ONE PIECE [LC] | ナノ


はしゃいでいるのはたな初孫

「二番隊に配属されたセトと、オヤジの初孫で双子のシンとエアだ」
「「しらないおじさんいっぱい!」」
「孫は全力で可愛がれ!蝶よ花よと愛でろ!以上!!」

おおおお!と見たこともない人数の男たちが盛り上がるのを見て泣かない子供は凄いと思った。逆に興奮してお目当てのサッチ、マルコの方へと走る二人を制することは難しいと思って俺はただ近くの壁にもたれかかった。
宴は山賊なんかもよくしてたが海賊も同じくらい派手に繰り広げるとは...目の前に置かれた酒と料理の多さにはビックリだ。ついでにそれがどんどん消えてく様にも。これじゃいくら賞金を稼いでたとしても何の足しにもならない。

「セトセト」
「何だ、ダイアモンド・ジョズ」
「通り名で呼ぶな。ジョズでいい。で、どっちがシンでエアだ?」

この船に来て3日目。船内を掛け回る子供の存在は何よりも目を引いたという。
そして、それを追うエース、肩車をするマルコや馬になってるサッチはもはや隊長などではなく子守要員として生温かく見られているらしく、それを知ってか知らずかシンもエアも集中してこの三人を追う。他の隊員たちにも行かなくもないらしいが適当に交わしているのを見た。となると...どうもこの三人だけはうまく交わせていないらしい。

「......男がシン、女がエアだ」
「それだけじゃ情報が足りねェよ。見た目の識別は?」
「......目が横長がシン、縦長がエアだ」
「だーかーら、分かりづれェよ」

俺は俺で新入りとしてまず雑用から始めることにした。
甲板の掃除、洗濯、食堂で食器洗い...シンとエアにも手伝わせながらやるんだが、二人は当然、飽きれば走り出してしまう。そこはまあ放置して作業を続けるが...しばらくすると二人に捕まった誰かが必ず俺に助けを求めて来る。

「......あ、サッチ好きがシンで、マルコ好きがエアだ」

この船であの二人を大人しく出来るのは俺と...オヤジだけ。

「あー...いつも馬に乗ってるのはシンか?」
「ああ」
「肩車が...」
「エア。高いところが好きなんだ」

今も馬になるサッチと肩車をするマルコが遠目に俺に助けを求めているのが分かるが...俺だって落ち着きたい。風呂に入れるのも寝かしつけるのも俺だし。海に居るのに山の時と変わらない生活で、だけど倍くらい疲れるんだ。落ち着かせろ。

「随分大変だったろう、若いのに」
「......そうでもない」
「ところでアレ、お前の子か?」
「......まさか」

突如として息子が増えることはあっても孫は初めてらしく隊員たちは驚いていた。何がどうなって此処へ俺らが来たのかは誰もが知っているが生い立ちは誰も知らない。その所為で何度となくあの二人が俺の子かと聞かれる。勿論、からかいもあるだろうけど。

「ところでお前、いくつだ?」
「......さあ。よく分からねえ」
「まァ、エースくらいだろ。でも小さいな。もっと食え」
「俺からすれば皆デカすぎだ」

この3日間で俺より小さかったヤツと言えば、あの二人とオヤジの傍に居るナースたちくらいだ。
色々考えればそれが当たり前なんだが、どうやら小さい俺が周りは気掛かりらしく食えねえほど料理を持って来る。「吐いてでも食っとけ」が俺に課せられたテーマらしいが、それに従わずにしれっとエースに食わせてみたり。てか、これでも栄養は行き届いてる。エースが食いすぎだ。
そう主張するも聞いてもらえず今日もまた皿が多い。皿の上の料理は、減ってない。

「おーいエース」

とりあえずコレはエースに食わせよう。
離れた場所で飲み食いするエースを呼び付けて俺の前に出された料理を差し出せば意地汚くも食べ始める。何か言ってたような気もするが口いっぱい頬張った状態では何を言ってるかまでは分からない。
視線の先では相変わらずシンとエアが大暴れしている。これだけの人が居る場所に出したことはないから興奮してるんだろう。しかも遊んでくれるとなったら嬉しくて仕方ないんだろう。分かりはするが...そろそろ食事もさせとかないと。

「どうしたセト」
「撤収して来る。遊んでばっかで飯食ってねえし」
「......母親か、お前」

何とでも言えばいい。少なくとも保護者だし育ての親には違いない。



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