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- ナノ -

3章

11


 
※フェラのみ


「梢……」
「ごめん、今生理……」
「あ、ごめん」

部屋に呼んだ梢を押し倒そうとしたら申し訳なさそうにやんわりと押し返された。今まで何だかんだ被らなかったけど、そうか、そうだよな……そういうこともあるのか。全然頭になかった。どうしよう、やる気満々で来てしまった分少し辛いものがある。早くこの欲にまみれた煩悩を振り払わなければ。

「外出る?」
「ううん、あのさ……その……」
「?」
「もし、京治くんが良ければなんだけど……今日は、私が……」
「……!?」

耳を疑った。


***


「ん……」
「っ……」

梢が俺の足の間に入って、俺のものを口に含んでいる。やばい。色んな意味でやばい。舌特有の生温かくてざらざらとした感触はもちろんだけど、それ以上に視覚的にクるものがある。意識して我慢しないともっていかれそうになる。耐えろ俺。早漏だと思われたくないし何よりすぐ終わってしまうのは勿体ない。

「……気持ちよくない?」
「ううん、気持ちいい」
「本当?」
「うん」

俺の反応が薄いことが気になったのか、梢が不安げに見上げてきた。無自覚って恐ろしい……自分が今どれだけ俺の理性を刺激してるかなんて絶対わかってないんだろうな。

「でもちょっと罪悪感があるというか……」
「?」

今まで行為の中で俺が梢にフェラを要求したことはない。梢はそういう知識に疎いと思っていたし、いつも俺が与える快感を受け入れることに精一杯に見えた。俺も別にそこまでしてほしいとは思っていなかった。だって、綺麗とか可愛いとかお世辞にも言えないこんなものを梢に舐めさせるなんて……

「悪いことしてるみたいで」
「そんなことないよ、好きでやってるんだよ」
「……」
「……」

梢は俺のことをフォローするために言ったんだろうけど、なんか結果的にすごい痴女みたいな発言になってしまった。本人も後から気付いて顔を真っ赤にしている。梢ってこういうこと多いんだよな……本当に可愛い。

「これするの、好きなの?」
「ち、違……!」

真っ赤になって焦る梢を見ていると胸の奥がむずむずしてきてつい意地悪をしたくなる。小学生や中学生の頃は好きな女の子をいじめる男の気持ちがわからなかったけど、最近になってようやくその心理がわかった。一般的な男心を逆行している俺ってそこそこ変態なのかもしれない。

「行為自体が好きなんじゃなくて、京治くんが嬉しいって思ってくれることが……!」

弁解をしようとすればする程梢は墓穴を掘っていく。そして俺を喜ばせる天才だ。

「なに? 最後まで言って」
「わかってるよね?」
「言ってくれたらすごく嬉しい」
「ず、ずるい……!」

ここまで言ってくれたんだったら全部聞きたい。俺に喜んでもらいたいのなら、その続きを言ってくれるだけで十分だ。

「京治くんに、いっぱい気持ち良くなってほしい」
「!」

しかし梢は、意地悪して言わせたことを俺が後悔するくらいの攻撃力でぶん殴ってきた。これもよくあることだ。いくら脳内であれやこれや画策してみても、俺は一生梢に敵うことはないんだろう。それでいい。その方が幸せだと思った。

「は、ん……」
「っ、気持ちいい……」
「んっ、うん」

俺のものがビクっと反応したのを見て、再び梢が硬さを増したそれを口に含んだ。梢が心配しないようにしっかり気持ちいいと伝えると、梢はもっともっと俺に快楽を与えようと動いてくれた。こんな健気な姿を見せられてグッとこない男がいるわけがない。技術的にどうとかは関係ない。好きな人が俺のことを想って俺のためにしてくれてるってことが、実際の快感を何倍にも増幅させた。

「梢、ダメだ、もう……」

出そうだ。流石にAVみたいに口の中に出すわけにはいかない。梢の肩を押してやめさせようとするけど、梢はそれに応じなかった。

「このままいいよ」
「ッ……!!」

聴覚と視覚と感覚で逃れようのない追い討ちをかけられて、結局梢の口の中に出してしまった。余裕のない嗚咽も聞かれたし情けなく下半身が震えたのも見られた。大きな羞恥心の波が押し寄せてきたけど、それよりもずっと大きな幸福感の波がすぐに飲みこんだ。梢はかっこ悪い俺も情けない俺も受け入れてくれる。きっとこれは俺の幻想なんかじゃなくて事実だ。それがわかっているからこそ、梢には全部を見せてもいいと思えた。

「ん、むう……」
「ッ、ごめん、出していいから」
「うん……」

余韻に浸っていたら口元を押さえて苦しそうにする梢に気付くのが遅れてしまった。こんなの美味いわけがない。飲み込めずに困ってるんだとわかって慌ててティッシュを手渡すと、梢は素直にそれを受け取った。

「にがい……」
「……!」

ちょっと飲まれたという事実にまたたまらなくなった。少し気まずそうに口元を拭う梢をしっかりと目に焼き付けて、今日与えて貰った感覚を今度は倍にして返してやろうと心に決めた。


***


毎週水曜日はお互いに授業が早く終わるからデートするのが暗黙の了解になっている。今日は昼間から俺の部屋で借りてきたDVDを一緒に観ることになった。

「ぐすっ」

感動のラストシーンを迎えてエンドロールに入ると、隣から鼻をすする音が聞こえた。梢は比較的涙もろい。特にこういうヒューマンドラマとか動物系に弱い。

「ティッシュ使う?」
「うん……」
「拭いてあげようか」
「い、いいってば。見ないで」
「ん?」
「も、もー!」

抵抗する梢の手を、背もたれにしてたベッドに押さえつけて目元にキスをした。しょっぱい。言うことを聞かない俺に梢は怒ったそぶりを見せたが可愛いだけだ。
交際も2年目となり最初の頃と比べたら甘えも出てきた。最近は嫌がる梢が可愛くて意地悪したいと思うことが多い。

「ねえ」
「ん?」
「夏休みさ、海行こうか」
「! うん、行きたい!」

今日見た映画の撮影地は沖縄。海がすごく綺麗で、この風景を梢と一緒に見られたらいいなと思った。映画を観たり本を読んだりすると梢と行きたいところがどんどん増えていってしまう。
勢いよく頷いてくれた梢を見たら幸せな気持ちが溢れてきてキスをした。キスをしたいと思った時に好きな人にキスができるなんて幸せだ。

「そういえば、この前はありがとう」
「え? 私何かしたっけ?」
「うん。いっぱい気持ち良くしてもらったから……」
「!」
「今日は頑張ります」

あれはあれでいい経験をさせてもらったけど、どうやら俺は与えられるより与えることの方に幸せを感じるみたいだ。

「ほ、程々で……!」

梢の肌の温もりを感じながら、バイト頑張ろうと改めて決意した。



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