日射病(綱塔)


*エイリア学園偏の道中


それはじめじめとした湿気の多い夏の日ことだった。

「綱海ー、行ったぞーっ!!」

俺達は軽い練習試合みたいのをしていた。
人数も中途半端だからとにかく楽しむ為の息抜きみたいなものだった。

だけどそれは突然に、俺の所にきたボールをカットしようと構えた瞬間起こった。

「おっしゃ!!任せと…っけ…!?」

高く上がっていたボールを見定めようと俺は上を見た時急に目の前が真っ暗になり体が前に倒れるのを感じた。

「わーっ!!綱海ーっ!?」

最後に見たのは心配そうに俺を覗き込む塔子の顔だった。


―ん、なんだコレ…?頭に冷たいものが…それと頭の下柔らかい…。コレスゲー気持ちイイ…―

「ん…」
「あ、目ぇ覚めた?」
目を開けた途端視界に入ってきたのは塔子の顔だった。
「あれ…塔子…?」
「全くビックリしたよー。綱海ってば急に倒れるんだもん」
塔子が眉を下げて少し困った様な顔をした。
「ワリィ…けどなんで俺……っ!?!?」
起きたばかりの時はぼんやりしていて気づかなかったが俺は塔子の膝に頭を置いていた。
所謂膝枕というヤツである。
しかも塔子はユニフォーム姿なので首辺りには塔子の素足が当たっていた。
サーフィンとサッカーしか興味のない俺だがこれでも思春期真っ盛りの中学生男子である。
平然としてられる訳なかった。
「ワ、ワリィ塔子!!」
「え、ちょ…っ」
すぐ起き上がろうとしたがまたさっきと同じ様に目の前が真っ暗になり後ろに倒れた。
塔子は慌てて俺を受け止めた。
そしてまた俺を膝の上に乗せようとしたがそれはさすがに色々とキビしいので遠慮させてもらった。

「頭低くて平気か?…ったく、日射病になってる癖に急に動くなよ…ん、ゆっくりでいいからちょっと起きて。んでちゃんと水分とって。」
「ヘーキヘーキ、サンキュー」
今度は呆れた様に言いながら塔子は俺にドリンクを渡し、俺が飲んでいる間軽く背中を支えてくれた。
十分飲んだ後また寝っころがると塔子は新たに俺の額に濡れタオルを置いた。

―額の冷たいものの正体はコレだったのか…

「って、ん…?日射病…?」
「ん?そうだよ。」
「俺が?」
「そう。ってか今さら?」
「いやいやだって俺沖縄出身だぜ?俺沖縄にいた頃は一回も倒れたことなんかなかったぜ?」
「沖縄と東京の夏って結構違うじゃん。沖縄はカラッとした暑さだったけどこっちの夏ってじめじめした暑さが多いからさ、体が周りの環境に追いつかなかったんじゃない?」
塔子がうちわで俺に風を送りながら淡々と述べて。
「でもよ、だったら北海道出身の吹雪は平気なんだよ?」
「吹雪も辛そうだったけど吹雪はちゃんと水分補給や休憩もとってたからな。綱海、アンタ自分は沖縄出身だからって東京の夏なめてただろ」
「ぐ…っ」
塔子にギロッと睨まれて返す言葉がなかった。
まさに塔子の言う通りだったのだ。
沖縄での夏を過ごしていてわりかし自分は暑さに強い方だと思っていた為少々油断していた。
「はぁ…ったく、これに懲りたらこれからはちゃんと水分と休憩、しっかり取りなよ」
「ハイ…」
塔子が小さくため息をつきながら言うので俺は頷くことしか出来なかった。


「あれ、でもなんで看病してるのが塔子なんだ?他のマネージャーは?」

こういう役目はマネージャーのはず。
塔子だって練習があるだろうになんでこんな事やってんだ?
疑問に思い塔子に聞いてみた。

「なんだよ、あたしじゃ不満だってか?」
「いやいや滅相もない」
塔子が頬を膨らませながら言うのをちょっと可愛いかも、と思いながら俺は慌てて否定した。
「今は皆休憩中なんだよ。だから秋達はドリンクとかタオルの準備で忙しかったんだ。この木陰まで壁山が運んだのはいいけど誰が面倒みるかって話になってそしたらリカが『ほんなら塔子がみとったらえーやん!!』っていうからあたしが看病してたって訳」
「へー。後で壁山にも礼言っとかなきゃな〜。塔子も悪かったな、せっかくの休憩時間だったのに」
俺がすまなさそうに言うと塔子は笑った。
「別にいーって!!それよりもこーゆー場合は謝られるよりもさ、」
塔子が言いたい事がわかったので塔子の言葉を遮って言った。

「ありがとな、塔子!!」
「おぅ!!」



(時に塔子。もう二度と男に膝枕なんてすんなよ!特にユニフォームみたいにちょっとでも足がでるヤツ履いてる時は!!)
(へ?なんで?)
(なんででも!!)

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