きっかけはミニスの、「デートに行くのにそんな格好じゃ駄目だよ!」だった。

即座にデートという部分は訂正したのだが(ルヴァイドに一緒に出かけないかと誘われただけだ。そう言ってもミニスは相変わらずそれはデートだと言い張っていたんだけれど。)そのあとミモザさんに部屋に引っ張り込まれることになり、小奇麗な服を貸してもらえることになったのだ。

さらにそうしているうちにどこからこの話を聞きつけてきたのか、いつの間にか事が少し大きくなって、パッフェルさんが薄く化粧をしてくれることになり、カイナが髪を纏めてくれた。

確かにこのような気遣いはありがたいのだが、やはり慣れない格好をするのは恥ずかしいし、単に買い出しに付き合うだけだというのにこのような格好で出て行ったらルヴァイドに変に思われないだろうかと不安である。

先程玄関を出る前に廊下でフォルテとシャムロックとすれ違ったのだが、おお、名前じゃねえか、と驚いた声で話しかけてきたフォルテは話している間終始にやにやしているし、シャムロックは無言で固まってしまうしで、その不安はさらに増大することになった。

そんなに、変、だろうか。

そしてかく言う肝心の彼も、今、私の目の前で頬を紅く染めて片手で口元を覆っているのだが…。だめだ、絶対に変だと思われたに違いない。

「別に、笑うなら笑ってもいいですよ。」

不安と恥ずかしさを誤魔化すようにできるだけつんとした声で言うと、笑うものか、と少し声を大きくして言ったルヴァイドと目が合った。

「綺麗だ、とても。」

そうルヴァイドが嫌に真剣な声で言うものだから、柄にもなく、不覚にもどきりとしてしまった。お世辞だと自分に言い聞かせてみても舞い上がりそうになる気持ちを自分ではどうも抑えることができない。

だって、よもや彼の口からそのような言葉が聞けるとは思わなかったものだから。名前はそこでようやく彼女たちに心から感謝した。


迷走シンデレラ


(ただしこの魔法は1日しか持ちません。)