ONE PIECE [LC] | ナノ



「どうした。顔青ざめてんぞ」
「そりゃ......そうだろうよ」

青ざめて引き攣った顔をしてるセト。何か言いたげなんだがそれ以上の言葉はねェ。つまり、青ざめて引き攣ってる件に関しては放置していいと見なす。言わないってことはそういうことだ。
船内電伝虫を使ってわざわざ甲板に呼び出した15人の隊長たちは...まァ面倒臭そうな顔はしてるが、呼び掛けに応じたってことはさほどキレてるわけじゃなさそうだ。大体、用件も分かってただろうし。

「まァいい。とりあえず紹介してくぞ」

そのために隊長たちには集合してもらったんだ。サクサクいこう。

「一番隊隊長のマルコだ」
「......知ってる。よろしく」
「さっきはガキガキ言って悪かったよい」

おれには謝らずセトには謝るのかよ。
マルコが差し出した手を見て...セトはただ「悪い」とだけ言って握手を拒否。まァ、よくあることだからマルコは苦笑して手を引いた。

「次、三番隊隊長のジョズ」
「......よろしく」
「おう、しっかり働け」

で、マルコとのやり取りを全く見てなかったのかジョズが再び握手を求めたがセトは「悪い」と言って拒否。握手くらいしてやりゃいいのに、とは思うが嫌なんだろう。まァ好き好んでオッサンの手とか握りかないな。おれだって嫌だ。

「で、四番隊隊長のサッチ。シンとエアのオモチャだ」
「オモチャ!?」
「......色々世話になったみたいで有難う。これからも頼んだ」
「頼んだ!?おれ頼まれたのか!?」

立派に頼まれてるだろ。処理能力が遅ェな。
そんなサッチにセトが「懐いてるみたいだから」とか伏せ目がちに言って......サッチ何故か赤面。どもりながら了承。
伏せ目がちに物を頼むと相手を赤面させ、なおかつ了承を得られるとかどんなスキル発動してんだ。もっと見とけば良かった。

「で、五番隊隊長ビスタ、六番隊隊長ブラメンコ、七番隊隊長ラクヨウ、八番隊隊長ナミュール、九番隊隊長ブレンハイム......あーめんどいなァ。残りはクリエル、キングデュー、ハルタ、アトモス、スピード・ジル、フォッサ、イゾウだ」

顔をヒクヒクさせて「よろしく」と呟くセトにそれぞれが「よろしく」と答えた。
よーし、これで紹介は済んだ。あとはセトなり他のヤツなりが何か質問とかあれば言うだろ。そう思って一歩引いた途端、自然とセトを中心に隊長たちが寄せ集まった。よし!予定通りだ。


「賞金稼ぎをしてたそうだが...どのくらい突き出したんだ?」
「.........さあ。島に居たらとりあえず狩ってた」

死ぬほど分厚い手配書持ってたから手当たり次第だろう。

「率は?」
「100に近い。エース以外は...間違いなく狩った。換金済だ」

後でマルコに聞いたが、死ぬほど重い荷物があって中身全部が金だったらしい。

「いつからだ?」
「.........独りで、生き始めてからだ。年数とか分からねえ」

つまり、孤児になってからってことか。


正直に言えば、まだセトについては何も分かっちゃねェ。
二人を拾った経緯と親のように可愛がっていることだけは分かってるが他は何もない。聞いてもない。苦労したことはチラリと口にしたけど...それ以上は聞けないくらいの「何か」を感じたからおれは聞かなかった。別に、聞いてもどうしようもないことだってある。話したくないこともあるだろう。時が来れば話すかもしれない、くらいにおれは考えた。


「.........死なねェ自信は、あるかい?」


マルコだ。


「死なない、自信?」
「そう。この船に乗りゃそこそこ狙われる。おめェ、死なねェ自信はあるかい?」


――― そんな自信、あるはずない。


「けど...守りたいもんがある以上、俺は死ねない、絶対だ」
「死にたくない、って解釈するよい」
「ああ。簡単に落としていい命なら随分前に死んでる。生きてるより...死んだ方が楽そうだろ?」


それだけの重い「過去」と、それ以上に重い「子供」か。
何となく、何となくだけどおれにはその気持ちが分かるような気がする。


「......自意識過剰なら折檻もんだが、そういうことなら問題無いよい」
「何のことだ。今の、適性検査か何かか?」
「まァ、そんなもんだ」


おれは、この質問の答えを知ってた。
「自信がある」と答えたならセトは能力に頼り切った「自意識過剰」でいきなし相手に突っ込んでヤラれて死ぬ。自滅する可能性を多く含むことになる。だからその前に根性、考え方を正す必要がある。能力たって相性がある、力量も必要になる。こんなもん、有っても無くても弱い奴は弱い、強い奴は強い。自信は必要でも「過剰」ではいけないっつー話。

セトは「自信はない」と答えた。でも「死ねない」とも答えた。
きっと「守りたいもの」がセトを強くする。「生きる」ことに力を貸す。時には無茶もするだろうが...それでも「生きる」ことを望む。余程のことがない限り......その万に一くらいの余程のことを防ぐために、おれたちは動くことになる。


「色々厳しいもんだな、海賊ってのも」
「こういうのは、おれたちの船だけだろうねい」
「.........家族、だからか」
「そういうこと」


「ふーん」と他人事のように返事をしたセトの目は、少しだけ痛かった。
やっぱり何かあるのは間違いじゃなくて、触れられたくないものがあって、それが...何か痛ェ。何処とかじゃなくて痛ェんだ。
出来ることなら痛くねェようにしたい。が、どうしたらいいのか分からない。不思議な感覚がまたおれの身に圧し掛かっていた。

05. はしゃいでいるのは新たな初孫

(50/67)
[ 戻る付箋 ]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -