交わる線 6

「はぁ?!報酬無し?!」
「仕方ないだろう、あの殺り方はない。」
「芸術的だろ!ないってなんだよ、無いって!オレちゃんと見せしめ見たくぶっ殺しただろ!」

吠え立てるオレをしっしと手であしらい、ボスはただ淡々と告げた。

「あれはやり過ぎだ。楯突くやつらがいなければ我らの威厳を保てないのだよ。」

ボスが言うには、定期的に楯突くやつら…まあ敵対勢力のことだろう、それらを圧倒的な力でねじ伏せ無惨に殺すことで薄れる恐怖を思い出させ屈服させているのだとか。

オレが芸術的に殺したのは不味かったらしく、蹴散らす前に相手が降参、そも、楯突くものがいなくなり始めているとのこと。みんながみんなお抱えのオレ(殺人鬼)に怯えているわけではないだろうに、それこそいずれ薄れる。
そういうのは全くわからないし興味もないが、ただ、暫くオレの仕事(見せしめ)は無くなる。ついでに罰として報酬もゼロ。
殺すしか能がないと言っても過言ではないオレ。殺人を捨てれば息苦しいし、衝動も貯まる。

これはあまりにも残酷ではないか。

「考え直してくれよボス!オレこの仕事失くしたら」
「イーストシティ」
「は?」
「最近騒ぎになっている国家錬金術師を付けろ。あの焔の錬金術師が後ろについてる最年少だ。」

最年少で、国家錬金術師…それも背後に焔の錬金術師となると一人しかいない。
金髪の三つ編みに赤いコート。大きな鎧を連れて旅をしている…

「鋼の錬金術師…そいつが、何か?」
「ロキについてた部下が、な。潜入を任せていたのだがな…まあそいつが言うには鋼の錬金術師にやられたっつう話だからなぁ…無視するわけにゃいかねぇんだ。」

わかるな、と目線でそう言ってくるボス。そんなボスにオレは頷き答えた。

「要するに鋼の錬金術師を殺せばぃったぁ!!」
「馬鹿たれ!!殺してどうする、見張るんだよ!」

全くこいつは、とブツブツ言っているボス。オレは叩かれた頭を摩りつつ話を聞く。思考の片隅で、なんて馬鹿力だ、一応これでも念能力者なんだけどなぁ…と考える。
というか見張るったって相手は国家錬金術師だ。頭の回転も素早いだろうし、すぐにバレるんじゃないか、旅もしているし。まあ旅をするやつならごまんといるが、毎回同じ場所、しかも泊まる宿すらも近いとなれば当然疑うだろうし、問い詰めても来るだろう。そうなれば終わりじゃないか。

「オレには荷が重いぞ、ボス。すぐにバレる」
「バレてもいい、とにかく我がファミリー…チベッラファミリーに楯突くような行動をとるようならば捉えて突き出せ。いいな、殺すなよ。」
「ったくもー。わかったよ、それで、オレはここからイーストシティに通うのか?」
「いや、お前にはイーストシティ…いや、セントラルシティに住んでもらう。お前と仲いいっていうガキどもも一緒で構わん。行け。」

随分と太っ腹じゃないか。…そうか、スラムから離れるのか。まあオレらが離れたところで他の奴らは自分の身くらい自分で守れるやつばっかだしな、大丈夫だろう。

それにここには殺人鬼(オレ)がいるっていう噂が蔓延してる。そうそう近付くやつはいないだろう。

「わかった、じゃあよろしくね、ボス」

ひらひらと手を振り足軽に去っていった。さて、エドァルドたちにどう説明しようか。


小さくなっていく少年の背中を眺めながら、ボスと呼ばれていた男がぽつりと呟いた。

「こりゃあ暫くしたら荒れそうだな…まあこれであの焔の錬金術師が大慌てしてくれりゃあ結構なんだが」

クッと笑う男。しかし次第にその顔は憎悪に歪んでいき、タバコのフィルター部分を噛み、あのキザ野郎、女たらしめ…と憎らしげにそう呟いた。


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