弱点(綱塔)


ーp.m.11:00 キャラバン バス内にてー
「立向居ぃー、起きてるかー?」
「起きてるけど…何?どうかしたの?」
立向居は少し寝ぼけながらも木暮の身に何かあったのかと思い返事をした。
立向居が起きている事が分かった木暮はニヤリと笑った。
「怪談…しよーぜ?」
「やだよ!!」
怖い話が苦手な立向居は眠気もぶっ飛び、思わず大声で言ってしまった。
「静かにしろよ。寝てる奴ら起きちまうだろ」
木暮にそう言われた立向居は慌てて口を手で覆った。
誰も起こさなかった事を確認した立向居は小さい声で再び話を始めた。
「木暮…お前俺が怖い話苦手なの知ってるだろ!!怪談なんて嫌に決まってるじゃないか!!」
「そーだったっけ?ウッシッシ!!」
何やらすっとぼけた顔で木暮は言ったがいつもの口癖は隠せなかった。
「木暮ェ…」
温厚な立向居には珍しく低い声を出し、背後に黒いオーラが見えた時横から二人の声がかかった。
「怪談だって?面白そーじゃねーか、俺達も混ぜろよ!!」
「!綱海さん、吹雪さん!!起きてたんですか!?」
「まぁね。そしたら木暮君の声が聞こえてね。僕達もいいかい?」
「勿論!怪談は人数が多い方が面白いからね、ウッシッシ!」
「って、そーじゃなくて二人共止めさせてくださいよ!!俺怖い話苦手なんです!!」
「ヘーキだって立向居!!こんなもん海の大きさに比べたら「吹雪さ〜ん!!」
綱海では話にならないと思ったのか綱海お得意の言葉を遮って吹雪に半泣きで助けを求めた。
「いーんじゃない?これを機に怖がりを克服すれば?何より面白そうだしね」
「そーだぞ立向居!!男なのに情けないぞ!!」
「塔子さんまで〜……って」
「「「塔子/さん!?」」」
「しーっ。静かにしろよ。監督にバレるだろ」
慌てて4人はさっきの立向居のように口を手で覆った。
「っていやいやなんで塔子さんこんな夜遅くにここにいるんですか!?というかいつの間に!?また監督に怒られますよ!!」
そう、塔子は夜に男だけのバスに乗り込んで来る常習犯なのだ。
とは言ってもすぐに他のマネや監督に見つかって連れ戻されるのだが。
「だってさ〜リカ達寝ちゃって暇なんだもん。因みに木暮の『怪談…しよーぜ?』からいたよ?」
塔子は不満そうに頬を膨らませながら言った。
「き、気付かなかった…」
「そんな事より早く怪談しよーよ!!」
「そ、そんな事って…」
「まぁいーじゃねーか!!塔子こっち来いよ」
綱海にそう言われた塔子はおぅ!と頷くと綱海が寝ていた席の背中を倒し、綱海の側に一緒に寝転んだ。
とことん男女の壁を感じさせない塔子だった。
「んじゃ始めるか!!」
木暮の言葉で怪談が始まった。


