タイムジャンプ(綱塔・中編)


*こじつけ感ありまくりです。なんでも来い!!という心の広い方だけどうぞ。

「綱海 海(つなみ うみ)。10歳です…」

浜辺での出来事の後、とりあえず日本の宿舎に海を連れて来た。
海の目の前にはイナズマジャパンの面々が勢揃いして海の事をじろじろと見つめていた。
反対に海はというと名乗りはしたものの、どうすればいいか分からずキョロキョロと辺りを見回していた。
当然である。
この時点ではまだイナズマジャパンは優勝していないが海の時代ではサッカーをする者にとっては皆憧れの人物である。
何より自分の両親の小さい頃に立ち会っている、タイムジャンプしてしまったという事にまだ実感が持てないのであった。

「つまりお前は綱海と塔子の息子で、今から約20前の未来からやってきた…そういう事か?」
「多分…」
「…どうやってタイムジャンプしたか分かるか?」
「えっと…押し入れ掃除してたら父ちゃんと母ちゃんの、ちょうど今ぐらいのアルバム見つけて…1ページだけ捲れないページがあって無理やり開いたら…」
「この時代に来てしまったという事か…」
「他には何かない?何か変な装置に触ったとか…」
「わかんない…気がついた時にはあの浜辺にいたから…」
「うーん…」
鬼道がこめかみに指を当てながら苦渋に満ちた顔でいるのに対してヒロトは少し眉をしかめただけだった。
「…お前、よく冷静でいられるな…」
「やだなぁ、これでも不思議だとは思ってるんだよ?でも前にあんな事やってたからねぇ…もうなんでもありかなって…」
「そ、そうか…」
そう言うヒロトの目はどこか遠くを見ていた。
「しかしタイムジャンプだなんてあり得るのか…?」
「流石超次元だな」
「そういう問題じゃないと思うけど…」
男性陣が頭を抱えながらこの事態にどう対処すべきか考えているのに対して女性陣は海に夢中だった。
「やっぱり可愛いですね!!男の子とは思えないくらいです!!」
「フッフッフッ…やっぱりうちの睨んだ通りやったな…にしても中学で知り合ってそのまま結婚するなんて綱海も塔子もやるな〜」
「髪の色はどちらかというと綱海さんよりなんですね。でも顔つきは全体的に塔子さんに似てる気がします。」
「え?え?」
しかし海はまじまじと女性陣達に見つめられたじたじだった。

「そういえば肝心の綱海さんと塔子さんは?」
ふと気がつくと綱海と塔子の姿が見えなかった。
春奈が辺りを見回すと後ろの椅子で向かい合ってポケーッとしている二人がいた。
「さっきからあの調子やねん、普通自分らの子供が未来から来たゆーたらもっとリアクションあるもんやないの?」
リカが若干つまらなそうに口を尖らした。
「そりゃリカさんはそうかもしれないですけど二人はまだ付き合ってもないし、何よりあの二人ですし…」
そう、この時点では二人はまだ付き合ってすらいないしその上二人共現段階ではまだ色恋沙汰には程遠い。
そんな中急に子供だと言われてもピンとこないのだろう。

「父ちゃん、母ちゃん…」

そんな中ポツリと漏れた言葉は明らかに寂しさを帯びていた。
その事に気付いた冬花は海の傍でしゃがむと頭を優しく撫でた。
「大丈夫。綱海さんも塔子さんも今は混乱してるけど後でちゃんとお話できるわ。今は海くんが元の時代に帰れるか考えましょう?何か改めて思い出した事はない?」
「うん……あ、」
「何か思い出したのか?」
小さく漏れた言葉だったが鬼道は聞き漏らさなかった。
「光っててよく覚えてないけどアルバムに着いてた接着剤、なんか怪しい紫色だった気がして…」
「…紫色?」
ヒロトがこの言葉に反応した。
「…海くん、もしかして今紫色の石持ってたりしない?」
ヒロトが一筋の汗をたらしながら聞いた。
嫌な予感がする。
そう本能が告げていた。
「石?んなこと言われても…あれ?」
海がポケットをまさぐると指が何かに当たった。
取り出して見るとそれはあの忌まわしい『あの石』だった。
「いつの間にこんなの…」
海には心当たりはないようだった。
「はぁ…またこれを見る事になるとはね…」
ヒロトが苦々しい顔でそれを取って見つめた。
「おい、まさかそれ…」
「うん、正真正銘のエイリア石だよ」
「「「はぁ!?」」」
皆の声が響いた。
「なんでまたそんなものが…」
鬼道が戸惑いを隠せないままヒロトに尋ねた。
「多分海くんが見たのは液状になったエイリア石だろうね。あの石接着作用もあったし…恐らく海くんがそのページを開いた時に溜まりに溜まったエネルギーが爆発してこの時代に飛ばしてしまったんだと思う。エイリア石は空気中の酸素と化合して中でエネルギーを増幅させるんだ。石の状態でさえ空間を移動する事は可能だったんだし20年もの溜まったエネルギーが時代さえも飛び越えても不思議じゃないよ」
「いやだからって…」「後はまぁ、超次元だし。」
「便利だなその言葉!!」
「しかし何故海は石を持ってるんだ?」
液体が手に付着していたというならまだしも海は石を持っていた。
疑問に思った豪炎寺は尋ねた。
「液体の方がエネルギーが強いんだ。けれどエネルギーを一気に使うとエネルギーが減り、固形の石として固まるんだ。多分これは海くんの手に付着してた液体だろうね。その証拠にほら、結構小さいだろ?」
「確かに…」
改めて見ると石は小石ぐらいの大きさしかなかった。
「問題はどうして塔子さん達がエイリア石を持っていたかなんだけど…」
「さぁ…でも母ちゃん達二人共ずぼらだから…」
「うーん…」
「でもあの二人の事だから綺麗な石だとか言ってあの研究所から何か拾ってきてもおかしくないよな…」
悲しいかな、誰1人して否定する事が出来ない。
「とにかく海は帰ったら二人にはよく言っておいてくれ。それでどうやったら海は元の時代に帰れるんだ?」
気を取り直した鬼道が改めてヒロトに向きあった。
「簡単だよ。放っとけばまた酸素と化合してエネルギーを溜めるからそしたら石を握って元の時代の事を強く思えば帰れるはずだよ。海くん、アルバム見てたんだよね?中学生の綱海くん達に会いたいって思ったんじゃない?」
「…うん」

図星だった。
父ちゃん達がサッカーが強いのは知っていたけれどやっぱり年を取ったせいで全盛期程力が出せないと言っていた。
だから写真を見た時、この時点の父ちゃん達とサッカーがしたい。
そう思った。

ヒロトはそれを聞くとニッコリと笑った。
「多分2日位すれば元の時代に帰れると思うよ。それまで二人に沢山遊んでもらいな。もう少ししたら二人もしっかりすると思うから」
「…っうん!!」
ヒロトがそう言うと初めて海は笑顔を見せた。


海とサッカーをする為皆は宿舎を出ていった。

残されたのは綱海と塔子の二人だけ。

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