夕日が沈む、その瞬間

甲板で寝転がって大いびきをかいている末弟を蹴飛ばす。警戒心もなく寝ていたから、それはもう綺麗に蹴りは決まって、ぐぇ、と無様な声がエースから漏れた。
「ってぇ!なにすんだよ!」
「甲板のど真ん中で寝てるお前が悪い」
片手を差し出せば文句は付けるくせに素直にその手が伸びて手を掴む。初めて会った頃より、少し大きくなった手に、片眉が上がる。
「ん?どうした?」
「いや、お前またでかくなってねぇか?」
イゾウの手を借りて立ち上がったエースが明るく笑う。
「おう!身長もまた伸びたんだぜ!」
確かにあわせた目線の位置が少し上がっていた。
「まだ成長期か、餓鬼が」
「ガキとかひでぇ」
「うるせぇ。ああ、もうすぐ飯だとよ」
「やった!起こしてくれてさんきゅ!」
「現金なヤツ」
けらけらと笑うエースにつられて笑いながら、食堂へと歩く。
夕食はもうすぐで、食堂からは良い匂いが立ち上っていた。
「今日の飯は何かな〜♪」
調子はずれに歌うエースが自然イゾウの隣へ並ぶ。
「あ」
その歌が途中で止まって立ち止まって止めて変な声を上げるから、立ち止まって振り返る。
「ああ?なんだ?」
イゾウの全身を口を開けたまま見て、エースが満面の笑みを浮かべる。
「夕日の朱と混じって、イゾウの髪すっげぇ綺麗」
黒って赤に映えるんだな、と一人納得して歩き出すエースにため息を一つ零してその頭を小突く。
「そりゃお前もだろ」
きょとん、としたエースが次の瞬間、大きく笑い出す。
そのたびに揺れる癖の強い黒髪がじわりと夕日に染められて赤くなっていく。
確かに、黒は赤に映えて綺麗だった。



『空音』の由宇様よりお誕生日祝いとしていただきました。
14、41、42、イゾエーと豪華に4つも!なんて贅沢!
それぞれの空気感がとても素敵で、また癒されます。
日常の幸せを感じる時ってこんな時なんでしょうかねw
素敵な小説、本当にありがとうございました!(*^ω^*)


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