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【UNMASK】


「スキあり!!!」
「っ?!」


私としたことが…不覚としか言い様がない……。
リビングでついうとうとしていたところを、なまえに奇襲されてしまった。狙われたのは、あろうことか命の次に大事な仮面。

「か、返せ!!」
「やだよー!せっかくメタの顔見れたのに」
「見なくていい!」
残念なことになまえに手を高く上げる体勢になられると、私には届かない。何とかマントで顔を隠すが、なまえがニコニコ笑いながらしゃがんでこちらを見つめてくる。

「なんでそんなに恥ずかしがるのかなぁー。メタの顔かわいいのに」
「かわっ…?!…か、からかうんじゃない!」
「えー、そんなつもりないよ」
マントの隙間から睨んでみても、なまえには大して効いていないようだ。他の連中もそうだが、私の顔なんか見て何が楽しいというんだ。

「隠されるとさ、余計見たくなっちゃうの。人間の本能だよね」
「…見られたくないから隠しているのに、か?」
「うん」
「―――…」
駄目だ。まるで悪びれた様子がない…。盛大に溜め息を吐いてみたところで、ある意味純粋すぎるその心には響かないようだ。理論で訴えるのはもうやめにしよう。

「なまえ、もういいだろ。早く返しなさい」
「だってさー…」
「?」
手を差し出して催促したものの、なまえはまだ不満そうにしている。何か言いたげだったので待っていると、意外な言葉が頭上から降ってきた。

「メタが仮面してると、キスできないんだもん…」
「…!!」
「あ、顔真っ赤」
「だ、から…からかうなと…!」
また声を荒らげようとした途端、柔らかい感触。それが何であるのかわかった瞬間に、思考回路が停止した。
目の前には、同じ視線の高さまでしゃがんだなまえの顔がある。固まる私にニコリと微笑んで、伸びてきた手には仮面。

「はい」
「…ああ……」
返ってきたそれをつけ、いつも通りの感覚に少しだけ安堵する。言いたいことは山のようにあったが、今この場で口にするのは何となく違う気がした。

「ごめんね、意地悪したいわけじゃないの」
「それは、わかっているが…」
フワリと抱き締められて、また顔が熱くなる。まったく、どこまで私を動揺させれば気がすむのか。

「二人だけでいる時はさ、たまにでいいから仮面外してほしいな」
「…ぜ、善処する…」
「ふふっ、ありがとう」
なかなかすぐには難しい課題だが、その笑顔が見れるのならば少しは努力してみようと、そんな決意を固めた昼下がり。




13.08.26
ヒロインの年齢が謎


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