交わる線 7

「話があります。」
「なんだよ畏まって…」
「ユイにい、なぁに?」
「大事なお話?」

戸惑うシェリング兄弟。実は、と前置きをして話そうとした時、エドァルドが待ったをかけた。

「なんだよエドァルド。拒否権はないからな。」
「セントラルに行くんだろ」

一瞬何を言われたのかわからなかった。
なぜ、知っているのか。ぽかんと間抜けな顔でエドァルドを見つめる。

「行ってこいよ、頼まれたんだろ、その…ボスってやつに。」
「いやお前らも行くんだよ」
「…は?」

問いただせばどうやら人伝に「ユイシキがセントラルに引っ越す」という部分だけ知っていたようだ。正確には「ユイシキたちがセントラルに引っ越す」なのだが。
セントラルということに喜ぶミラとジャックの頭をぐりぐりと撫で回してエドァルドに向き直る。

「もちろん来るよな?」
「拒否権はない、だろ?」

わかったわかった、と肩をくすめてエドァルドはセントラル!都会!ご飯!と喜び飛び回っている双子をとっ捕まえてずりずりと頬擦りをして落ち着かせた。きゃー!と喜ぶ双子にエドァルドは「お友達にお別れのご挨拶、な?」と諭し、双子は「はぁーい!」と元気よく返事をした。

夕方頃、挨拶を済ませたようでエドァルドたちは戻ってきた。といっても双子ははしゃぎすぎたのか腕の中ですやすやと眠っている。

「悪いな、」
「いいって。」

布団とも言えない布を敷いてそこにミラとジャックを寝かす。
寝顔もそっくりで、違うところといえばミラの方が髪が長くまつげも長いことか。髪質もちょっとだけ違う。

「なあ、ユイシキ。セントラルに行ってもお前は…」
「続けるよ。ボスが用意してくれるのは住居だけだ。その他の生活費はまだ稼がないといけないからな。」

夕陽が差し込む室内。エドァルドの顔とオレの手が赤く染まる。

「一日戻らないとか、多くなるんだろ?」
「四方八方に行かされるからな。」
「オレも手伝う。」
「やめとけ、お前にゃ無理だ。」

きらきらとエドァルドの緑色の瞳が夕陽で輝く。それが眩しくてつい、と目を細める。

「ずっとユイシキに頼りっぱなしだったんだ、せめてオレも…なにか、しなきゃ」
「あーもー!エドァルド!」

うじうじと悩むエドァルドの肩をがしりと掴み目を見つめる。緑の中にオレの赤い瞳が映り込む。

「お前はオレを見くびりすぎだ、いいか、オレは好き好んで仕事選んでんだ、気に病むことは何一つだってない!お前は安心してオレの帰り待ってりゃいいの!」

わかったか、とエドァルドを見ればひどく驚いた様子で、エドァルドはただ呆然と頷いた。そのあとさっさと寝るぞと布を乱暴に手渡せばエドァルドはクスクスと笑って「心配して損した」とすっきりした顔で笑った。

ああ、眩しいなぁ。

「明日からセントラルだ。荷物まとめてさっさと行くからな。」
「まとめる荷物ねぇけどな。」
「それもそうだな」

紺色に染まる空を見ながら考える。キラキラと星が輝いて、けれど見知った星座は無い。ハンター世界でも元の世界でもない。けれどオレはここで確かに生きてる。
暖かいミラの頬を撫でて、こいつらも生きてると実感して安心する。新しい土地に行くから不安になってるのだろう、らしくもない。

「さっさと寝よう…」

目を閉じて、すうすうと呼吸音だけが響く家で、次の家はどんな所かと思い、少しわくわくした気分に陥り、気がつけば朝だった。




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