NOVEL GAME γ | ナノ

if...の扉 #10

ミックスランダム/扉の向こう
【003号室 シャンクス】
「効果はバツグンだなァ」
「.........」

お客様を失神させたいのかと問いたい。問い詰めたい。
これ以上に何かを仕込むのであれば...
R指定と心臓の弱い人、妊婦さんなどの特定の方をお断りしなければならないと思います。
各部屋から悲鳴が聞こえる度に生命ゲージが下がっていくことになるわけですし。

「.........怖かったのかァ?」
「.........それなりにゾワッとしました」

このげんなりした顔を面白そうに見て頂けたらお分かりかと。
にしても、赤とか緑の水を出すのは大変な工事だったろうにね。凄いよ業者さん。

「えっと...今日の仕事、これで終わりですか?」
「いいや。夜通し仕事」

な、何ですと!?それは聞いてないよ。
プレオープンイベントだとは聞いてるけど夜通しとかは本当に聞いてない。
てか、ホテル演出のみってロイドちゃん(フロント嬢)が言ってたからてっきり部屋だけ見るのかと...

「泊まりだって聞いてねェのかァ?」
「泊まり!?」
「あれ?マルコにはそう言って書類を渡しておいたが?」
「......あの、私、このチケットだけしか、」

貰ってない、と小声で言えばシャンクス氏はポカーンとした後、大爆笑した。

「それで派手に驚いてたんだなァ」
「へ?」
「いやーこの企画は面白いから楽しんでけよ、な?」

バシバシ私の背中を叩いて笑うシャンクス氏。
何が面白いのか......てか、何やってんだあのパイナップル上司め!!

「何にせよ、今日は此処に泊まってもらう」
「え!?私、宿泊の予定じゃなかったから......」

着替えが無いです。ですから大人しく帰らせて下さい。

「心配する必要はない。全て揃っている」
「.........ハイ?」
「此処はホラー仕様だ。着替えは販売することになっている」

凄いですねー...本当に。

「因みに、無意味に此処を出ようとすると警報・警告が鳴って大変なことになる」
「.........どういうことですか?」
「出てみたら分かるが、やってみるかァ?」

「尚、お部屋の変更は何があってもご遠慮頂いておりますのでご了承下さい」
――進まないと、大変なコトが起きちゃうよ?

そういうこと、か。
是が非でも此処に留まらなければいけないということが分かって、私はただただ項垂れた。

続ける
リタイア





















if...の扉 #10

ミックスランダム/扉の向こう
【003号室 シャンクス】
「フロントに着替えを頼んだ。すぐに持って来るだろうから選んでいいぞ」

有難うと言うべきなのかもしれないけど、正直、私は帰りたい気持ちでいっぱいです。
色んなものに興味深々らしいシャンクス氏は部屋中をウロウロしている。
そもそも何故この方がプレオープンイベントに?と首を傾げる。

てか、着替えだって...どの程度の何が準備されているのかもさっぱりなんですが。
普通の服だったらいいけど...ロイドちゃんたちみたいなゴシックな服だったら、死ねる。
いや、着てみたいとは思うんだよ?だけど、リアルでそうなったら間違いなく死ねるヤツだ。

――トントン。
扉を叩く音がした。着替えが届いた...んだよね?
荷物が届いたのは分かる。だけど、この荷物を持って来てくれた人が何なのかが分からないから怖い。
確かロイドちゃんたちは歩行しないタイプ。つまり、ドアの向こう側は...ヒト、よね。

「どうした?」
「いえ......」

私に行かせるということは間違いなく仕様・ホラーだ。
それでも行かなければならないのが平社員の辛いところ。
よし!と心で気合いを入れて、それでも恐る恐る向こうに誰かが居るドアを開けた。

「.........ハイ」
「フロントです。お荷物をお持ちしました」

.........何じゃこのイケメンロイドは!!!
人じゃないのは明確なのに何を象った時にこんなイケメンを作っちゃうんだ!?

