罰ゲーム(綱塔・デート編)


ー次の日 a.m.10:00 遊園地の入り口前ー

「塔子のやつまだ来てねーのか…まぁそのうち来んだろ」
そう綱海は一人呟きヘッドホンで音楽を聞いていた。
しばらくすると
「綱海ーッ!!」
塔子が綱海の方へ走って来た。
「悪いっ!!なかなかリカ達が離してくれなくて…」
「いや?俺も来たばっかだし…って」
綱海は思わず塔子の姿をまじまじと見てしまった。
塔子は当然のことながら私服を着ていた。
綱海は塔子の服といったらユニフォームかスーツしか見たことがなかったためそれだけで十分驚くのに、今日の塔子はいつもおろしている髪の毛をアップにしていて軽くメイクもしていた。
「何だよ、そんなにじろじろと見て…」
「あ、わりぃ…何か新鮮だなーって」
「あーあたし皆の前で私服なんか着てなかったからなー…これ全部リカ達がやったんだけど変か?」
塔子は少し心配そうな顔で聞いた。
「いや?似合ってるぜ!」
綱海はニカッと笑いながら答えた。
「そっか、良かった!!んじゃ行こ!!」
「おぅ!!」
そう言って二人で歩きだそうとした時だった。
ブブブ…
「あ、あたしのだ…リカから?」
「あーなんか昨日俺らが遊んでる間も指令出すって言ってたからそれかもな」
「ってことは今日ずっとリカあたしらのこと見張ってるってことかよ…まぁ前の円堂と冬花の時もそうだったしな…一体今度は何企んでるんだか…」
「円堂と久遠の時って?」「あ、いやこっちの話」
「ふーん…んで?なんて書いてあるんだ?」
綱海が塔子の手元を覗きこみながら聞いた。
「えーと…『指令@デート中はなるべく手を繋いでいること!!』…だって」
「へ〜それだけか?んじゃ…ほい」
「へっ?」
差し出された綱海の手を見て塔子は間抜けな声を出した。
「だから手。繋ぐんだろ」
「あ、そっか」
ぎゅっと二人は手を繋いだ。
「な、なんか改めてすると少し照れるな」
「あーまぁな…んじゃ行くか?」
「おぅ!!」
「んじゃまず何から?」
「もっちろん…ジェットコースター!!」
「おしっ!!」
そう言って二人は走って行ってしまった。

「よっしゃ!!なんやえー感じやないの!!」
「こーして見ると塔子も女だったんだな…」
「な、なんだか見てるだけなのにこっちまでドキドキします…」
こちらではリカ達が草陰に隠れてコソコソ話していた。
男も女も関係なくチームのほとんどが面白そうだという理由でついてきたのだ。
「でもあの綱海と塔子だぞ?リカが思うような展開にはならないんじゃないのか?」
「そーさせる為の指令やろ!!絶対ラブラブな展開にさせたる!!」
リカは高らかにガッツポーズを決めて宣言した。
「…程々にしとけよ」
一応この中で一番まともな風丸が注意するが決して止めようとはしなかった。
ここにいるメンバーは皆、綱海と塔子が気の毒だというよりも面白そうだという考えが強いのだった。
「リカさん!!塔子さん達移動しますよ!!」
「何やと!?よっしゃ、はよ行くで!!」
皆が団結しているのがその証拠だ。


こうして綱海と塔子が遊んでいる間もリカ達はコソコソとついて行き、二人でラブラブな写真を撮れやら『あーん』しろやら指令は続いたが二人にはあまり変化がなかった。

ただし表面上は、だが。

(手ー繋ぐだけでなんか照れるってのに公衆の面前で『あーん』しろなんて顔から火が出そうだったっつーの!!…ったく、リカのヤツ後で覚えてろよ!!)
(塔子のやつ、手ぇちっちぇーよな〜さっき写真撮った時抱いた肩も細かったしなんかイイ匂いしたし…いつもと感じ違うから調子狂う…)
二人共実は初っぱななか緊張の連続だったのだ。
しかし二人共あまりにも相手が普通にしているのでなるべくそれらの事を考えないようにしていたのだった。


そんな二人の心情を知らないリカ達はもどかしく感じていた。
「二人共全然いつもと変わらないな…」
「全くですね…どうします?リカさん」
「うーん…」
リカの考えこんでいる様子を見て夏未が時計を見ながら言った。
「でもそろそろ時間も時間だし、ここは最後に観覧車じゃない?」
「でも観覧車やと二人の様子見えんからな〜。まぁええわ、デートってゆーたら最後は観覧車やもんな!!」

ブブブ…
「あ、またリカからだ」
「でももうすぐ閉園だろ?今度は何だって?」
「えーと…二人で観覧車乗れだって」
「へ〜なんか今までのに比べれば随分まともだな」
「だな…まぁいーや!!行くぞ、綱海!!」
二人は観覧車の方へ駆けて行った。


二人の順番になり観覧車に乗って行くのをリカ達はこっそり見ていた。
「あ〜観覧車の中の二人見たかったな〜」「まぁしょうがないですよ。観覧車の中って外からは見えにくいしバレてしまいますよ」
「まぁ浦部が指令を出している時点でどこかで見てるって事はバレてはいると思うがな…ここに居ても仕方ないし俺達もそろそろ帰るか」
皆は粘るリカを引っ張りながらぞろぞろと名残惜しそうに帰って行った。


