小説 | ナノ



【Marguerite】
※ヒロインはリュカと同じくらいの年齢


午後に乱闘の予定がない僕は、ネスと一緒に久しぶりに街に遊びに来た。たまには息抜きしておいで、とマスターからお小遣いをもらったから、お菓子でも買おうかなぁ。なんて、いろいろ考えながら歩いていて、ふと気付く。

「…あ、あれ?ネス?」
一緒に歩いてたはずのネスの姿がない。恐らくどこかのお店にフラッと入ったんだろうな。この街のことはよく知ってるし、屋敷に帰る道もわかるから、慌てる必要はないかな。僕は僕でどこか入ろう。
そんな気持ちで通りを歩いていたら、ある所で僕の足が止まった。

「…お花屋さん?」
小さなお店。だけど僕の記憶にはないお店。最近できたのかな?お店の前も中も、カラフルなお花がたくさん。
そのお花がキレイだったこともあるけれど、僕が足を止めた理由はもう一つ。

お店の前でお花に水をかけている女の子。僕やネスと同じくらいの年かなぁ。フワフワした長い髪に、とっても白い肌、ぱっちりした大きな目、なんだかお人形みたいな女の子。

「ねえ君、どうしたの?」
「っ?!あ、えっ…僕…?」
「うん、ずっとこっち見てるから。お花がほしいの?」
「あぅ、えっと…!」
はっと気付いたら、近くにその子の顔があってびっくりした。エメラルドみたいな色の目で見つめられて、顔が一気に熱くなる。
自分ではわからなかったけど、そんなに長く見つめてたのか…。気持ち悪がられなかったかな…。変な焦りが心を支配して、全然上手く喋れない。

「あの、あのね…」
「うん」
「ここにお花屋さんがあるって…知らなくて…お花、キレイだなぁ、って…」
ああぁぁあ何言ってるんだろ僕!頑張って口にした言葉がめちゃくちゃすぎて泣きそう!やっぱりネスと一緒ならよかった…。
顔が赤くなってるのが恥ずかしくて、思わず下を向く。すると、その子は優しい声で笑ってくれた。

「ふふっ、君おもしろいね!」
「そ、そうかな…?」
よかった…。イヤな想いをさせてるわけじゃなさそうだ…。それにしても、かわいい子だなぁ。無邪気に笑うその表情に、見とれてた。

「私ね、お姉ちゃんと一緒にこの街に来たばっかりなの」
「そうなんだ。じゃあ、ここはお姉さんのお店?」
「うん。私も、ちょっとだけお手伝いしてるんだよ」
「そっかぁ。えらいね」
そう言うと、今度は少し照れたようにはにかむ。そして、少し間を置いてこちらを窺うようにしながらその子が口を開いた。

「あのね、私まだお友達がいなくて…だから、お友達になってくれる?」
「っえ、えぇぇええ?!」
「ご、ごめんね…いや、かな…?」
「ちが、っ!イヤじゃないよ!凄く、うれしい…」
「ほんと?なら私もとっても嬉しいよ」
そう言ってにっこり笑うその子を見たら、胸がドキドキして苦しくなる。なんだろうこの気持ち。もうダメかも。心臓破裂しそうだよ〜!

『なまえ〜、ちょっとこっち手伝って〜』
「あ、はーい!」
お店の奥から聞こえてきた声は、恐らくさっき話していたお姉さんのものだろうな。お店に向かって一つ返事をして、その子はまたこちらを振り返る。名前、なまえっていうんだ…。

「お姉ちゃんに呼ばれちゃったから、もう行かなきゃ」
「あ、う、うん…っ。お手伝いがんばってね…!」
「うん。あ、そうだ……」
離れていくのを名残惜しそうに見ていたら、何か思いついたらしいなまえは僕のもとに駆け寄ってきて…。

「私の名前、なまえだよ。これ、お友達になってくれたお礼にプレゼント!」
「あ、ありがと…!」
「お姉ちゃんには内緒ね」

今度会ったら、君の名前も教えてね。

そう言い残して、なまえはお店の中に消えていった。僕の手には、白い花びらの一輪のマーガレット。

「そういえば…名前、言えなかった…」
少し後悔したけれど、なまえが言ってた「今度」を考えるとまたドキドキしてきた。今度は、きっと。



(あれ、リュカは花しか買ってないの?)
(う、うん…。えへへ…)
(…変なリュカ)



13.08.09
花言葉【心に秘めた愛】


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