注意)調べたところフエゴレオンと同年代がノゼルとヤミとジャックくらいしかいないので、不本意ですがオリキャラが出しゃばる可能性があります。
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何この状況。私は家にいたんじゃなかったっけ?
目の前には高すぎる天井、と見知らぬ2人の顔。その二人は外国人の男女で、ナマエの顔を嬉しそうに覗き込んでいる。
わっ!
男のほうがナマエの体を抱き上げた。
え?巨人?・・・・いや、違う。
私が赤ちゃんサイズになっていたのだ。
「ああ、可愛いナマエ!」
違う、私はそんな名前じゃない!もっと日本風の名前だ。あれ?なんで言葉がわかった?
もしかしてこれ、トリップってやつ?
ナマエは泣き出した。母親がそれでも嬉しそうに頬を撫でる。
トリップだああ!夢小説で腐るほど読んだアレだわ!うん、ステータス高い系だといいけどな。ここはどの世界なんだろう。
舞台が日本じゃない作品はたくさん知っている。どういう系?戦うのは嫌だ。
そうこうしているうち、ナマエは二人に連れられて外を出た。
「!」
突然、浮いた本が現れた。どうやら母親のものらしい。表紙にはクローバーのマークがあった。
ビンゴ。わかった。
ここはブラッククローバーの世界だ。
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「行ってきます、お母様」
「いってらっしゃい」
母に見送られて家を出た。今日は魔導書の授与式だ。
そう。私はこのまま15年もこの世界で過ごしているのだ。確かなのがこれが夢じゃないってこと。だって単純計算で15×365って、5475回以上は寝てるもんね!
そして育った家はどうやら貴族。しかも魔道具を作っては王族貴族に売っている。作っているところは見たことが無いが。私は一人娘で、何不自由ない生活を送ってこられた。これもトリップのオマケか。
ただわからないのが、今がどの位の時間軸なのかということ。アスタと同じくらいか?それともその前?後?
他の貴族の友人もできたが、その中に原作に登場してきた人物はいなかった。つまり今ナマエはモブ。登場人物に一切関わっていないただのモブ。
(今日の授与式で、誰か知ってる人がいればな・・・)
もしユノやアスタと同じくらいの年齢なら、レオとかがいるかもしれない。いや、レオは一個上だからいないか・・。
「ナマエ、おはよう」
「おはよう」
私は友達のモニカと待ち合わせていた。一緒にもらいに行く予定だった。ただ、一つ懸念がある。魔導書をもらえるのかということだ。元々この世界の人間ではないから。もしもらえなかったなんてことがあれば、明日から友達は0だし、私の家・ミョウジ家にも泥を塗ることになってしまう。
考えてるうち、授与式が行われる塔についた。
「おー、凄い人」
服装や振る舞いから、どれも貴族だということがわかる。ただ、貴族の中にも上下はあるようで。私は自分の家がどの位の位置にいるのかさっぱりわからない。
なんだか、チラチラと見られている気がする。あれ、もしかして私没落貴族的な?
「!見て、シルヴァ家のノゼル様よ」
媚を売る貴族たちに囲まれて、一際高貴なオーラを纏っていたのはやはり、未来の銀翼の大鷲団団長だった。
ノゼル様だ!!まさかの同い年だなんて。ということはもう一人・・・
ナマエは周りをキョロキョロ探した。
いた。鮮やかなオレンジ色の髪を持つアイメイクイケメン。
フエゴレオン様・・・!
ああ、私の推し、脳内彼氏。よし、絶対に紅蓮の獅子王に入団する!
お近づきになりたかったが、授与式が始まってしまった。
「それでは、魔導書授与!!!!」
塔主の声とともに、多種多様の魔導書が一斉に本棚から飛び出した。
「!来た」
だが来たのは辞書のような分厚い本。周りにも珍しがられ、恥ずかしくなった。
「重っ」
持てなくて、地面においた。これどうやって持って帰ろうか。
「「おおーっ!」」
見ると、ノゼル、フエゴレオンが何やら凄い魔導書を貰っていた。さすがは王族だ!と取り巻きが囃し立てた。
「魔導書も無事にもらえたことだし、帰りましょうナマエ」
「うん」
友達は早くここから立ち去りたいらしい。
「おいそこの没落貴族」
後ろから声がした。私とモニカは自分のことだと思わずそのまま外に出ようとする。
「お前だよ!」
ビクッと振り返ると、見知らぬ男の子。没落貴族って、私か。
「なんですか?」
「いや、お前じゃねえ、そっちだ」
指を差されたのは、モニカの方だった。
「お前みたいなやつがこんなとこにのこのこ来てんじゃねえよ。魔導書は貰えたか?まあどうせページは一枚しかないゴミみたいな魔導書だろうけど。はははっ」
モニカは今にも泣きそうで。でもここで言い返しても相手を煽るだけだった。
「なんでこの俺がお前みたいなやつと婚約してんだろな。ああ、俺の家が穢れる」
婚約者だったのか。婚約者なのに、こんなこと言えるの?
「いやそれ、割とこっちのセリフ」
「なっ!」
思わず心の声が漏れてしまったが時既に遅し。
「アンタだってメモ帳位のサイズなのによく言うよ」
「見てたのかよ・・!お前、、いくらミョウジ家だからって・・!」
「モニカに謝って!」
男は激昂して魔法で攻撃してきた。サッと避ける。
「貰った初日に魔法使おうとするなんて凄いや」
ここでやり返すのは得策ではない。こんなことわざを思い出した。
"逃げるは恥だが役に立つ"
私とモニカは逃げた。逃げて逃げて逃げた。そのうちなんだかおかしくなって、二人でアハハっ!!と笑いあった。
「・・・ナマエ」
「うん?」
「ありがとう」
モニカが言った。私は嬉しくなって、彼女を抱きしめた。
「家柄なんて、関係ないからね。私達はずっと、友達」
「うん・・・!」
私は、この世界で最高の友人を手に入れていたんだ。
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