小説 | ナノ



【Lily】
【Marguerite】の続き


今日こそ…今日こそ伝えるんだ!
あの子に、なまえに、僕の名前を!


数日前に街で見掛けて、「友達になって」と言ってくれた女の子。あの時はドキドキしすぎて上手く話せなかったし、まだ名前も言えてないままだ。

「じゃあリュカ、俺は言われた買い出しすませてくるよ」
「は、はい!」
たまたま用事があると言っていたリンクさんについて、街にやってきた。リンクさんと別れて、僕は前回の場所に急ぐ。

早くなまえに会いたい。そう思う一方で、また上手く話せないんじゃないかって不安も消えない。
それでも足が自然にあのお花屋さんに向かう。近付くにつれて、どんどん胸が高鳴ってくる。

角を曲がると、すぐに見えた。
この前と同じ、花に水をやる女の子の姿。

「あ!こないだの…」
「こ、こんにちは…っ」
「また来てくれたんだね、嬉しい」
僕を見つけて駆け寄ってくるなまえ。今日はその長い髪を三つ編みにしていて、この前よりも顔がはっきり見える。もちろん、変わらずかわいいけどね!

「今日はお使い?」
「えっと…その…」
あぁあぁぁ…やっぱり緊張する!でも、今日はちゃんと話をするって決めたんだ。
ポケットに手を入れて、あるものを握りしめる。不思議そうな顔をしてるなまえに差し出した。

「あのね、これ…」
「うん?」
「僕の名前、リュカっていうんだ。これ…この前のお花のお礼!」
「キャンディー?わぁ、ありがとう!」
昨日のおやつでもらったものなんだけど、この前なまえからもらったマーガレットのお礼に。真っ白な手の上にコロンと転がるキャンディーを見て、ニッコリ笑ってくれるなまえに、安心して緊張が少しほぐれた。

「リュカっていうんだ。カッコいい名前だね!」
「そ、そうかな…?」
よかった…ちゃんと名前を言えた…。これで少しだけステップアップ、なのかな?なまえが僕の名前を呼んでくれるだけで凄く嬉しい気持ちになれる。

「今お姉ちゃん配達に行ってていないの。中でお話しよ!」
「うん!」
招かれて店内に入ったら、小さなテーブルと椅子があった。花束を作ったりしてる間に、お客さんが座るためのものらしい。そこに二人で座って、いろんなことを話した。といっても、僕はまだまだ緊張していたから、主に話したのはなまえだけど。
今までいた街の話とか、お姉さんの話とか、最近あったこととか…。全部楽しそうに話すなまえを見てるだけで、僕はとっても幸せだった。




「あれ、リュカ?」
すると突然、聞き慣れた声が聞こえてきた。驚いて振り返ると、そこには二人の人が立っていて…。

「り、リンクさん!」
「あれ、お姉ちゃん」
「え?!」
なんでここに居るのかわからないけど、リンクさんがいた。しかも一緒に居るのはどうやらなまえのお姉さんらしい。初めて見たけど、確かになまえとよく似てる。とってもキレイな人だ。

「なまえただいま。その子、お友達?」
「うん!リュカっていうの!そっちの緑の人は?」
「あぁ、お客さんよ。配達の途中で会ったの」
「緑って…」
なまえのお姉さんの話からすると、リンクさんはお花を買いにきたらしい。それにしても、二人とも凄く仲良さそうだなぁ。
壁にかけてある時計を見たら、思っていたよりも時間が過ぎててびっくりした。

「ちょっと待っててね、すぐに作るから」
「あぁ、頼むよ」
「リュカ、じゃあ私たちは外に行こう?」
「あ、うん…」
リンクさんとなまえのお姉さんを残して、二人で外に出る。もう辺りはすっかり夕暮れになっていた。楽しい時間てほんとに早く過ぎちゃうんだな…。

「リュカはあの緑の人と友達なの?」
「友達っていうか…うん。同じ所に住んでるからね」
「じゃあ、お姉ちゃんがブーケ作り終わったら帰っちゃうのね…」
「うん…」
なまえが、少し寂しそうな顔をして呟く。僕まで悲しい気持ちになっちゃうよ…。

「でも、必ずまた来るから。だから、そんな悲しい顔しないで?」
「…ほんと?」
「うん、ほんとだよ!約束する!」
「ふふっ、嬉しい。じゃあ指切りね」
頑張って声を出したら、なまえはまたフワリと笑ってくれた。その笑顔がとってもかわいくて、見てるだけで心臓がギュッて縮んだみたいに、息が苦しくなる。
差し出された小指に自分の小指を絡ませて、指切りした。なまえのちっちゃい手に僕のドキドキが伝わっちゃうんじゃないかって、やっぱり緊張した。



「リュカ、お前もスミに置けないな」
「え?」
「狙ってるんだろ?あの子」
「そ、そんな…!!!」
帰り道、リンクさんにそんなことを言われて顔が一気に赤くなるのがわかった。

「あはは、わかりやすいなぁリュカは」
「もぅ〜…からかわないで下さいよ…。リンクさんだって、あのお姉さんのこと…」
「あ、バレた?」
「いやいや、わかりやすすぎです」
「ははっ、お互い様ってことか」
なんかリンクさんに「応援するから、頑張れよ」なんて言われちゃったけど…何をどう頑張ったらいいのか全然わかんないよ…。

でも、今日はちゃんと名前も言えたし!
また会う約束もできたから、僕としては上出来だったと思う。
今度会ったら、何を話そうかな…。とか、考えるだけでやっぱりドキドキが止まらない僕でした。




13.08.28
これでリンクサイドも書ける、と(^-^)


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