長が止まるらしいが、自分たちはどうなんだろうか。そんなことを考えながら、いつまでも変わらない景色のなか、ふたり歩き続ける。

 それはある日のことだった。

 突然、ふたりの魔法使いが目の前に現れた。黒髪に金色の目をした、同じ顔をした男の子。子供の姿をした魔法使いは、自分たちより少し年上くらいだった。けれど魔力が強い。それをいち早く感じ取ったのはオズだった。

 そなたがオズか、と双子が尋ねる。またオズを狙ってやってきた魔法使いだろうと、幾度と繰り返したふたりは思った。双子は、自分たちの弟子にならないかと提案してきた。目的なんてわからない。その言葉すら嘘かもしれない。手を繋いだ自分たちだけしか、信じられなかった。

 オズが目の前の魔法使いを睨みつけて、魔力を発露させる。それを合図に、危険にならないようにオズから離れる。強い魔力を放つオズを怯みもせず見つめた魔法使いは、仕方がないと言って魔力を集中させた。

 そこからは凄まじい魔力による魔法での攻防戦が繰り広げられた。オズの強い魔法を難なく双子は避ける。遊ぶように攻撃をよけ、試すように攻撃を放つ双子から、今までとは段違いの実力の魔法使いであると早々に理解する。時間が長引くたび、オズが追い詰められていく。オズは魔力もあるし、強い。しかし魔力が成熟しているわけではなかった。成熟すればオズの方が強いかもしれないが、それは今じゃない。とうとう追い詰められたオズが双子の魔法を正面から受けて、雪の上に転がる。はっと息を飲んだ。

 魔力も体力も限界のオズを見下ろして、観念したかと言う。それでも睨みつけるオズに、やれやれとため息をついて、そっと手を伸ばした。それを見た瞬間、弾けるように身体が動いた。


「おや・・・・・・」


 伸ばされた手から庇うように、オズを両腕で抱きしめる。決して離れることは無いように、強く抱きしめた。抱きしめられたオズは目を見張って驚いていた。目の前の双子も目を丸くして見つめてくる。

 双子は黙ったままボロボロのオズを庇う様子を眺めた。ギュっと腕に力を入れて抱きしめる様子は、大事なものを守るようであった。抱きしめられていたオズも、同じだった。魔力も体力も限界に達しているにもかかわらず、自分を庇う腕を押しのけて前へ出ようと藻掻いている。その様子が双子にとっては面白く、北の魔法使いでは滅多に見ない行動に気に入った。

 お互い視線を合わせて頷き、再びふたりに目を向ける。


「弟子を三人持つのも良いかもしれん。そなたも一緒にくると良い」
「予定では無かったが、ふたり揃って我らの屋敷へくると良い」


 ニコリと笑って語り掛ける双子に、いまだ警戒の視線を向けるふたりの表情は硬い。しかしそんなことを気にした様子もなく、双子は自分たちのペースで話を進めていく。もう一度、手を差し伸べられた。その手をじっと見つめ、伺うように双子を見上げる。

「今からそなたらは我らの弟子じゃ」
「帰ったら温かい食事と毛布を用意しよう」


 オズは隣を一瞥すると、ゆっくりと立ち上がった。それを助けるように手を添えて、一緒に立ち上がる。そして差し出された手を目の前に、ふたりがギュっと手を繋いだ。差し出された手を取ることは無かった。双子は怒った様子はなく、むしろ面白そうにニコニコと笑顔を向ける。

 こっちじゃ、と先導する双子の後をなぞる様に歩く。今度は目的地に向かって歩きだした。この先になにがあるかは分からない。けれどふたりなら、きっと大丈夫。繋がれた手はいつもより強く握られていた。