久し振り(木春・高校生)


「やっぱ京都はのどかよね〜。にしてもいないな〜」
春奈は今家族で京都に来ているのだ。
そのためせっかくだからと今日は1人別行動し、昔の知人に会いに行こうとしているところなのだ。
「会おうと思ったのはいいけど私連絡先知らないからなんも約束してないのよね…漫遊寺に行けばいると思ったんだけどな〜」
目当ての人物が見つからずしょんぼりしていると声をかけられた。
「ねぇ君1人?どうしたの?」
見ると人の良さそうな顔の男の人が2人いた。年齢はどちらも春奈と同じで高校生のようだった。
「あ…実は人を探してて…」
「あ、じゃあ俺らも手伝うよ!!ここ地元だし。俺らの知り合いかもよ?なんて名前?」
「あ、ありがとうございます!!えっと探しているのは木「お前ら何してんだよ」…え?」
春奈は助かったと思い探している人物の名前を言おうとしたがまたもや誰かに声をかけられた。
だがその声はどこか懐かしい気がした。
「お前らそいつをどーするつもりだよ」
「げっ!!」
「なんだよお前、お前にはカンケーないだろ」
「確かに関係ねーけど評判の悪いお前らに騙されそーになってんの見過ごすのも気分が悪いんだよ」
「んだとっ!?」「おい、止めとけって!!こいつは…」
男が止めさせようと声をかけるがそれを聞かずにもう1人は相手に突っ込んでいった。
「わっ!!ばかっ!!」
グキッ!!
「いてててっ!!」
相手の男は余裕で男の攻撃を受け流し、技をかけていた。
男は急いで離れたが顔が青かった。
「なんなんだよお前!!」
「お前知らねーのか!?こいつあの木暮夕弥だよ!!」
「え!?木暮ってあのなんかめちゃくちゃ強いって噂の!?」
「…だったらなんだよ?」
「なっ!?くそっ!!逃げるぞ!!」
「お、おう!!」
男達は揃って走って逃げてしまった。
「…たくっ…懲りねーヤツらだな。…お前大丈夫だったか?あいつら何も知らない観光客を獲物にしてる悪名高い奴らなんだよ…ってあれ、お前どっかで……」
そう言ってまだ春奈だと気づかない木暮は喋るのを止めてじろじろと顔見ていたがしばらくすると思い出した様で、
「もしかして音無?なんでここに?」
とやっと相手が分かったもののポカンとした。
「……木暮君なの?」
「そーだけど?てか質問に答えろよ」
「う、うそーっ!!」
対する春奈もしばらく呆然としていたがすぐに大声を出した。
「っ!!うっさいなー。お前相変わらず『やかまし』だなー」
木暮はあまりの春奈の大声に思わず耳をふさいだ。
「相変わらずって何よ!?じゃなくてホントに木暮君!?背伸び過ぎでしょ!!」
そう、木暮は今や春奈と同じか、少し高いぐらいまでに背が伸びていたのだ。
「高校生にもなれば伸びるに決まってんだろ…でお前は?旅行かなんかか?鬼道さんは?」
「あ、うん。今日は音無家で旅行なの。せっかくだから木暮君に会おうと思って」
「なっ!?」
春奈の発言に木暮は顔をほのかに赤く染まったが春奈は気づかなかった。
「でも会えて良かった〜。改めて、久し振り!!木暮君!!」
そう満面の笑みを浮かべながら言った春奈の顔を木暮は直視することが出来ず目を反らしながら小さくおぅ、と答えるだけだった。


とりあえず二人は近くの喫茶店に入った。
「それでさ、今木暮君ってどこに住んでるの?漫遊寺に行ったんだけどもうここにはいないって言われて…」
「あぁ…俺今寮に住んでるんだよ」
「寮?」
「そ。漫遊寺は別に嫌いじゃないけど俺の高校寮があったからそっちに移ったんだよ」
「へー!!ねぇ!!なんて学校?サッカー強いの?」
「強いよ。〇×高校」
「えっ!?そこって頭もいーし、サッカーもかなり強いじゃない!!」
春奈は木暮の高校を聞くとかなり興奮した。情報収集が得意なだけあって全国のサッカーの強豪校はしっかりおさえている様だ。
「まぁサッカーの強さは結構なんでも良かったんだけどそこが一番待遇が良かったんだよね」
「待遇?」
「特待生の」
「特待生!?木暮君、あの〇×校の特待生なの!?」
またもや春奈は驚き大声を出してしまい、店の人から注目を浴びた。
「お静かに〜。や・か・ま・し」
木暮は悪そうな笑みを浮かべて春奈をからかった。
「うぅ〜…じゃなくて!!てことは木暮君て意外にめちゃくちゃ頭いい!?」
「まぁ特待生の条件の内に常にトップっつーのがあるからな。俺親いねーからそーゆーのでやってくしかないんだよ」
「あっ、ごめん…」
「あ、いや別に大したことじゃねーって!!」
「うん…」
そう言いつつも二人の間には気まずい沈黙が流れた。

その雰囲気を変えようと木暮が新たに口を開いた。
「お、お前は?学校どーなんだよ、円堂さんや鬼道さんは元気?」
「あ、うん、もうすぐ県大会があるから皆張り切ってるよ!!キャプテンは相変わらずサッカー漬けだしお兄ちゃんも帝国学園で楽しくやってるみたい!!」
「へー。俺も負けてらんねーな!!」
へへっと木暮は笑った。
春奈は昔に比べて大人っぽくなった木暮の笑顔を見て胸が高鳴るのを感じた。
「そ、そーいえば木暮君ってなんか拳法でもやってるの?さっきの男の人になんか技かけてたけど…」
「あ?あぁ…漫遊寺で心身鍛えるために色々武道はやらされたんだよ。これでも大会で入賞したこともあるんだぜ」
そう木暮は少し自慢気に言った。
「木暮君…なんか成長したね…」
「はぁ?当たり前だろ、お前だって…」
「え?」
「あ!?いや、その…お前も変わったよ」
「そうかな…」
「その…可愛くなった」
「へ!?」
「〜〜っ!!なんでもねーよ!!」
木暮はボソッと言ったが春奈には聞こえてしまったらしく木暮はすぐ自分の言葉を撤回したが二人共顔を赤くなった。
「「………」」


木暮はそんな空気に耐えられずバンッと机を叩いた
「俺もう帰る!!」
「えっもう!?まだ話したい事が…」
春奈の無意識であろう上目遣いにまたもや木暮は自分の動機が速くなるのを感じた。
すると急に木暮はポケットから手帳を出しガサガサと何か書いて春奈の前にピッと出した。
「これ!!俺のメアド!!じゃーな!!金はここに置いておくから!!」
そう言うと木暮はダーッと店を出てった。
「あ、ちょ、木暮!!……これってメールしろってことだよね……素直じゃないなぁ、木暮君」

   またね、木暮君

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