夏(綱塔・大人)


 ―ある夏の日のこと―

綱海と塔子は綱海の家で二人してダラダラとしていた。

「なぁ〜つなみぃ〜」 
「ん〜?どうした塔子〜?」
「あつ〜い」
「夏なんだからこんなモンだろ〜。あ、確か冷凍庫にアイスあった気がする。食えば?」
「ほんと?んじゃもらう。綱海は?」
「じゃあ俺も。」
「わかった。」

トタトタ… 

塔子は台所に行ってアイスを二つ持ってきた。
「ん。」
「おー、サンキュー。」


「なぁ〜つなみぃ〜」 
「んぁ〜?今度はなんだ〜」
再び二人してダラダラしているとまたもや塔子が話しかけてきた。
「なんかさ〜デキたみたいなんだよね〜」
「へ〜できたって何が〜?」
「だから〜赤ちゃん。」
「へ〜。そりゃ〜スゲーなぁ〜」

  「「…………」」

「…は?…塔子お前今なんつった?」
「だから赤ちゃんが出来たって言ってんじゃん。ちゃんと聞いとけよ。」
「……っはぁぁぁ!?」 
「うわっ!!ビックリした〜。驚かせんなよ。」 
綱海が急にガバッと起き上がった。
「ビックリしたのはこっちだよ!!なんでそんな大事な事を今!!この状況で!!言うんだよ!?…っは!!まさか今日エイプリルフールか!?」
「暑さで頭までやられたのか?ってかだったらどんな状況ならいーのさ?」
一人大騒ぎしている綱海とは対照的に塔子は冷静だった。
「う…いやそう言われると俺もよくわかんねーけどさ、お前完っ全に!!さっきの『あつ〜い』と同レベルで言っただろ!!こんな大事な事をあたかも日常のひとコマみてーに言うな!!」
「んなことは海の大きさに比べたらちっぽけなことだろ〜」
「それ俺のセリフ!!」
あっけらかんとしている塔子を見て、はぁ、と大きなため息をついてなんとか落ち着いた綱海は改めて塔子に聞いた。
「え、じゃあなに?……マジなのか?」
「そーだよ。……もしかしてイヤなの「すっげーっっ!!」…うわっ!!」
綱海が塔子に勢いよく抱きついてきた。
「すっげー!!ほんとに俺らの子供がいんのかよ!!すっげーな塔子!!……腹触ってもいいか?」
綱海が目を輝かせながら塔子に聞いた。
「綱海ってばさっきからすげーしか言ってないよ…いいけどまだ三ヶ月だから全然変化もないよ。」
塔子はさっきとは違う意味ではしゃいでいる綱海が少し可愛くて笑ってしまった。
「かまわねーって!!…んじゃ…」
綱海が恐る恐る塔子のお腹を触った。
「ははっ…いるんだよなここに。俺達の子が…」
「うん…」
「信じらんねー。夢みたいだ。…俺父親になるんだな〜」
綱海が苦笑しながら言った。
「しっかりしてよねパパ。」
「おう。……大切に育てような。」
「うん!!」
綱海がさっさとは変わって太陽のような笑顔を向けてきたので塔子も同じように笑顔で応えた。


「俺塔子の親父さんに殺されるかもな〜」
「なんで?」
綱海が塔子のお腹を撫でながら言った。
「だってこんな形で大切な一人娘奪っちまうんだぜ?『塔子は渡さない!!』とかって言われたらどーすっかなー」
「怖じけづいた?」
塔子がニヤニヤと笑いながら綱海に問いかけた。
「いや?そーなったら許してくれるまで粘るしかねーなー……あっ!!そうだ肝心な事忘れてた!!ちょっと待ってろ。」
「?うん?」
そう言うと綱海は急いで自室にいったかと思うとすぐに戻ってきて塔子の目の前に座った。
「どうしたんだよ綱「塔子手ぇだせ。」…へ?」
塔子の問いには答えず、綱海は真剣な表情で言った。
「なんだよなんかくれるのか?」
「あぁ〜、まぁそんなとこだ。いーから早くだせって。」
「?うん。」
塔子は不思議に思いながらも何をくれるのかと期待しながら大人しく右手をだした。
「……なんで右手なんだよ。しかも手のひら上にしてるし…」
「は?何言ってんだ?手のひら上にしなきゃ何をもらうにしろ受け取れないだろ?」
「はぁ…俺の言い方が悪かった。だからな、右じゃなくて、」
「うん?」
「んでこっちが上。」
綱海はそう言いながら塔子の左手を持って手の甲を上にした。
「塔子。順番が逆になっちまったけど…」
「これ…」
綱海は塔子の左の薬指にシンプルだが小さなダイヤがついている指輪をはめた。
「俺と結婚して下さい。」綱海は塔子の目を真っ直ぐ見て言った。
「………」
「…塔子?」
「…はっ!!悪い悪い、綱海がこんなことするとは思わなくてさ。少し呆けてた。でもいつの間にコレ用意してたんだ?」
塔子が目を頭輝かせながら綱海に聞いた。
いつも男勝りな塔子だがやはり女なだけあって綺麗なモノは好きなのであろう。
指輪に目が釘付けだった。
そんな塔子も可愛いなと思いながら綱海は答えた。
「…もともとそろそろ言うつもりだったんだよ。まかさこんな状況で言うとは思わなかったけどよ…それで?返事は?」
返事を催促する綱海に対して塔子は急にさっさまで喜んでいたのに目線を下げて躊躇いがちに言った。
「…こんな状況で言うのもあれなんだけどさ、あたしは政治家の娘だよ。あたしと結婚するとなると綱海も色々言われるかも知れない。それでもいいのか?」
「そんなのカンケーねーよ。」
「え、」
キッパリと言い切る綱海に塔子は顔をあげた。
「俺は塔子だから一生一緒にいたいと思ってるんだ。政治家の娘とかカンケーねーだろ。」
綱海はさも当然かのように言った。

―あぁ、こいつはあたしをあたしとしてだけ見てくれる。その上であたしと一緒にいたいと思ってくれる―

「おーい、塔子ー?」
塔子がずっと黙っているのを不審に思い綱海が声をかけた。

―こんなヤツだからこそあたしはこいつと―

ぎゅっ
塔子が綱海に思い切り抱きついた。
「と、塔子?」
「へへっ…これからもよろしく。ずっと一緒にいような!!」
「!!…おぅ。」
綱海も優しく塔子の背中に腕を回した。

―パパとママは幸せです。だから早くキミも生まれておいで―



(てな訳でこれから激しい運動禁止だからな!!サッカーもだぞ!!)
(え〜いーじゃん少しぐらいなら〜綱海のケチ〜)
(塔子にも子供にもなんかあったらどーすんだ!!……てかお前も綱海になるんだからそろそろ下の名前で呼べよ。)
(あ、そっか。じゃあえっと……ってあれ?綱海の下の名前ってなんだっけ?)
(ヒデェェ!!)

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