Sweet Sweet Holiday

待ちに待った日がやってきた。
数ヶ月ぶりの島国への上陸の日。
そして大好きな恋人と非番が重なった日。






Sweet Sweet Holiday






「へえー…なかなか良い所だな」
「なかなか活気がある街だねい」

久しぶりに上陸したトコロは、大きめの
街だった。たくさんの店が並んでおり、
とても賑やかな街だった。久々に非番が
重なった二人は、数ヶ月ぶりのデートを
決行するためこの街に来ていた。サッチ
は賑やかな街、久しぶりのデートで目を
輝かせていた。マルコも又そんなサッチ
を見て微笑をこぼした。

「まずはどこ行くよい?」
「とりあえず腹ごしらえすっか」
「んじゃ、適当に店入るかい」

とりあえず昼ご飯がまだであったことに
気づいた二人は、最寄りの店に入った。
朝食にしては遅め、昼食にしては早めの
食事を取ることにした。


「わっ、これうめぇ!」
「こっちもなかなかイケるよい」
「ホントだ。マルコのも美味そう」

二人が立ち寄った店は、小さいが洒落た
イタリアンの料理のレストランだった。
窓からは海も見えて、とても印象の良い
店であった。マルコ頼んだのは新鮮な
魚介類とフレッシュトマトをふんだんに
使ったパスタ、サッチが頼んだのは様々
なチーズを使った具だくさんのドリア。
二つともとても美味で二人の頬は緩んで
いた。

マルコの食べているパスタが美味しそう
に見えたサッチは思わず食い入るように
してそれを見つめた。するとその視線に
気づいたマルコは、くるくるとパスタを
フォークに絡ませると、それをサッチの
目の前に差し出した。

「ほら」
「え?」
「一口やるよい」
「へへっ、サンキュー」

マルコの優しさに、サッチは嬉しそうに
笑みながら、マルコが差し出すパスタを
食した。フレッシュトマトの程よい酸味
と甘みや魚介の旨みがなんとも絶妙で、
味はもちろん美味だ。マルコがパスタを
分けてくれたこと、美味しいパスタの味
を噛みしめていることでサッチは幸せな
気持ちになった。すると今度はサッチが
スプーンにドリアを掬い、それをマルコ
の前に差し出した。

「じゃ、お返しな」
「!ありがとよい」
「ほら、あーん」
「ん」

一瞬驚きの表情を見せたマルコだったが
すぐ笑顔になり、パクリとドリアを口に
含んだ。これまた美味だ。元々味は良い
のだろうが、サッチが食べさせてくれた
ことで更に美味しくなったような気が、
マルコにはした―。数十分間、その店で
のんびりした二人は店を出て、ゆっくり
商店街を眺めながら歩いていた。洋服屋
靴屋、たくさんの店が立ち並ぶ中、ふと
サッチが足を止めた。その前には高級感
漂うジュエリーショップがあった。目前
の鏡張りの壁の中にあったものにサッチ
は心を奪われ足を止めたのだ。

サッチの目の前にあったのは、ガラスで
出来た海色の羽根が付いたネックレス。
まるで不死鳥姿のマルコの羽根のようだ
とサッチは思ったのだ。欲しいなぁ、と
思ったサッチだったが“七万ベリー”と
いう値段を見て肩を落としてしまった。
今の小遣いでは、買えなかったからだ。
そんな明らかに落ち込んでいるサッチを
見たマルコは問いかけた。

「欲しいのかい?」
「んー…ちょい高いし、やめとく」
「いいのかい?」
「ん。大丈夫」

ウソつけ。それがマルコの心の中の声の
第一声だった。そんなしゅんとした表情
でそんなこと言われてもマルコは納得等
出来る筈がなかった。だがサッチが早く
ここから去ってしまいたいのか行こうぜ
と言いながらマルコの手を引き歩いた。
"分かりやすいやつ"なんて思いながら、
マルコは苦笑を浮かべた。

それからマルコとサッチは街でのデート
を堪能した。喫茶店でデザートを食べて
みたり、市場に行って食材を見たりなど
楽しい時間が流れていった。そして気が
つけば青かった空は茜色に染まり始め、
星が点々と瞬き始めていた。ああ、もう
こんな時間なんだなぁ。時が流れんのは
早いなとサッチは思っていた。もうすぐ
久々だったデートが終わってしまうので
少し寂しかったのだ。

すると二人は街の広場が何やら騒がしい
ことに気づいた。沢山の人が群を成して
いた。それも皆、めかし込んでいた。女
はドレス、男はタキシードを身に纏って
いた。まるでこれからダンスパーティー
でも行われるかのようだった。

