勉強会(綱塔)


エイリア学園との戦いも終わり、平和が訪れたかの様に見えたが、やはりイナズマキャラバンの皆も所詮は中学生。
大きなな問題が残っていた。


「あの〜監督…これなんですか?」
「見ての通りあなた達がエイリア学園との戦いで休学していた分の補習プリントよ。各学校から送ってもらったの」
「…多すぎじゃありません?」
「そうかしら?」
円堂達の目の前には学校によってわずかの差はあるものの、例外なく50センチ以上のプリントや冊子が積まれていた。
「いくら学校から許可を取って学校を休んでいるとはいえ、あなた達の本業は学生よ。かなり他の人達に遅れをとっているからね、この三日間であなた達にはその遅れを取り戻してもらうわ。因みにコレ、1日分だから」
「これが1日分!?」
「そうよ」
「いくらなんでもこれは「何か言ったかしら」…イエナンデモアリマセン」
「そ?じゃ皆頑張ってね」
こうして皆にとって地獄とも言える三日間の勉強合宿が始まったのだ。が、


「ん〜ん?これがこーなって?んん?〜〜っあぁもーっ!!わっかんねー!!」
「だからな円堂、これはこの公式に代入して…」
「豪炎寺さーん!!ここ教えて欲しいッス〜」
「ウッシッシ!!」
「こらーっ木暮くん!!大人しく勉強しなさい!!」
頭がちょっと残念な人が多く(主に円堂だが)、なかなか進まなかった。

それでも一年は二年に聞いたり同級生同士お互いに聞きあったりして皆少しずつではあるがプリントは減っていった。
ただしある一人を除いてだが。


「ん?どうしたんだ綱海?」
既に自分の課題を終わらせた塔子は春奈にわからない所を聞かれ、一通り教え終わった後たまたま綱海が目に入ったのだが綱海は机に突っ伏していた。
「おーい、綱海ー?どうしたんだー?」
「塔子〜俺どーすりゃーいーんだー?さっぱりわかんねーよ〜」
「ハァ?」
綱海は塔子につつかれるとゆるゆると顔をあげるが、ほぼ半泣き状態だった。
塔子が綱海のプリントを見るとわずかにしか解答欄が埋まってなかった。
「おいおい綱海こんなのもわかんないのかよ…これ基礎中の基礎じゃねーか」
「わかんねーモンはわかんねーだよ〜…中三俺しかいねーから誰かに教わる事も出来ねーし……って!!塔子!!お前もしかして分かるのか!?」
綱海はバンッと机を勢いよく叩いた。
「ん?まぁね。あたしほら、SPで学校休む事多いから家庭教師やってもらってんだよ。時間があればかなり一気に毎回内容進めてるから中三どころか高一、二年ぐらいだったらだいたい分かるよ」
「はぁ!?マジかよ!?」
「マジマジ。教えてやろっか?」
「塔子ー!!」
「うわぁっ」
ドッターン!!
綱海は感激のあまり、塔子に勢いよく抱きつき、勢い余って塔子を押し倒してしまった。
綱海は塔子の頭をぐりぐりと撫で回しながら、
「塔子ー!!マジサンキュ!!いやー持つべきものは塔子だな!!」
「分かった、分かったから重い!!早くどけ!!」
「わ、悪ぃ」
綱海は起き上がってヘヘッと頭をかいた。
「たくっ…言っとくけどあたしかなりキビシーからな、覚悟しとけよ!!」
「おぅっ!!よろしくな塔子センセー」


ー十分後ー
「おい…綱海…」
「ん〜?」
「お前…集中力切れんの早すぎだろ!!」
塔子は怒りのあまり机をバンッと叩いた。
綱海は既に集中力を切らし、なかなか課題が進まなくなってしまったのだ。
「だってよ〜俺頭使うの苦手なんだよ〜一夜漬けみたいにガッと覚えるのは得意なんだけどな〜まぁその後すぐに忘れるんだけどな」
またもや机に顎を乗せ、ぐでーっと気の抜けた状態で綱海はアハハと笑いながら言った。
「おいおいどうすんだよ…お前だけだぞ、これしか進んでないの」
他の皆は既に五分の一、早い者は三分の一を終わらしているのに対して綱海はまだまだ十分の一も終わってなかった。
「ん〜…あ!!ならこれ全部終わったらなんかご褒美くれよ!!」
「ご褒美ィ?」
塔子は綱海の言葉を聞くとあからさまにハァ?という顔をした。
「おぅ!!やっぱ何でもご褒美があれば頑張れるだろ?」
「それはそーかもだけどな、なんであたしがわざわざ綱海に褒美をあげなきゃいけないんだよ」
綱海はキラキラした顔で塔子に言うのに対して塔子の目は冷たかった。
「そこをなんとか!!俺を助けると思ってさ、な?」
そう言うと綱海は正座をし、両手をパンッと合わせて「お願い」のポーズをとった。
「…だいたい、ご褒美って何がいーのさ?」
綱海のあまりの態度の豹変ぶりに塔子は綱海の言う「ご褒美」が気になり尋ねた。
「それはこのプリントが終わった後に言うからさ、な?」
「…それ、あたしじゃなきゃ駄目なのか?」
「勿論!!」
「…変な事じゃないだろうな?」
「おぅ!!」
暫く塔子は綱海を見つめて…というか睨み付けていたが綱海の気迫に負けたようで、
「…わーったよ。その代わりちゃんとやれよ?」
とため息混じりに答えた。
「よっしゃーっ!!じゃ早速ここ教えてくれよ!!」
綱海はガッツポーズすると急に態度を改めて真剣に取り組んだ。
「はいはい…」
(まったく…今度はいつまでこの集中力が続くんだか…)


しかし塔子の予想に反して綱海の集中力は思いの外続き、既にに残り後5ページ程になった。

カリカリカリ…
「〜〜っよっしゃー!!終わったー!!」
「お疲れ。けどな綱海、だったら最初からこんぐらい集中力続かせろよ」
「いやいやご褒美の為だからな!!」
「あぁ、そーいやそんな話だったっけ」
塔子の顔にはすっかり忘れてたというのが現れていた。
「ヒデェ!!俺こんなに頑張ったのに!!」
「悪い悪い、で?あたしじゃなきゃ駄目ってゆー『ご褒美』ってなんだ?」
「それはなー」
「?」
綱海はニヤリと笑ったかと思うと塔子の肩を抱いて、

ちゅっ

「…これが俺にとっての『ご褒美』。んじゃ俺このプリント監督に出してくるわ〜」
そう言うと綱海はさっさとプリントを持って監督の所へ行ってしまった。
呆然としている塔子を残して。

(えーと…今なんかやらかいモノが口に触れたような…とゆーか、これが綱海にとっての『ご褒美』??…〜〜っあぁもう!!なんかよくわかんねーっ!!綱海のヤツ何考えてんだ!?)
塔子は突然起きた出来事に頭が追いつかず頭を抱えた。

ー……でもなんでだろ、

  嫌じゃ、なかったなー

(なんで嫌じゃないんだ?)
塔子は綱海の『ご褒美』によって自分の感情に暫く頭を悩まされることになった。


一方綱海は…
(ついあんな事しちまったけど塔子怒ったねーかなぁー…まぁ後悔してねーからいっか!!)
あくまで楽観的に物事をとらえ、ただしたかったらしたという風にしか考えてなかった。

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