「お好きなものをお選び下さい」

けど、やっぱりロイドくんはロイドくんね。表情がほぼゼロで淡々としていらっしゃる。
マジマジと見てしまってるけど気にした様子がないのもまたロイドくんならではだ。
ついでに言えば......本当に下着から何から揃ってる。サイズも豊富だ。
で、服。服が、何故かアンサンブルと言っていいのかセット物と言っていいのか...

「当ホテルのオススメはこちらのカーミラになっております」

梱包された衣装にはそれぞれ中身の写真があるけど...こんな衣装で人前は歩けそうもない。
無難なもの、無難なもの...と探して一番露出が少ないのは、ゴースト、かな。

「じゃあ...」
「コレ可愛いじゃねェか!」
「へ?」
「ブラッディーアリスで!」
「え!?」
「靴のサイズはおいくつですか?」
「24、だよな?」

ニカッと笑顔を向けられて思わずブンブン頷く。
忘れてた。この人、ランクSSのイケメンだった。全てが揃ってると言われたイケメン...
でも、何故、ご存じなのですか?私の靴のサイズとか...

「では、ご指定の商品はこちらになります。
尚、会計はホテルチェックアウト時に清算となります。有難う御座いました」

.........ん?支給品では、ない?

「え、ちょっ、待っ、」
「支払いはおれがするから心配いらねェぞ!」
「で、ですが!!」

他社の平社員ですよ私!と主張すれば、それが何か?の顔をされた。
うーっと唸る気持ちを抱えていたらシャンクス氏が勝手に荷物を受け取った。
淡々と仕事をして頭を深々と下げたロイドくんは閉まるドアの向こうに消えてしまった。

「ほら!着替えて来いよユイ」

イイ笑顔で言われたら断ることが出来ない...

アリス、うん。アリスは可愛いよ。大好きだよ。着てみたかった時期もあるよ。
でも、目の前に突き付けられたアリス衣装(血糊だけど)...例え可愛くてもちょっと、死ねます。
どうしよう。この場合、私はどうしたらいいんだろう。

着替える
リタイア





















if...の扉 #10

ミックスランダム/扉の向こう
【003号室 シャンクス】
脱衣場でスーツを脱いで、切ない気持ちになりつつも着替えてみた。
あああああ!アリスは可愛いよ。でも私が着てるよ。どうよソレ。
似合うか似合わないかの問題ではなく死ねるやつ。それでも、仕事をせねばならない。

「.........」
「似合う!可愛いじゃねェか」
「.........有難う、御座いま、す?」

お世辞...お世辞ですよね。うん。辛いよ私。
これだったらまだスーツでウロウロしていた方がマシ。何か遊んでるみたいだし。

「着心地はどうだ?」
「へ?」
「ベックマンがこだわってたんだ」

あ、そうか。これは販売する商品でその調査をしてるわけですね。

「着心地良いですよ。私の私服より断然」
「そうか。そう報告しとく。有難うな」

.........キュン死するかと思った!!!
えっと、この方は社長さんですよね。こんなに愛想振り撒いて大丈夫ですか?
少年のようなイイ笑顔が年上の方なのに可愛すぎるとか...キュン死する。

ウチの社長も素晴らしい方で私たちを子供のように大事にして下さるけど、
この方はこの方で社員を友達のように大事に思ってくれるんだろう。
さすがウチと同様に離職率の低い会社だ。素晴らしい。

「あの、でしたら次の仕事は、」

着心地確認は済んだ。室内の確認も済んだ。
ホラー要素は多いけど少しだけ仕事にやりがいを感じたから聞いたけど...

「ない」
「へ?」
「ないんだ」

.........どういうこと?

「ホテル演出のみなんだ。体験イベントはまだ用意されてない」

はいい?
だったら何のために私は此処に泊まるんですか?

「あ、そうだ。出掛けたいならコレ...発信器だ。警報が鳴らずに館内を移動出来る」

そう言ってポンッと投げられたのは......ペンダント?
紐に石のペンダント...こんなところにも西洋の香りが。さすが凝っていらっしゃる。

「もしかしたら仕掛けは動くかもしれねェから注意な」

仕掛け...何か嫌な予感がする。
もう十分凝っていらっしゃいますので余計にビビらせたら泣きますよ私。

「.........あ、あと、」

これも聞かないと。アナタ様はいつまで此処にいらっしゃるんでしょう。
よくよく考えたらこの部屋...ダブルベッドではあるけど、
まさか他人でライバル社社長と一緒に枕並べて、とかない、よね。他人で異性なんですけど。

「ん?おれも此処に泊まるぞ」
「.........ハイ?」
「おれとお前、一緒に泊まることになってる」

.........何ですと!!?

「カップル室の確認だからなァ。雰囲気は大事だ!」
「あ、あの、カップル室でも一人で調査出来ますよね?そうですよね?」
「相手の反応を見る必要があるって景吾に言われた」

景吾......跡部景吾!?
何言ってんだあの俺様キングは!(実は同級生でした)
もう死ねる。私は死ねます。いや、下手したら殺されるかもしれない。
年上の方なのに小首傾げてダメだったか?なんて悲しそうな目で見つめるシャンクス氏に。

「.........いえ、問題、無い、です」

可愛いんですけど!!いやいや落ち着け。頭を冷やそう。
「やっぱり出掛けて来ます」と渡された発信器という名のペンダントを首に下げた。
「じゃあ、おれも仕事頑張るから!」と笑顔で見送られ、私は部屋の外へ一歩踏み出した。

続ける
リタイア





















if...の扉 #10

ミックスランダム/扉の向こう
【003号室 回想】
部屋を出て、廊下を端から端まで散策。仕掛けは特になし。
エレベータは相変わらずの鏡張りで血糊べったり。気持ち悪い。
フロントへ降りるとロイドちゃん(弐号機)が居て...何故か外には出られない。
そのエリアをちょっと散策しようとしたら所々でけたたましい音が響いた。
立ち入り禁止エリアがあって、立ち入るんじゃねえよ!と言われてるみたいだった。

因みにロイドちゃん(弐号機)に「部屋を変えて欲しいと告げる」と、
「お部屋の変更は何があってもご遠慮頂いておりますのでご了承下さい」と言われた。

同じエリアには例の商品を販売している場所もあって、
ロイドくん(イケメン)が応対してくれるらしかった。相変わらず表情は乏しい。
ついでに衣装だけでなくお菓子なんかも売られていた。試食は不可。
アルコールなんかも販売されているらしいけど、免許証等を出せと言われた。

そこからまた血糊ベッタリのエレベータに乗る。
ボタンは2(食堂)、1(フロント)、B1、B2とあるけど押せたのは1とB1のみ。
どういう操作なのか、全く反応しないってことは...仕掛けなんだろうと思う。

.........と、いうことで散策終了。
カードキーで003号室へと戻って来た。
一応、不本意ながら相部屋なので不本意ながらもノックしてから入った。

部屋に戻る





















if...の扉 #10

ミックスランダム/扉の向こう
【003号室 シャンクス】
「!!?」
「お、丁度良かった見てくれよ」
「!!!」

さっきまでの素敵かつ高級なお召し物は何処におわしましたか!!
私と同じくらい血糊べったりの衣装に替わってますけど!!

「ブラッディー帽子屋の衣装だ」
「.........」
「変か?」

とんでもない!可愛すぎて死ねるやつです!!
それって私に合わせた衣装ですよね。凄いです。てか、可愛いです。

「メンズ衣装も出来上がったから試着してみた」
「とってもお似合いですよ」

何故今、試着する必要があるんですか?とかそういう疑問も吹っ飛ぶ。
本物のイケメンとはどんな服も似合う人のことを言うんだなーと思う。
本人も気に入ったのか、とても嬉しそうにしているのもまた可愛い。キュン死する。

