花見(綱塔)


ーある日の公園にてー

「のどかですね〜」
「そうね〜」

「こらーっ!!待ちなさい木暮くん!!」
「やーだよっ!!ウッシッシ!!」
「サッカーやろうぜ!!」
「このご飯おいしいッス〜」

前言撤回。
のどかではありませんでした。


今日は皆で花見に来ていた。
「まだまだお代わりいけるッス〜」
「壁山はホントに花より団子でヤンスな〜」
「なぁなぁサッカーやろうぜ!!」
「円堂…今日ぐらい大人しくしてろ」
「えぇ〜」
花見と言ってもやはりここは雷門イレブン、大人しく花見をしている人なんて数える程しかいなかった。


「オーッス塔子!!食ってるかー?」
「綱海…お前いくらなんでも一応花見なんだから両手に食い物抱えるのやめろ…」
その数少ないまともな花見をしている塔子の傍に両手に色々な食べ物を持った綱海が塔子の隣に座った。
「なんだよ〜壁山よりはマシだろ〜?」
ホレ、と綱海が指さす方を見ると壁山は新たな重箱を抱えていた。
「まぁ、な」
「それに俺はわざわざ花見なんかしなくても毎日の様に桜見てるしな〜」
もぐもぐと食べながら綱海は言った。
「はぁ?何言ってんだお前?」
明らかに訝しげる塔子に対して綱海はニカッと笑いながら塔子を指さした。
「だって俺いつも塔子のこと見てるからな!!」
「…はぁ?」
何言ってんだコイツ、というのが塔子の顔に表れていたのだろう。
綱海はなんでわかんねーんだ、という顔で、
「だからぁー塔子の髪!!ピンクだろ?塔子を見てれば一年中花見が出来るぜ!!」
グッと親指を立てながらいい顔で綱海は言った。
塔子は暫く呆気にとられていたが急に笑い出した。
「…ッハハハ!!…それを言うなら綱海だろ?綱海の方が綺麗な桜色じゃん!!」
「ん?じゃあ塔子も一年中花見が出来るな!!」
「アハハッそうだな!!」
そうして二人は暫く笑いながらとりとめのないことを喋っていた。


「ん?アレ何やってんだ?」
アレ、と綱海が指さした方では桜の木の下で女の子が何か空中で掴もうとしていた。
「さぁ…?……あぁ!!そういえばさっき秋達が『桜の花びらを掴めると願いが叶う』とか言っていたなぁ…それじゃないのか?」
「へぇ〜面白そうだな!!…よっしゃ塔子、勝負だ!!どっちが先に掴めるか!!」
「おっしゃぁ!!じゃあよーい…スタート!!」
そうして二人は一見怪しそうな行動を、つまり桜の木の下で手をパン、パンと叩くという行動を暫く行っていた。

「くっそーっ!!難しいなコレ!!」
パンッ
「だなぁ〜」
パンッ
パンッ、パンッ…
パンッ
「あ、とれたぁ!!」
「ゲッ!!マジかよ!?」
ついに塔子が一枚の花びらを手にした。
「へっへっへ〜どーだ参ったか!!」
「くっそ〜俺も惜しいとこまではいってんだけどな〜…で願い事はどーすんだよ?」
「あぁ!!そーいやそーゆー話だっけ」
塔子は花びらを掴むということに夢中になってしまい、すっかり願い事の事を忘れていた。
「ん〜…よし、決めた!!」
暫く塔子は唸っていたがついに決めたようで手をポンッと叩いた。
「お?何にすんだ?」
塔子はヘヘッと笑いながら、
「綱海とまたサッカー出来ますように!!」
「へ?」
まさか自分との事を願い事にされると思ってなかった綱海は思わずまぬけな声を出してしまった。
「だぁーかぁーらぁーまた綱海とサッカーしたいっつってんだろ?…ほら、今回はたまたまあたしも綱海もここにいるけど本来ならあたしは東京、綱海は沖縄だろ?必然的にそう簡単には会えなくなる。だからあたしの願い事は綱海とまたサッカー出来ますように、ってね!!」
「へぇ〜」
「なんだよ、綱海は違うのか?」
塔子の願い事を聞くと綱海は塔子に背中を向けてしまった。
少し不安になった塔子は少し拗ねた口調で綱海に問いかけた。
「んな訳ねーだろ!!『パンッ』よっしゃ掴めた!!」
「?」
綱海はさっきまで苦労していたのが嘘のようにあっさりを花びらを掴み、その掴めた花びらを塔子の見せながら、
「じゃあ俺の願い事は塔子に沢山会いに来る、だ!!」
そう自信満々に綱海はいいながらも少し顔が赤かった。
「…綱海、顔赤いぞ?照れてるのか?」
綱海のいきなりの態度に呆気にとられたが綱海が少しとはいえ顔を赤くしているのに気がつくと塔子はニヤニヤと笑いながら綱海に尋ねた。
「う、うっせー!!お前があまりにもなぁ!!」
綱海は更に顔を赤くして何かゴニョゴニョと言っていたが幸か不幸か塔子には聞こえなかった。
「?なんて言ったんだ?」
「なんでもねぇ!!とにかく!!俺の願い事は『塔子に沢山会いに来る』だ!!」
「いや、会いに来るって願い事じゃなくて決意じゃん」
「んなもん海の大きさに比べればちっぽけなことよ!!」
「はいはい」
綱海の相変わらずの口癖に塔子は肩をすくめた。
「つまりだ!!んなもん願う程でもねぇ!!俺が叶えてやる!!」
「……アハハッ!!綱海らしいや!!じゃあ約束な、またサッカーやろうぜ!!」
「おぅ!!」

ーこうして二人だけの約束がここに成立したのであったー



「二人にもやっと恋の季節がやって来たんやな〜」
「でも私、あれって恋が叶うっていうヤツだって聞いてましたけど…」
「鯉?」
「違うよ円堂君、魚の鯉じゃなくてね…」
「無駄だ吹雪。円堂にはまだ早い」
「どーゆー意味だよ鬼道!!」
「そーゆー意味だ」
「多分元々は願い事だったんだけどやっぱりあれやってるのって女の子ばかりじゃない?でも女の子が願うのって恋のことが多いから春奈ちゃんが聞いたような恋が叶うっていうのになったんじゃないかしら」
「まぁあの二人も他の人からみれば恋の願い事している感じだしね〜」
「綱海はともかく塔子は全く意識しないで言ってるだろ」
「二人はいつになったらくっつくのかなぁ」
「「「全く本当にもどかしい…」」」

実は傍で綱海と塔子の話をかなり早い段階から聞いていて面白がっていたイナズマイレブンの皆であった。


ーこれは桜が満開のある日のことであったー

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