「ん?なんだなんだ?」
「えらく広場が騒がしいねい」

チラリと建物に張り付けてあったチラシ
を見た。そこには“毎年恒例、中央広場
ダンスパーティー”と書かれてあった。
詳しいことを道行く人に尋ねたところ、
毎年この時期、老若男女問わず街の皆で
恋人同士、または友人同士で、ダンスを
踊るらしい。その理由は“ダンスをする
事で互いの親睦、愛情を深め合うため”
なのだとか。

すると突然音楽が鳴り始める。モダンで
コミカルな曲調のジャズだ。その瞬間皆
は曲に合わせて踊り始める。だがダンス
の内容は皆様々だ。ダンスの振り付けが
決まっているわけではないらしい。皆は
思うように振り付けし、楽しげに踊って
いた。

それを見たマルコは繋いでいたサッチの
手を離し、それをまた彼の目前にそっと
差し出す。サッチは目を見開いてマルコ
を見る。マルコは微笑みながら甘い声で
サッチに言う。

「俺と踊っていただけますか?ってな」
「!ぷはっ、喜んで」

サッチも笑みながらマルコの手を取って
広場の中へと溶け込んだ。それから色々
と曲が変わる。情熱的な曲調のルンバ、
ゆっくりと穏やかな曲調のワルツ、など
数十分ごとに、様々な曲調に変化する。
生憎二人はダンス等した事ない。恐らく
ステップも、まともに踏めてはいない。
だが近くで踊る恋人達を見ながら、二人
だけのダンスを踊ってゆく。だんだんと
楽しくなった二人は極上の笑顔を浮かべ
ながらダンスパーティーを楽しんだ。

「はぁー疲れたよい」
「オッサンに長時間のダンスはキツいぜ」
「ハハッ、同感だよい」

ダンスパーティーが始まって、数時間。
無事にそれは終わり騒がしかった広場は
嘘のように静まり返っていた。皆は家へ
帰ってしまい今広場にはマルコとサッチ
の二人きりだった。二人は近くのベンチ
に腰掛け休憩を取っていた。時刻は午後
八時。そろそろ帰らなければ皆が心配を
してしまう時間だ。

「今日は楽しかったなぁ」
「ああ。また行こうねい」
「当たり前だろ。また行こうな」

楽しい幸せな時というのはあっという間
に過ぎ去っていくものだと二人は改めて
実感していた。そろそろ、戻らなければ
いけないのだと思うと、少しもの悲しく
なってしまったサッチ。そんなサッチを
見たマルコは彼に声をかけた。

「サッチ」
「ん?」
「良いって言うまで目つむってろい」
「?ああ」

マルコにそう言われ、サッチは不思議に
思いながらも瞼を閉じた。首筋にヒヤリ
と冷たいものが伝っていることに気付く
サッチ。何してるんだと思っていた間に
マルコは再度サッチに声かける。

「もう良いよい」
「もう?…わっ!お前これっ…」
「今日付き合ってくれた礼だよい」
「いつの間に買ったんだよ…」
「さっきトイレに行った時だよい」

サッチが目を開いた瞬間、その開かれた
瞳はさらに大きさを増した。自分の首に
つけあったネックレスを見て―。昼間に
見た、欲しいが値が張る、青いガラスの
羽根がついたネックレスだった。なんと
マルコが昼間にトイレに行くと嘯いて、
わざわざサッチの為に買ってきてくれた
のだ。思いがけないサプライズに嬉しい
あまり言葉を失うサッチ。

それでも嬉しい思いを伝えたくてマルコ
に抱きついた。マルコは笑みをこぼして
そっと抱きしめ返す。あふれんばかりの
“幸せ”で、その場の空間を満たした。
どちらともなく唇に触れるだけのキスを
して、また抱きしめ合った。久しぶりの
デートは最高な形で終わりを告げた。











Sweet・Sweet・Holiday
(甘い甘い二人きりの休日)

「おれからも何か礼してぇな」
「礼かい…じゃあ…アップルパイ」
「え?」
「明日のおやつに作ってくれよい」
「おう!!とびっきりの作ってやるよ!!」



『妄想エデン』のダリア様より相互記念としていただきました。
『マルサチでほのぼのいちゃらぶで二人の休日』でお願いさせて頂きました。
たまにはのんびり二人でおデートもいいですよねぇ(*´ω`*)
楽しく踊るおっさんたち(笑)想像すると可愛いですww
そしてやっぱり外さないマルコさん!
マルコっぽいネックレス欲しがるサッチも可愛いよなぁ。
よかったね!サッチ!!
素敵な小説、本当にありがとうございました!(●^◇^●)


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