( そもそも季節という概念はあるのか )



「れーちゃん夏祭り行こう夏祭り!」
「はあ?」
「浴衣ー!」
「おまえ夏祭りの意味わかってる?マフラー巻きはじめの時期に言う台詞じゃねえよ。それか来年の約束してーの?」
「だって、」
「ん?」

零原のツッコミにしょぼんとしながら一枚の紙切れを見せる一ノ瀬。その紙切れには『夏祭り!今年最後の感動を君に!』と書かれたいた。その見出しのしたにはかき氷やクレープのイラスト。そして『開催日時今週金曜日15時より一ノ瀬家にて』とも。

「意味わかんねぇよ」
「毎年やってる」
「いつこれ持ってきたんだよ」
「下駄箱に入ってた」
「なんでだよ」

頭を抱える零原。一ノ瀬の意味不明っぷりが血筋だと実感した瞬間だった。

「ね、いこ?」
「いや、いこっつうか、おまえは帰るっつうか、なんかもう俺が間違ってる気がしてきた」
「うん?」
「毎年やってんの?」
「やってる。家なんか夏忙しいみたいだから、いつもこの時期に夏祭りやってる」
「秋祭りでいいじゃねえか」
「えー!焼もろこしとかかき氷とか食べたいもん!浴衣着たいもん!」
「そーかそーか。楽しんでこいよ」
「れーちゃんも行くの!」
「なんでだよ!明らかに家族水入らずの企画だろーが!」
「結構近所の人とかくるよ」
「えらい本格的だな!つーか逆に興味あるよおまえんちに」
「えへへー」

なぜか嬉しそうに笑う一ノ瀬にため息を吐く零原。一ノ瀬は零原の手に指を絡めた。

「浴衣デートだねー」
「行くなんて行ってねぇけどな」

一ノ瀬に腕をブンブン振られながら歩く零原。ただでさえ目立つのだからやたら目を引く。一ノ瀬はよくわからない鼻歌を歌いながらスキップを始めた。零原は引っ張られないように少し踏ん張りながら歩く。

「たのしみだなあ〜」
「よかったなー」

すこしだけ一ノ瀬をつくりだしたその家族に興味のある零原だった。



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