「あァ、伝え忘れるとこだった」
「はい」
「少し早いが夕食の準備が出来たそうだ」

夕食?さっきは食堂のボタン押せなかったんですけど?
色々疑問が浮かぶけど正直、気が張り過ぎたのかお腹空いてる。うん、空いてる。

「今から行くか?おれ、腹減った」
「あ、はい。お供します」
「コース料理らしいから楽しみだ」
「.........了解しました」

ブラッディー帽子屋シャンクス氏の後ろについて私も歩き出した。
うん、後ろ姿も素敵。でもセットになっていたと思われる杖は振り回さないで欲しい。
帽子屋とアリス、か。まるでお茶会に行くみたいなカンジで私たちは食堂へと向かった。

大食堂へ向かう





















if...の扉 #10

ミックスランダム/扉の向こう
【2F 大食堂】
タヴィンチ作、最後の晩餐を思い出した。
趣と言うか雰囲気ある大食堂だけど、うん、もう暗いよ色々。
ここまで長時間薄暗いところに居ると目が悪くなりそうな気がする。

「食堂くらいは明るい方が良くない、でしょうか?」
「そうだなァ。一応報告しとくよ」
「有難う御座います」

一応という言葉が不確かだけどまあいいや。
長すぎるテーブルにはきちんと私とシャンクス氏の名前が書かれたカードが置かれていた。
てっきり端と端、会話も出来ない両端々に配置されて淡々と食事をするのかと思ったけど、
これには配慮されているらしい。いや、別に食事は淡々と食べてもいいんだけど。
対面配置で...シャンクス氏はわざわざ回り込んで向こうへ行かなければならないらしい。

「よっ、」
「!!?」

あ、鮮やかに飛び越えられましたけどいいんですか!?
運動神経も抜群とは...このテーブルの奥行き結構あると思うんですが...飛びましたね。
色々驚くことが一瞬で起きたけどシャンクス氏は特に気にしていない様子だった。

着席すると何故か食堂内にチリンチリンチリン...と鈴の音が響き、
カートの音だろうか、食事を運ぶ音が聞こえ始めた。

「仕掛け、本当に凝ってますね」
「まァ、この企画は数年がかりの大プロジェクトだからなァ」

そんなに時間を掛けていたとは...知らなかった。
一介の平社員はそういうのは全く話は聞いてないし聞かされることもない。
プロジェクトに携わっていない者としてはこの企画はポッと出というやつ。
だから、ある意味で油断してやって来た私がいる。

色々と感心する中、料理は生身の人間が運んで来た。
重々しいカートを押して来たのはイケメンの男性、但し、腐乱気味。
それを配置してくれたのは美人の女性。但し、こちらも腐乱気味。
つまり、ゾンビ系でいらっしゃいます...その美貌が勿体ない。

「.........多少、食欲が失せますね」
「そうかァ?一応、これも報告しとくよ」

有難う御座います。助かります。
ある程度の準備が整ったところで注がれたシャンパンで乾杯し、食事を頂いた。
食事自体は文句なしで美味しかったけど...サイドに控える美ゾンビさんたちには引いた。

部屋へ戻る





















if...の扉 #10

ミックスランダム/扉の向こう
【003号室 シャンクス】
さてさて。いよいよ確認することが無くなった。
レディファーストでお風呂を頂きましたが、凝った仕様に大絶叫(水が赤いのを忘れてた)。
入れ替わりにシャンクス氏がお風呂に行かれている間にドレッサーを使用していて...
鏡に映った肖像画の目が動いてて再び大絶叫。恐怖を仕込み過ぎ。
正直、何の仕事もしてないけどもう精神的にクタクタになってしまった。

.........だがしかし、だ。
疲れ切ってさっさと寝てしまおうにもダブルベッド。一人でなく二人で...
この場合、私に与えられた選択肢は三つしか浮かんで来ない。

1. 勝手にベッドに入ってささっと寝てしまう。
2. 残業してると思って机に伏して寝る。
3. 脱走する。

まあ、廊下で寝るとか床で寝るとかそういう選択肢も浮かぶけど、
出来たら人としてフツーに最初の三択から選びたい。

(さて、どうしようか)

1. 勝手にベッドに入ってささっと寝てしまう
2. 残業してると思って机に伏して寝る
3. 脱走する





















if...の扉 #10

ミックスランダム/扉の向こう

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