昼寝(綱塔)


「よしっ!!休憩だ!!」
「「「はいっ!!」」」

いつも通り円堂達は練習をし、休憩時間となった。
昼休み込みなので普通の休憩時間よりも長い。


「いやー!!食った食った!!」
「でも食べた後ってなんか眠くなるッス〜」
壁山が軽く目を擦りながら言った。
「じゃあ昼寝でもすれば?まだ時間あるし」
「…するとしても木暮くんの傍では昼寝はしたくないッス」
「はぁ!?なんでだよ!!」
「だって絶対寝てる間に顔に落書きされるッスもん…」
「失礼な奴だな!!んなことしねーよ!!…多分な、うししっ!!」
「多分てなんスか、多分て!!しかも木暮くんは前塔子さんに落書きしてたじゃないッスか!!」
「うししっ!!んなもんあんな風に無防備に寝てる奴が悪いんだろ〜!!お前も昼寝するなら気をつけろよ〜」
そう言うと木暮はさっさと退散してしまった。
「…やっぱり昼寝はしない方がいいッスね…」
「お前も大変だなぁ壁山!!」
「笑い事じゃないッスよ綱海さん!!」
綱海が壁山を軽く小突いた。
「わりぃわりぃ。まぁ海の大きさに比べたらちっぽけな事だろ!!」
綱海が余りにもあっけらかんと言うので壁山は毒気を抜かれてしまった。
「綱海さん…」


綱海は壁山と別れた後食後の運動として少し歩いていた。
すると木に寄りかかって休んでいる見知った人影を見つけた。
「塔子…?」
そう、それは塔子だった。
「おーい、こんなとこで何し、て…」
綱海は呼び掛けながら近づくが途中で言葉は途切れてしまった。
なんと塔子は寝ていたのだった。
「マジかよ…おーい塔子ぉー?こんなとこで寝てると風邪ひくぜー?」
「ん―…ん…すぅ…すぅ…」
綱海は半分呆れながらも塔子の肩を揺するが塔子は少し身動ぎしただけで起きる気配は見せなかった。
「どーすっかな…」
そんな時綱海にさっさの木暮のセリフが頭に浮かんだ。

―んなもん無防備に寝てる奴が悪いんだろ〜!!―

あの様子だとまた寝てる奴がいたら顔に落書きでもするだろう。
しかも塔子は以前その被害を被っている。
(この塔子を見たら木暮の格好の餌食だな…かと言って起こすのもなんか可哀想だし…でもこのままだと風邪ひくだろーし…てかホントこいつ無防備だな…)
綱海は思わずまじまじと塔子を見つめた。
(よく考えたらこいつって結構スゲーよな〜。こんなにちっこくて細いくて、しかもこいつ総理の娘って事はかなりのお嬢様って事だろ?なのに男達に混ざって、しかもエイリア学園を倒す為に地上最強のチームの一員って…スゲーよな〜)
自分もその一員だし大海原中やこの雷門イレブンには塔子と同じように女子の選手はいる。
けれど塔子はかなり早い段階からこのキャラバンに参加し、なおかつ弱音を吐いてる所を見たことがない。
また塔子の持っているDF技は敗れた時に一番リスクが高い。
なのにこいつは躊躇うことなくボールを取りに行っている。

―やっぱりこいつはスゴい―

「ふぅ…しょーがねーなぁ」
綱海は暫く思案した後軽く苦笑いしながら自分の着ていたジャージを脱いで塔子に掛けてやり、綱海も塔子の隣に腰を下ろした。
(まぁ俺も一休みしたかったしちょうどいいか)


(あれ〜?綱海さんどこ行ったんだろ…)
他のメンバーがまだ休憩時間なのにも関わらず既に練習を再開していた為立向居も余った時間でまた必殺技の特訓に付き合ってもらいたいと思い綱海を探していた。
(この辺りにも居なかったら他の人に付き合ってもらおうかなぁ…)
そう立向居は軽く溜め息をつきながら曲がり角を曲がろうとしたが、

「!?!?」

立向居は思わず木陰に隠れた。
その曲がった先には綱海と塔子が仲良くお互いに寄り添いながら木に寄りかかって寝ていたのだ。
その二人の雰囲気はただのチームメイトというには少し濃密で、かと言って恋人と言うには淡すぎる、ほんのり甘い雰囲気を出していた。
(え、あれ!?綱海さんと塔子さんって恋人…じゃないよな!?けどなんか…あれ〜!?)
立向居がその場に立ち往生して顔を赤くしながら焦っていると、

「ん〜?」
「!!」

綱海が目を覚ました様だった。
「あれ…いつの間にか俺も寝ちまったのか…と、うわっ!!塔子!!…なんか甘い香りすると思ったらこいつだったのか…って、あれ?立向居?」
「!!」
綱海は自分の肩にいつの間にか寄りかかっていた塔子に若干驚きながらも体勢を変えたりせずにその状態を維持していると木陰に隠れている立向居に気がついた。
立向居は隠れたつもりだったが綱海のいる場所からは立向居の姿がちょうど見える場所だったのだ。
立向居は綱海に見つかり出ていくべきなのかこのまま隠れ続けるべきなのか数秒悩んだが綱海の前に姿を現した。
「…すいません、邪魔するつもりじゃなかったんですが…」
「別に邪魔なんかじゃねーよ。なんだ、もう練習始まってんのか?」
綱海は塔子を起こさない様に静かに伸びをしながら聞いた。
「い、いえ!!円堂さん達は自主練してますがまだ休憩中です!!」
「そうか…」
そう言うと綱海は塔子の顔をじっと見た。
その間立向居はなんだか自分が場違いな気がして居心地が悪かった。
「なら…」
「は、はい!?」
「なら練習が始まったら悪ぃけど迎えに来てくんねぇ?このままこいつ置いてくのも可哀想だし、こいつもうたた寝すんなんてよっぽど疲れてたみてーだから休ませてーんだ。いいか?」
「は、はい!!」
「サンキューな、立向居!!」
「い、いえ!!では先に失礼します!!」
そう言うと立向居は疾風の如くその場から逃げだした。
これ以上その場の雰囲気に耐えられなかったのだ。

「なんだぁアイツあんなに急いで…」
「ん〜ん…」
「おっと」
綱海が立向居の行動に呆気にとられていると塔子がまた身動ぎして頭がずり落ちそうだったので慌てて塔子を支えた。
「あっぶね…さて、と…俺も立向居が迎えに来るまでもう一寝入りすっか…」
そう言って綱海はまた眠りについたのだった。
仲良く再び塔子とお互いに寄り添いながら。


一方、立向居と言えば、
「あれ?立向居、綱海を探しに行ったんじゃないのか?見つからなかったのか?」
円堂が一人で戻ってきた立向居にそう聞くと立向居は急に顔を赤くして、
「み、見てません!!塔子さんと一緒に寄り添って寝ていた所なんて見てません!!」
と首が引き千切れるくらい横に振った。
円堂はそうか?、と言って大して気にも止めなかったが運悪くそれがリカの耳に入り、立向居と戻ってきた綱海と塔子がリカに激しく問い詰められたのは言うまでもない。

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