「お、リカ達帰っていくみたいだぞ」
塔子達は既にある程度の高さにいた。
「変な指令はあったけどなんだかんだで結構楽しかったよな」
綱海が頭の後ろで手を組み空を仰ぎながら今日の事を思い出し言った。
「だなっ!!」
対する塔子も綱海の方に身を乗りだしながら勢いよく頷いた。
満面の笑みを浮かべる塔子を見て綱海は素直に可愛いな、と思った。
「何だよ、急にニヤニヤしだして」
「ニ、ニヤニヤって…随分ひどい言い様だな…」
「だって実際そうだったし。何考えてたんだ?」
「あー…秘密」
「何だよそれ〜」
塔子と綱海は楽しそうに笑いながら話していた。
そしていよいよ頂上という時に

ーガックン!!

「わっ!?」
「おわっ!?」
急に観覧車がちょうど頂上という時に止まってしまった。

ーお客様にお知らせ致します。ただいま強風が吹いたため一時停止しました。間もなく動きますー全ての個室に放送が入ったが二人の耳には入らなかった。

「………」
「………」
「あの…さ、塔子…」
「ご、ごめんっ!!すぐ退くから!!」
そう、二人はさっき塔子が綱海の方へ身を乗りだしていたため揺れた際に塔子が綱海にもたれかかったのだ。
塔子は元の位置に戻ったが動きはぎこちなく、下を向いてしまった。

「…いや、いーんだけどさ、さっきさ、その…しちまったよな?」
「…何を?」
「何ってその…所謂キ「言うなーッ!!」んだよ!?塔子だろ、聞いたの!!」
「だからって普通答えるか!?そこはスルーしろよ!!」塔子が立ち上がり顔を真っ赤にして怒るのを見て綱海は何で俺が怒られてんだ、と塔子から目を反らしながらぶつぶつ言っていた。
「…どーせ、」
「ん?」
「どーせ綱海はいつもの如く海の大きさに比べたらちっぽけな事だとか思ってるんだろうけどなぁ!!あたしはファーストキスだったんだぞっ!!なのにこんな…」
最初は綱海に怒鳴り気味だったがだんだん声が萎んでいき、ストンと椅子に座った。
「…思ってねーよ」
「へ?」
「だから!!…ちっぽけな事なんて思ってねーよ!!」「うそだ!!」
「うそじゃねーって!!大体なぁ!!気になるヤツとキスして何とも思わねー訳ないだろ!!」
「…はい?」
「だからっ!!」
グイッ
「!?」
「…っはぁ…塔子…俺はお前が好きだ」
いきなりキスされたと思ったら真剣な目で告白をされて塔子はパニックになった。
「だって…綱海今までそんな素振り…」
「気付いてなかったのお前ぐらいだっつーの……で、返事は?」
慌てる塔子を落ち着かせようと優しく聞いた。
「…あたしも多分、…すき…かなぁ?」
ずっと緊張していた綱海は塔子の随分頼りげのない答えを聞いて一気に脱力した。
「お、お前なぁ…人が真剣に告白したのに多分ってなんだよ!!」
「しょーがないだろ!!恋愛の好きなんてよく分かんないだから!!」
「だからってなぁ!!「お疲れ様でしたー。お足元にご注意下さい。」…あ、はい…」
まだ話足りなかったが地上に着いてしまったため話はそこで中断になった。

ー帰り道ー
塔子は綱海の少し後ろを歩いていた。
「……」
「……」
「「あのさ」」
「なんだよ」
「そっちこそ」
「「……」」
「…その、いきなりキスしたのは悪かった。…けど俺の気持ちは本当だから」
そう言う綱海の顔は少し赤かった。
「綱海…」
「…なんだよ」
「ごめん、可愛い」
「な!?男に可愛いってなんだよ!?」
「悪い悪い…あのさ、あたし正直そーゆー好きってよく分かんないんだ。…綱海の事好きだよ。綱海みたいな熱いヤツ、大好きだ!!…けどそれが恋愛の好きかはよく分かんない」
塔子はいつの間にか綱海の隣で歩いていた。
「……」
「けどさっきその…キスされた時嫌じゃなかった。だからさ、もう少し時間が欲しいんだ」
「それって…」
二人は足を止めて向き合った。
「いつか綱海に対する気持ちが何か分かったらちゃんと改めて返事する。だからもう少し待ってて欲しいんだ」
「…勿論!!待ってるぜ!!」
「おぅ!!」

こうして綱海と塔子のデート騒動は幕を閉じたのであった。


ー後日ー
「塔子塔子っ!!最後の観覧車どうやった!?なんかあった!?」
「ある訳ないだろ!!それよりよくもふざけた指令「えーっ!!なんもなかったん?せっかくあの観覧車の頂上でキスした二人は一生ラブラブになれるってゆーロマンチックな伝説があるのに〜!!」…マジで?」
「あれ?知らんかったん?てかその反応…やっぱなんかあったやろ〜」
「な、なんもないって!!」
「あ、待ち!!塔子!!」
「やーだよ!!」

その後結局塔子はリカに捕まり全て話してしまった。

綱海と塔子がこれからどうなるのかはまたの機会に…

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