ONE PIECE [LC] | ナノ


小さな

セトは泣いていた。

長いこと独りで生きてきたのなら、"誰かに"必要とされたくて"誰か"に認めてもらいたくて。
自分以外の"誰か"に"自分"を分かって欲しくて...孤独なのに依存する。依存して"自分"をただ証明したくて。
たった一人でいい。"自分"が必要だと言って欲しかったんだとおれには分かった。

「「セトちゃん、なかないで」」
「......有難う」

小さく、強い絆を見た。
オヤジは満足そうに笑い、マルコも穏やかにこの光景を見ていた。




「もう泣くなよセトちゃん」
「何をどう見て物言ってんだ?寝言なら寝て言えよエース。ついでにちゃん付け止めろ。飛ばすぞ」
「兄貴に向かって何だその言い草!」
「盃も交わしてねえお前を誰が兄だと認めるか」

ツンと顔を背けるセトを一発殴ってやろうかと思ったが、抱えたとの所為でそれは出来なかった。
さっきまでは随分と人間的で可愛い弟に見えたんだが今は心配ばっか掛けるルフィ以上の愚弟にしか見えん。しかも下手に賢そうだから余計に生意気だ。年下(だろう)のくせに。

「あーあ、さっきまでの可愛いセトちゃんは何処に行ったのやら」
「......脳内に沸いた妄想だろ?最初っから居ねえよ」
「うわーマジ生意気。燃やしてやろうか?」
「その前に俺が吹き消してやるよ」

けしかければ倍くらいになって言葉が返って来る。本当に生意気な。だけど...何か放っておけない。
何つーか、すっげェこの双子可愛がってる割に自分を大事にしてねェような、それに気付いてないっていうか、自分も他人もよく分かってねェのか今にもシュッと消えてしまいそうな、何かこう、儚い、気がする。口悪いし態度も悪いけど、にこりともしねェけど。
感情が無いわけでもない分、見えない感情が気になる、みたいなよく分からねえ感情がおれに湧く。でもおれは悪くない。セトが悪い。

「それよか一人引き取ろうか」

ソレと指差したのはおれが抱いてる双子だ。
色々とはしゃぎ疲れたんだろう。能力も結構使わせちまったし。最終的には遊んで走ってセトに泣き付いてセトが抱き締めて...そのまま寝ちまった。ちょっと乱暴に抱き上げたけど二人とも目は覚まさなかった。

「いや、大丈夫だ。それより奥の部屋だ。扉開けてくれ」
「ああ。悪いな」

この部屋は、勧誘に成功した際に賞金稼ぎの兄ちゃん用に準備したものだった。荒稼ぎしてるって聞いたからおれらばりのデカい男を想像していたが的外れだった。結構デカいベッドを用意していたんだが...まさかちっこいのが三人肩を並べることになるとは誰も思っちゃなかった。
......こんなんだけど、立派な能力者で賞金稼ぎなんだよな。すげェ驚いた。

「デカいな...とりあえず此処に寝せてくれ」
「おう」

めくられた毛布の下にゆっくりと双子を寝かす。すると、どちらともなく寄り添って...手を繋いだ。

「手繋いで寝るのが習慣か?」
「そうらしい。同じ夢を見るんだとさ」
「へェ。双子ってそういうもんなんだろうな」

双子を見るの初めてじゃないがそんな話は聞いたことがない。けど、この二人なら十分有り得そうだ。
あどけない寝顔を眺めていたら無言でおれに退けと圧力を掛けて静かに眠る二人に毛布をかけるセト。
少しだけ微笑んだ。優しく穏やかに、まるで母親のような顔。

「......そんな顔も出来るんだな」
「何がだ」
「いいや、何も」
「とりあえず此処が俺らの部屋になるんだな」

周囲を見て天井を見上げて窓に移動するセト。はしゃぐ様子はない。

「船は初めてか?」
「いや...船くらいある」
「あー定期船あったもんな」
「それ以外でもあるさ。伊達に苦労はしてないんでね」

苦労、か。人それぞれ色々あるから測れねえけど俺だって苦労はしてるぞ。
そう言ってやろーかと思ったが止めた。まただ、今にもシュッと消えてしまいそうな、何かこう、儚い空気がある。聞くには辛い「何か」があるみたいに...その表現方法は違うが俺にも、ある。過去。

「オイ兄弟」
「誰が兄弟だ!」
「いいじゃねェか。年近そうだし」
「お前みたいなのを兄弟にしてたまるか。ただでさえ下にいるのに」
「バーカ。この船のクルーは全員家族だ。おれ以外にも何千といるぜ」
「!?多過ぎだ馬鹿!」

今は触れないでもいつか話すことがあるだろうか。おれも、お前も。

「とりあえず...隊長たちの紹介する。行こう」
「あー...遊んでくれたサッチとやらに礼言わねえとな」
「......律儀だなお前」
「バーカ、これからも面倒押し付けるための挨拶だろ」

あったま悪いな、と言って来たから...とりあえず軽くしばいといた。

04.5. 対面
05. はしゃいでいるのは新たな初孫

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