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右手にひとつ、左手にひとつ。少し買いすぎてしまったかな、とも思える荷物はやはり名前ひとりで抱えて帰るには少し多く、大きなふたつの紙袋はか細い名前の腕には明らかに不相応。名前はただそれらを落とさないように抱えておくことだけで必死だった。足取りはふらふらとおぼつかないが、周りに気を遣っていられる状態でもない。
「まあ、こうなることは目に見えていたがな。」
「あらやだ、ルヴァイド、ちょうどいいところに。」
正面から聞こえた声に向かって名前が荷物の影でにこりと微笑むと同時に、無粋な顔をしたルヴァイドが名前の腕の中にあった荷物をひったくるように奪い取った。途端に名前の視界が開け、先程まで自分が抱えていた荷物を抱えたルヴァイドが視界の真ん中に映る。
「あ、ひとつは持つよ?」
「別に構わん。俺だけで持てる。」
「だめよ、半分。」
言いながら名前がルヴァイドの左手にあった方の紙袋をひったくり返す。それを見てルヴァイドは何か言いかけたが、開けかけた口を思い直したように噤むと目線を彼女から前へと戻し、先にすたすたと歩き始めた。
それを追いかけるように慌てて名前も歩を進め、ルヴァイドの隣に並ぶ。
「ねえ、ルヴァイド、」
「何だ?」
「手、つないでいい?」
唐突な彼女の申し出にルヴァイドのきょとんとした顔が名前を向く。まじまじと彼女を捉える彼の両眼にそのうちなんだか無性に恥ずかしくなってきて、名前はたまらずにぱっと顔を逸らした。
「どうしたんだ、急に。」
「別に、ただ、なんとなく。」
だんだんと小さくなっていく名前の声。その珍しい彼女の反応を十分に楽しんでおいてから、ルヴァイドはくすりと微笑むと答える代わりに空いていた左手で名前の右手を取った。
ゆびさきに憧憬
(ただ、貴方の片手が空いていたから。)