暫くした頃である。
外でゴロゴロという音が聞こえた。
「なんだ?この音?」
「雷みたいだな。これでさらに雰囲気が出るぜ!ウッシッシ!」
「えっ!?雷って…外で寝てる女子達大丈夫なんですか!?」
「雷門さんが持って来たあのテント、雨にも雷にもちゃんと対策出来てるんだって」
「さっすがお嬢だな〜…ん?どーした塔子?」
木暮達の怪談話には面白がりはしてたものの怖がりはしなかった塔子が耳をふさいでカタカタと震えているのだ。
「い、いや、何でもないよ」
塔子は笑っていたが雷がピカッと光った途端、
「うわぁっ!!」
ビクッ!!と体を震わせた。
「と、塔子?」
「な、何だよ…」
びっくりしている綱海に対して塔子は半泣きだった。
「塔子さんって雷苦手なの?」
「う、うるさいな!!そうだよ、悪いか!!」
自分の弱点がバレた事が恥ずかしいのかヤケクソ気味で言い放った。
「俺、塔子さんに苦手なモノってないと思ってました…」
そう、塔子は普通、女子が嫌いな虫等を素手で触ったり、怪談を平気で聞くなどをしていた為立向居は塔子にそういう女の子らしい弱点はないと思っていたのだ。
「っしょーがないだろ!!…小さい頃夜一人で留守番してた時雷のせいで家が停電した事があったんだよ…一人で暗いとこにいるのめちゃくちゃ怖かったんだからな!!…それ以来雷が怖くなって…」
塔子が話している間にも雷は鳴っていた為途切れ途切れに言った。
「へ〜」
「何だよ」
綱海が小さい子を見るような顔つきで塔子を見ていたのが気に入らなかったのか塔子は綱海を睨みつけた。
「別に?…なぁ木暮!そろそろ時間も時間だしここらでお開きにしねーか?明日も早いしさ」
「ちょ、待てよ綱海!!お前まさかあたしに気ぃ使ってんのか!?あたしは別にこんぐらい『ゴロゴロ…ピカッ!』…うぅ〜」
明らかに怯えているのにそれでもなお強がる塔子を綱海は微笑ましく思い笑ってしまった。
「そんなんじゃねーって!!ただホントにそろそろ寝なきゃ明日辛いだろ?」
「そりゃーそうだけどさ…」
「だろ?木暮達もいーだろ?」
「勿論です!!」
「えぇ〜…まぁ、綱海さんが言うなら…」
立向居は怖い話はもう沢山だったのか大きく頷いたが木暮はまだやり足りないようで少し渋った。が、意外と目上の人には従うのと綱海の言う事も一理あると思ったので大人しく綱海に従った。
「僕もそろそろ眠くなってきたよ…」
吹雪が大きな欠伸をした。
「よしっ!んじゃ寝よーぜ!!塔子は今日はしょーがねーからここで寝ろよ」
「う、うん…」
もしここで寝たら翌日監督にこっぴどく怒られるだろうがそれよりも雷の方が怖かったのか大人しく綱海の言う事に従った。
木暮達も雷が鳴っている中塔子を外に出すのは危険だと思ったのか綱海の言葉に同意した。
「んじゃお休み〜」
「お休みなさい」
「お休み」
「お、お休み」
「塔子ヘーキか?狭くないか?」
「あ、うん。ヘーキ」
塔子は最初と同じ場所に居るため必然的に一つのスペースで綱海と一緒にくっついて寝ているのだ。
そのため綱海は塔子がまだ少し震えているのが分かった。
綱海は何かを考えた後ニカッと笑って塔子に言った。
「なぁ塔子、人って他人の心音聞くと落ち着くんだってな」
「いや、それって赤ちゃんは母親の心音を聞くと安心するってヤツだろ?成長したら違うんじゃないか?」
「んな細けーこと気にすんなって!!てな訳でさ」
ぎゅっ…
綱海は優しく塔子を抱きよせ塔子に自分の心音を聞かせた。
「こーすれば少しは雷も気にならないし落ち着くんじゃねーか?」
「何だよそれ…」
綱海の安直な考えに塔子は呆れながらもとりあえず大人しく従った。
(あ、でもなんか落ち着く…ちょっと眠くなってきた……あ、綱海の匂い…晴れた日にキラキラ輝く大きな海の匂いだ……ホントに他人の心音って安心するんだな…それとも…海のように大きくて広い心を持つ綱海だからかなぁ…)
「塔子?」
塔子の安らかな寝息が聞こえた綱海は安心したように微笑みながら
「雷が怖いなんて可愛いートコあんじゃん。俺がずっと側にいてやるからゆっくり休めよ…お休み」
塔子に優しく語りかけながら綱海も眠りについた。
勿論塔子を離さないように強く、それでいて優しく抱きしめながら。


「綱海さんって天然なんですか?アレが素なんですか?」
「綱海君、塔子さん相手だと優しくなるんだよね〜」
「二人共幸せそーな寝顔ですね…」
綱海と塔子の無意識のイチャつきっぷりに当てられた三人はすっかり目が覚めてしまっていた。ー翌日ー
綱海と塔子が抱き合って寝ていたのを見て驚いた円堂達の叫び声に綱海達は目を覚まし、監督にこっぴどく怒られたのだった。

「なぁリカ、人っていくつになっても人の心音聞くと落ち着くんだな!!綱海の心音、抱きしめられた時に聞いたんだけどすっごい安心したんだ!!…それとも相手が綱海だったからかなぁ…」
最後にポロッとこぼした言葉のせいで塔子はリカに質問攻めにあったのは言うまでもない。

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